まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。もうすぐワールドカップ。普段、サッカーの話などほとんどしないまいどスタッフの間でも、大会が近付くにつれて、徐々に関心が高まってきたようで、ホンダが、カガワがって、にわか専門家の解説が飛び交ってます。ラインを上げて、スペースをつぶして、敵の裏をとったら一気呵成に攻め上がればいい。いやいや、あくまでパス交換でゲームを支配して、正面からチャンスをうかがうべき。誰もがセルジオ越後並みの情熱で、唾を飛ばして意見を戦わせています。みんな、こんなに言いたいことがあったんだね。じゃ、大会が終わったら、まいど屋の未来についても改めて議論を始めようかなぁ。でも、編集部をつぶして、予算を取り上げたら、一気呵成にスタッフの福利厚生を拡大しよう、情報交換で社内情勢を支配して、静かにチャンスをうかがおう、なんて言い出さないでね。

今月のテーマは春夏作業服
ここ2年くらい、7月号にぶつけていた春夏作業服の特集を、今年は6月に持ってきました。梅雨が始まる6月には、本音ではレインウェアや長靴などの特集をしたいんだけど、それだとたくさんのお客さまから文句が来るんです。7月になってから特集で紹介されたってもう遅いよ。グズグズしてるから、もう他の作業服を買っちゃったよって。お客さまの気持ちを考えたら確かにそう。だから今回は前倒しで作業服特集。タイトルはスキャンダラスな春夏作業服。なんでスキャンダラスなのかは、特集の中に本当は読者の皆さんには知らせたくないような否定的な情報も含まれているから。余計な事を書いてメーカーからヒンシュクを買う恐れもあるけれど、それでも皆さんに対して正直で公正でありたいと願う編集部としては、腰が引けたようなレポートを出すわけにはいかない。だから強行突破してありのままをお話しています。取材にご協力いただいた各社の担当者の皆さん、文中に気に障る点があったとしたら、ゴメンナサイ。これを機会に取引停止なんて、まいど屋がらみのスキャンダルになりませんように。

ヤツが来る?
この夏、久しぶりにあの男の子がやってくるかもしれないんだって。マジ、勘弁です。普段でもキライなのに、ましてや今年は、今月号のレポート本文でも書いた通り、まいど屋始まって以来の体制で空調服の在庫を積み増しているのに。ウワサを聞いただけで、気分が滅入る、彼の名はエルニーニョ。スペイン語で男の子を意味する気象現象だそう。はるか彼方のペルー沖で発生する海水温の上昇が、巡り巡って日本に冷夏をもたらすらしい。風が吹けば桶屋が儲かる式の複雑な話だから、詳しい仕組みの解説は気象庁のホームページに譲るとして、とにかく彼が現れると月刊まいど屋編集部としては非常に困ったことになる。冷夏になるとお客さまが夏物衣料をあまり必要としなくなる。必要じゃなけりゃ、まいど屋なんかチェックしない。まいど屋のホームページを見る人が減れば、月刊まいど屋の読者もいなくなり、じゃあいっそのことやめてしまえと廃刊の声が高まって、社内で居心地が悪くなる。風が吹けば桶屋が儲かる。坊やが来れば、編集部の存続が怪しくなる。頼むから、大人しくアンデスの山奥に引っ込んで、出てこないでください。冬になるまでサルサでも踊って、ゆっくりしていてくれりゃいいのに。編集部からの切実なお願いでした。

アテンション、プリーズ!
唐突ですが、読者の皆さんの中に、お医者さんはいませんか。いたら、手を挙げてください。スタッフの中に、若干1名、急性鬱症候群の疑いがある者がいるんです。呼びかけてもナマ返事。ある日を境に人が変わっちゃったように元気がなくなっちゃいました。え?それじゃ、あまりに情報が少なすぎて処置のしようがない?ごもっともです。個人情報なのでおおっぴらには言いにくいのですが、緊急事態ということで、機長の権限でお話します。じゃなきゃ、当機は緊急着陸しなきゃいけなくなりますから。
彼女は、あ、そうそう、そのスタッフは女性なのですが、20年来、あの例のアーティストのファンだったんです。CDは全部持ってる。コンサートだって毎回行くほど入れ込んでた。しばらく前から一部週刊誌なんかで疑惑が報じられていたけど、絶対に間違いだと信じてた。それが、ああやっぱりねの悲しい結末。挙句にお薬仲間の女性までいたなんて、私の20年はなんだったのって、抜け殻のようになってます。
こんな時、編集長はなんて声を掛けてあげればいいんだろ。悩みに悩んで、自分までブルーになってきた。当機は機長のテンションと共に、徐々に高度を下げ始めました。だれかお客様の中に。。。

ある日、焼肉屋にて
先日、10年来の念願が叶って、近所の焼肉屋で夕食を食べました。まいど屋から車で10分くらいの、本当に近くのお店なのですが、意思を固くして気合を入れないと、なかなか入店できないことで有名なんです。軽い気持ちで出掛けることを許してくれない。何度か行ってみてはそのたびに諦めてすごすごと引き返しているうちに、とうとう10年も経っちゃった。最近ではその店のこともすっかり忘れていたところ、思いがけず絶好のチャンスが巡ってきたんです。まるで初恋の女の子と街中でばったり出くわしたみたいに。
五月晴れの休日だったその日。たまっていた仕事を片付けようとオフィスに来て、昼飯も食べずに作業を続けていたらもう夕方。さすがに腹が減ったし、家に帰ってもやることがないし、どうしたもんかと思案しながらふらふらとインターネットをさまよっていたら、あの店が出てきた。ああそうだ。自分は昔、この店に恋してたんだ。今も昔とちっとも変っていないみたいだし、ここは一丁、若かったころの想いを遂げてみるのもいいかもしれない。仕事は終わったし、時間はたっぷりあるし、日頃から月刊まいど屋編集部の仕事で精神力は鍛えられているし。すべての条件がそろっていることに、その時ハッと気づいたんです。
おばちゃんたちがつっかけサンダルで井戸端会議をしているようなのどかな商店街の中。ごくごく普通の、と言うよりはお世辞にもきれいとは言えない古びたお店です。玄関口の壁には大きな木が根元からメリ込んじゃって店と一体化してる。煙が充満した狭い店内にテーブルがひしめき合っているのが見える。三丁目の夕日に出てくるような雰囲気だけど、知る人ぞ知る有名店。いつ行ったって、寒空の下で軽く一時間は待つことを覚悟しなきゃいけない、ひとの忍耐力を試そうとする当時の彼女のようなお店。だけど肉はメチャクチャうまいらしい。それだけの試練を乗り越える価値があるらしい。あ、そうそう、店内の油まみれの壁には、安倍さんや小渕さんの揮毫が飾ってあった。彼らも頑張ってこの関門を突破したのかな。オバマさんも連れてくりゃよかったのに。どうでもいいけど。
話は戻りますが、その日も店の前につくと、まだ日が明るいというのに20人くらいの人たちが列に並んで待っていました。まるでパチンコ屋の新装開店みたい。すでに店内は一杯で、席が空き次第、順番に中に案内してくれるんだって。待ってる間、ビールを飲みながらメニューを見て、あらかじめ肉を注文しておきます。前もって仕込みをして、最高の状態で出してくれるんだってさ。うん、なかなかこだわってる。待ち時間にさえ意味がある。まいど屋もこんな筋の通った店を目指すべき。ご注文は順次的確に処理をいたしますので、お客様はあらかじめサポートセンターに連絡の上、パソコンの前で辛抱強くお待ちくださいませ。くだらない妄想をしているうちに、もうジョッキが空になった。なんだか待ちくたびれちゃった。どうでもいいけど、早く自分の番が来ないかな。10年来の恋人が実際はどんなひとなのか、早くこの目で確かめたいな。