まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。今、このページに集った読者の皆さんは奇跡を目撃しています。先月号の本欄で事情を説明した通り、ここにこうして今月号がアップされているのは、本来ならばありえないことなのです。ないはずのものが、どうしてここにちゃんとあるのか。残り一か月を切った時点で何の当てもなく荒野に放り出された月刊まいど屋が、なぜ何事もなかったかのように更新されているのか。ミッションインポッシブルな危機的状況を、まいど屋はいかにして潜り抜けたのか。
別に恩を着せるつもりはないのですが、この数週間の働きについて、私は読者の皆さんから最上級の称賛の言葉をかけてもらう資格があると自負しています。私は月刊まいど屋を救いました。ピンチをチャンスに変え、8月恒例の浮かれ騒ぎ的夏祭りの準備を何とか整えました。確かに、例のモデルの美女とフランス人は危険を察知してまいど屋を去ってしまいましたが、私は読者の皆さんをトランス状態に導くための新たな生贄を、自らの交友関係をこの一事のために破壊する覚悟で手に入れてきたのです。それは神の怒りを鎮めるのに十分な、完璧な処女性と瑞々しさを備えています。ご覧ください。彼は祭壇の上で身動きが取れないまま、恍惚の表情を浮かべてあなたの手早い処置を待っています。松明には火がともされ、ドラムのリズムがクライマックスに向けて狂ったようにそのテンポを上げています。シャーマンが髪を振り乱し、絶叫しながら歓喜の唄を歌っています。さあ、グサリとやってしまってください。そして自身の眼で、その顛末を見届けてください。さあ、早く。

今月のテーマは今木商事
その哀れな犠牲者は、まいど屋のトップページで「まいど君がゆく」を連載しているマンガ家の今木商事さんです。編集部から突然電話を受けて取材を強要され、わけもわからないうちに大勢の観客が見守る祭りのステージに引きずり出されてしまいました。
まず、今回のレポートのファイルNo.1では、事情がよく飲みこめない読者のために、彼とまいど屋の関係がどんなものであるのか、ざっくりとしたイメージを提示しています。あくまでイメージですから、ここでは些末な事実関係などはひとまず脇に置いて、彼が生贄にされるだけの理由を備えていることを、漠然とでも理解してもらえればと思います。
そして核心のファイルNo.2です。そこで編集部は果敢にもこの人物の自宅にまで押しかけ、問答無用のインタビューを行っています。初めは現地の体育館でも借り切ってそこにパイプ椅子を並べ、彼を呼び出して無制限一本勝負を挑もうと思ったのですが、ファイルNo.1に出てくる尾島君にそれだけはやめてくれと泣きつかれ、急きょ予定を変更したのです。ただし、もともと流血のデスマッチを古館アナばりに実況するつもりの企画でしたから、相手の自宅といえども手加減はしません。彼の奥さんの面前で、あのもったいぶった覆面を引っ剥がしてやるだけです。さてどうなったか。実は編集長である私も知りません。事情があって(詳しくはファイルNo.2の本文を参照のこと)私の代理で出向いたスタッフたちが、しっかりと務めを果たしてきたはずです。彼らは帰社後の報告で、ためらいなくトドメを刺してきたと涼やかな顔で言いました。さすが、編集部のメンバーです。私自身はこれからレポートを確認するのですが、彼らの働きは、見なくたっておおよそわかります。そう、完璧に、美しくも残忍に、ミッションは完了したんです。刺激に飢えた私と読者の皆さんのために。

優良人間
別に自慢するわけではないのですが、私は優良な人間です。決して自惚れではなく、客観的事実としてはっきりとそう申し上げられます。自慢というのは、自ら何かをひけらかすことですから、私の場合には当てはまらない。いいですか?私はとても慎み深い人間です。私が優良であるのは、私が自らの意思で決めたのではなく、日本政府がぜひそう名乗ってくれと言うから仕方なく認めざるを得なくなってしまっただけなのです。
今、私の尻のポケットにある財布の中に、選ばれた人間だけが手にすることを許される例のアレが挟んであります。私はそれを日に何度も取り出しては、持っている人間に対して周囲が示してくる、ある種のへつらいをそこに感じ取り、どうしても平凡になることを許されない自分の運命に対していささかうんざりとした気持ちを募らせているのです。こそばゆくも金色で祝福された私の生誕記念日の下には、黒々と縁どりされた「優良」の二文字が、まるで王の機嫌を取る宦官的態度で刻印されています。私に対して直接、優良だと言ってくるはしたない人間はまだいないのですが、彼、彼女らが私のことをどう思っているのかは、こうした動かしがたい証拠がある以上、聞くまでもなく明らかなことなのです。
もちろん、そうした気苦労のほか、私は常に社会的なハンデも負わされています。平凡な人々には恐らく想像もつかないことでしょうが、優良人間は実社会での様々な差別に直面しているのです。並の人間には当たり前のように与えられる、交通安全について学習する機会も私にはありません。半日かけて遙か遠方のセンターまで出向く代わりに、先日私がしたことは、最寄りの警察署におけるわずか30分程度の滞在だけでした。そこで私はあっけなく、私の資質についての公的な認定を受けました。
私は平成xx年の私の誕生日まで優良な人間です。生まれて初めてゴールドを手にした嬉しさのあまりこんな話をしているのではありません。嬉しいわけがありません。私は何度もそれを財布から引っ張り出してしげしげと眺めます。私は普通の人ではないのです。

お詫び
以前にも本欄で書いたことがあるのですが、この時期、編集部は猛烈な忙しさで、ある種独特の雰囲気に包まれています。暑さと疲労で殺気立ち、周囲の視線に配慮する余裕もなくなっています。例のカタログ更新のせいです。次から次へと殺到するカタログの山を片っ端から入力していたら、誰だって頭がおかしくなってくるんです。日中は耳栓とイヤーマフをダブルで装着し、周りの雑音をシャットアウトしてキーボードをひたすら叩いています。気が付くと(ほとんど気が付くことはないのですが)、歌まで歌っています。商品の型番と金額を、声に出しながら入力していると、それには次第にミュージカルのごとき節回しが生まれてくるんです。まるで豊田議員みたいです。
もちろん、編集部には彼女のように腹いせする相手の秘書はいませんから、おのずとそのストレスのはけ口は、入力作業から解放される真夜中に書いている、この月刊まいど屋の原稿に向けられます。今月号のまいど通信がいつにも増してロクでもないとするならば、それは私の人格に問題があるわけではなく、まいど屋の非人道的仕事量に原因があるはずで、読者の皆さんにおかれましては、どうか一々内容に目くじらを立てたり、本気で腹を立てたりなさいませんよう、ご協力をお願いいたします。

お盆休み
というわけで、まいど屋には休息が必要です。お盆期間中は世間並みに体を休め、少しはまともなことが書ける精神状態になって戻ってきたいと思います。月刊まいど屋とそれを愛読するようなほとんど変人に近い読者の皆さんなどほっぽり出して、遠いところに出掛けます。どうか探さないでください。

お休み: 8月11日(金)~8月15日(火)
当該期間中はまいど屋サポートセンターもお休みです。

*16日(水)から何食わぬ顔で戻ってきます。また、お会いしましょうね。