【桑和】出木杉君が目指した新たな方向性image_maidoya3
最近の桑和は何か違う。以前の優等生的な雰囲気が薄れ、徐々に自己主張を始めたように見える。よく注意していなければわからないほどのかすかな変化だが、それは確実に、桑和の中で進行している。長年、桑和を見続けてきた月刊まいど屋編集部には、それがはっきりと感じられるのだ。
  桑和のよさは、良くも悪くも万人受けする商品作りのうまさにある。誰もが違和感なく、安心して受け入れられるデザインと品質の確かさ。そして業界一良心的と言われる価格設定。この三つが相まって、広くユーザーの支持を獲得してきた。だが、同時にそれは没個性という、ある種避けがたい危険をはらんでいる。誰からも嫌われないってことは、結局、本当の意味では誰にも好かれていないということだ。これでいいんじゃない?いいヤツだから。そんな消極的な賛意は得られても、どうしてもこれじゃなきゃダメなんだっていう、熱のこもった視線を浴びることは決してない。桑和?ぼちぼち上出来だし、安いからそれにしとこうよ。じゃ、まいど屋さん、桑和ください。。。今まではそれで万事うまく回っていた。でもこれからはどうだろう。旧世代のワーカーたちが徐々に第一線から退き始め、個性化が叫ばれる中で育った新しい世代が、新しいワークウェアを探し求め始めるこれからの時代に。
  桑和自身もそれに気付いていたのだと思う。そして当然、長い葛藤があったのだと思う。出木杉君のままでいる選択肢だってあったはずだ。それはそれで非常に賢く、手堅い方法ではあるからだ。なにしろ、現時点では誰もが桑和を選んでおけば失敗がなく、安心だと思っているのだ。どうして敢えてイメージを壊す?信頼というヘリテージに勝る付加価値がどこにある?
  だが、桑和は変化を選んだようだ。編集部にはそれがよくわかる。恐る恐るではあるにせよ、着実に一歩を踏み出した気配が伝わってくる。近い将来、ユーザーの皆さんにも桑和の決意がきっと明らかになるだろう。新しい桑和を目にして、あるいは眉をひそめる人もいるだろう。でもそれはそれで仕方のないことだ。10人中、9人に嫌われても、残りの一人からは熱烈に愛される。桑和はそんなオリジナルな個性を、自らの強い決意で纏い始めているのだから。
 

桑和
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ルックスもカッコいい、こだわりのハードカジュアル『5113』
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『G.GROUND』ののぼりを掲げる藤井専務
「誰か一人に熱烈に愛される商品。まさしく、ここ数年、ウチが目指してきたところです。この人を満足させるために・・・。そんなモノづくりをしていこうとやってきました。ハードな作業で破れたら困る人には、徹底して丈夫なものを。ファッション性を重視する人には、徹底的にとんがったデザインをって」。話し手は、桑和の代表取締役専務、藤井荘大(ふじい・そうだい)さん。今回の大胆な方向転換の仕掛け人であり、旗振り役でもある。「でもね、こういうことができるのも、従来の万人ウケする商品がベースにあってこそ。強い個性を打ち出しているのは、数ある商品のごくごく一部です」。
  そりゃ、そうだよね。企業には経営ってものがある。だけど、俄然面白くなってきたことは確か。大きく膨らんだ期待を胸に今シーズンの桑和渾身のフラッグシップ商品を待っていると、藤井専務、「じゃ、コレからね」と、ステッチを効かせたワイルド感あるブルゾンを持ち出してきた。「これ、『5113』。『G.GROUND(ジー・グラウンド)』というブランドで出しています。綿100%の風合いを生かしたハードカジュアルで、生地は横ウネが特徴のグログラン。少し肉薄の日本製生地だから、軽めで動きやすいし、起毛加工と洗い加工をしているのでヴィンテージ感があって肌なじみもいい」。
  この『5113』シリーズ、思い切ってターゲットを絞り込んだ前衛的なデザインに目が行きがちだが、編集部がここで特に強調しておきたいポイントは、何といっても現場作業に即した丁寧な作り。桑和本来の持ち味は実は少しも失われていないのだ。例えば動きをスムースにするひじタックやひざダーツ。プリーツを入れて収納力を高めた胸ポケットには、スマートフォンもOKの携帯電話ポケットやペン差し。さらにブルゾンには、脇ポケットのほかに落下防止のファスナーポケットが付いて、フロントファスナーを開ければ、内側にもまたペン差し。一般的には脇ポケットを付けないシャツにも、脇にしっかりファスナーポケットを付けてアウターとしての機能を高めている。パンツも同様で、仮にトップスがコンプレッション1枚でも、パンツだけで十分収納できる。しかも、上下ともに夜間の視認性を高める再帰反射プリント付きと、芸が細かい。「必要と思われるものを全部盛り込みました。桑和らしいでしょ(笑)。ただ、先ほど言った通り、今回、デザインに関してはかなり思い切って遊んでみた。スーツでもカジュアルウェアでも細身がトレンドの中、現場では“やっぱり細身は動きづらいよ”という声もあるんですね。そこで敢えて流行に逆らって、実験的にワイドで力強いカーゴパンツを作ってみたりね。反応?かなりいいですよ。何だコレって思って印象に残るみたい。こういうデザインを嫌う人はたくさんいるかもしれないけど、こんなウェアを待っていたんだよって言ってくれる人もいるようなんです。桑和、よくやったって。でも、実はこのシリーズにはカーゴパンツをもう1モデル用意していて、こっちは従来のスラリとしたシルエット。あまり奇抜なものはイヤだっていうひとにもちゃんと応えられる。やっぱり桑和らしいでしょ(笑)」。
  桑和ファンならお気づきの方もいるかと思うが、実は桑和では、この『5113』シリーズの前に、テイストがよく似た綿100%のカジュアル『5773』シリーズを出している。「まだコンセプトも固まっていないうちにポッと出したら反応が良くてね。それで、後追いで本格的に『G.GROUND』を出した。ツナギやベスト、インナーなども揃えて。意外だったのは、ベスト(型番:5106)が非常に人気を博したこと。高めの価格設定なのに引き合いが多くて、正直、驚きました(笑)」。
  ところで、『G.グラウンド』のGって何?ブランド名について尋ねてみると・・・「G.GROUNDは“ゴリラ・オン・ザ・グラウンド”。略してG.G。ゴリラの力強さはハードワークに通じるし、ユーモラスな顔はカジュアルに通じる親しみやすさがある。それに大自然に生きているゴリラは、綿の持つナチュラルなイメージとも重なります」。力強い響きをもつこのブランド。専用ののぼりまで作ってPRしているので、桑和の力の入れようがわかる。
  さて、桑和の新たな方向性に対するホンキ度がさらに伝わってくる新商品がもう一つある。肩、ヒジ、ヒザに補強布を当てた、見た目にもインパクトのある『6773』シリーズだ。このシリーズで試そうとしている彼らの狙いは、ブランド名『HYBRID TOUGH(ハイブリッド・タフ)』からも容易に想像できる。「とにかく強くて丈夫な作業服を作ろう!がコンセプト。ベース生地は引き裂き、引っ張り強度に優れた東レの『パワーテックスプラス』。パッチ部分は一般的なナイロンの7倍も強く、あの吉田カバンも使っているインビスタ製『コーデュラファブリック』。2種類のタフ素材で最強のワークウェアを目指しました」。
  カーブを描く縫製が印象的なブルゾンは、背中ノーフォーク仕様。胸と脇ポケットのほか、ペン差しが胸・袖・内側の計3ヶ所に。カーゴパンツは立体裁断とひざタックで、見映えよく、動きやすく。スマホ対応の携帯電話ポケットや革手袋をはめたままでもすっぽり入る二重構造のカーゴポケットなど機能も充実。また、ブルゾンもカーゴもハードワークにつきものの汗のニオイを解消するため、消臭テープが施されている。「現場では作業内容も様々。社内でパッチの部分をこすって強度試験をしたので大丈夫とは思うけど、実際はどうなのか。楽しみでもあり、心配でもあり・・・」。
  この新商品、素材にこだわっただけあって価格は高め。それでも値段の割に反応が良かったという。「こういう商品は、展示会でもワクワクして楽しい。どんな反応が出るのか、答えがわからないものは面白いですね。逆に、ニーズがわかっていて出す商品は、よく売れるけどつまらない(笑)」。
  それでは最後にもうひとつ。今度は定番商品の中から藤井専務愛用の一着、防汚性がウリの『7223』シリーズをご紹介いただこう。「防汚にも2種類あって、汚れがつきにくい防汚と、汚れが落ちやすい防汚がある。汚れがつきにくいってことは、繊維にコーティングがしてあって水や油をはじくから。でも、一度繊維の中に汚れが入ってしまうと、今度は逆にそのコーティングのせいで汚れが落ちにくくなる。一方、汚れが落ちやすい防汚は、繊維の吸収性がいいってことで、洗剤液をよく含んで内部の汚れ繊維の外に出す。だから極端な話、汚れを吸収しやすいとも言える。ところがユニチカのプラズマ防汚加工は、この両方の性質を備えていて、汚れがつきにくいのに、汚れた場合でも洗えば落ちる。スゴイです。普段着ているからその性能がよくわかる。もちろん、汚れがゼロになるかといえば、そうじゃないけどね」。
  見た目はいたってベーシック。だが、防汚加工の分だけ価格は高くなっている。それだけに万人に受け入れられるものではないが、本当に汚れに困っている方には頼もしい一着となる。誰か一人が絶賛してくれたらそれでいい。桑和の想いは、ここにも貫かれている。
  以上、3シリーズ。特徴ある商品を紹介いただいたが、読者諸兄のアンテナに引っかかったものはあっただろうか。あったよというひとがいるなら、多分かなり感性が高い方だとお見受けする。きっとこれからは桑和の新商品発表が待ち遠しく思えるようになるだろう。一方、何だこんなものと思ってしまった方も不安に思うことはない。藤井専務が約束した通り、桑和は従来の出木杉君の商品だって今まで通りしっかり作り続けていく。どっちにしても桑和を選んで間違いはない。以下、今期オススメのラインナップを紹介しておこう。
 
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とにかく丈夫!ハイブリッド・タフ『6773』シリーズ
 

    

洗練のワークスタイルは雰囲気と実力を併せ持つ!高品質な日本製素材をクールなアメリカンフェイスに仕上げた5113シリーズ

国産の綿100%生地を起毛加工と製品洗いで風合いよく。ワイルドフェイスで超カッコいいウェアは、ひじタック、ひざダーツで動きもスムース。ブルゾンもカーゴもファスナーポケット、スマホ対応の携帯電話ポケット、再起反射プリントなど充実仕様。ひとまわりゆったりのワイドカーゴは動きやすくて作業の効率アップ間違いなし!


理想のタフモデルはモダンヨーロッパの香りをまとったハイブリッド仕様!最強の先進マテリアルで武装した6773シリーズ

とにかく強くて丈夫なウェアが欲しい諸兄に!引き裂き・引っ張り強度に優れた東レのパワーテックスプラスに一般的なナイロンの7倍強いコーデュラファブリックの最強コンビ。ブルゾンは背中ノーフォーク。カーゴパンツはゆるやかなカーブを描く立体裁断とひざタックで動きもラクラク。イヤなニオイをシャットアウトする消臭テープ付き。