【土牛産業】源流は播州三木打、肥後守---土牛image_maidoya3
ハンマー系商品で圧倒的な人気を誇る土牛が、最近、工具差し、ミニカッター、ボルトクリッパーなどでも人気を高めている。ユーザーからの指名買いが多いから、全国の作業服店、金物店、ホームセンターなどで、年々、定番商品としての取り扱いが増えているという。
 品質がよく、新製品の開発が頻繁だというのが、業界の土牛評。実際、新製品の発売はほぼ毎月で、まいど屋でもそのキャッチアップにかなり苦労するほどだ。
 「土牛といえばハンマー」という固定概念を覆された月刊まいど屋編集部では、今回の特集に急遽、土牛を追加。早速、ここ数年、特に作業服店ルートに力を入れているという土牛本社を訪ね、強さの秘密と今後の商品展開についてお話を伺った。
 

土牛産業
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取締役常務の中井健雄さん(右)と営業課長の須田正弘さん
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敷地内に金属素材の鍛造工場も有するDOGYU(土牛産業)本社(兵庫県三木市)
5000坪の敷地に工場と本社社屋。80人の社員がそこで悠然と仕事に励む。広い敷地で、開発から製造まで自社で一貫して行うのが土牛のやり方。法人化は1951年だが、創業は1908年。もともとは鉋の刃物を作っていた土牛は、伝統のあるもの作りの会社である。そして今回は、土牛のある兵庫県三木市についても多少説明を加えたい。刃物製造が地場産業として土地に根付き、その伝統が土牛の職人的なモノづくりに大きな影響を与えているからだ。
  当地で最も有名なのは三木ならではの刃物『肥後守』である。また、鋸、鑿、こて、小刀、そして土牛も以前作っていた鉋は経済産業省から『播州三木打刃物』として伝統工芸品の指定を受けているほどだ。一時は中国のめざましい発展に押されていた
  が、高い技術力で付加価値を高めることで、地域の力は逆に高まっている。筆者がたまたま遭遇した地元の方々なども、『三木市は職人が作る髭剃り用レザーの名産地だ』と誇らし気に語ってくれた。職人達による金物産業が今も生き続けている土地柄なのだ。
   「確かに、うちのメイン商品はハンマーですが、三木の土地柄や、鉋の刃物を作っていた技術は、より新しい形で製品作りに投影されているかも知れません」(取締役、中井健雄さん)。
   例えば、ハンマーのハンマー・ヘッドは、用途により硬度が変わる。これらの硬度は、刃物に焼きを入れるように、硬さを変えるために焼きの入れ方も変えて行くのだが、その焼き入れも自社で行っている。当然、土牛秘伝の焼き入れ技術になるので詳しく紹介する事は出来ないが、鉋の刃物時代からの焼き入れ技術が製品の品質向上に大きな役割を果たしていることを、土牛のハンマーは実証している。
  品質が良ければ、自然と人気は高まる。特に微妙な感触や使い勝手に気を使う職人の道具ならなおさらだ。実際、多くの職人が通うワーク・ショップでは土牛製品の扱いは年々増える一方。彼らが指名買いする事例も増えている。また、親方が若い職人に土牛の製品を薦めるケースも多いと聞く。今や、ハンマーといえば土牛と言えるほど、その存在感は圧倒的に高まっている。
   さらなる商品開発にも余念がない。例えば、メタ・フック・シリーズなどは、常に現場の声を大切に拾い、製品開発に活かしている土牛独自の商品。解体現場などでハンマーを腰に吊るしたまま、ワン・アクションで留められ携帯も出来る。そして耐久性も抜群のスグレモノである。あるいは、レスキューツールにも着目し、防災現場で活躍するプロフェッショナル・アイテムにも力を入れている。レスキューアッキスや、脱出ハンマー、携帯用手斧などは、ハンマーの土牛ならではの技術的ノウハウを活かした防災用品と言える。
   自社で開発、製造生産まで全てまかない、全国規模に展開して来た、信頼感抜群のもの作り会社、土牛。しかし、そんな会社の勢いとは対照的に取材時はむしろ温和で控えめな印象。気負わず、伝統を踏まえた、地に足着いたモノ作りの姿勢こそが、土牛発展の秘密かもしれない。
 
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現場の声に応えて完成させた、ワンアクションでミニカッタなどの工具の着脱を可能とするカラビナタイプのブラメタフック
 

    

ボルトクリッパーシリーズ

職人魂を込めた土牛のクリッパーシリーズ。職人の間で信頼が高い。操作性も抜群。


カッターシリーズ

素材にこだわり、土牛の職人が一丁一丁刃部調整を行う。本物の切れ味を実感できるカッターシリーズ。