【タニザワ】半円形に賭ける執念image_maidoya3
ヘルメットなんて、どれでも同じ---そう思っている人は案外多い。確かにどのヘルメットを見ても形は似たり寄ったり。素人には違いが分かりにくい。そんな認識を一変させてくれるのが、タニザワのヘルメット。究極的には頭部を保護する目的だけであるハズの半円形の「保護帽」に、手を変え、品を変え、偏執的ともいえる執念で新たなコンセプトを持ち込み、商品開発していく。例えば、「シールドヘルメット」。溶接や研磨などの作業をする際、従来はヘルメットと別に着用していた保護面を、ヘルメット自体に内蔵してしまったスグレモノ。また、今の流行りなら、「透明ひさしヘルメット」。ヘルメットのひさし部分を透明な素材にして頭上の視界を飛躍的に広げた画期的な商品だ。透明のひさしはカラーバリエーションを充実させて、デザイン的なインパクトも大きい。こうしたアイデアの商品化はすべてタニザワが先鞭をつけた。
  差別化は難しいと思われるヘルメットで圧倒的なシェアを持つ原動力は、業界随一と言っていい研究開発力。大手ゼネコンなどの大きな現場で、タニザワのヘルメットが数多く採用されているのも、また、まいど屋のヘルメット売上ランキングで常に首位を独走するのも、彼らの技術力への絶大な信頼感のためだろう。今回のインタビューでは、タニザワ本社にうかがい、彼らの研究開発に賭ける執念の源泉に迫ってみようと思う。

タニザワ
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東京築地近辺のタニザワ本社
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技術系らしい雰囲気のエントランス。受付に置かれたヘルメットは愛嬌たっぷり。
創業は昭和7年。ヘルメット製造をはじめる前は、鉱山内の安全用具をアメリカから輸入していたというタニザワ。現場の危険性を熟知し、安全性を最大限に高めようとするDNAは、彼らの生い立ちから刷り込まれてきたようだ。「戦前、ヘルメットなどの安全用具はアメリカが進んでいたので、危険だった日本の鉱山現場はそれを輸入していたんです。しかし当時は、輸入に時間がかかり、値も張った。それで模倣からヘルメットや無線など、鉱山用の作業道具の製造を始めました。今、鉱山はありませんし、現場の形態も変わりましたが、『危険な現場での安全を国内で広める』という創業者の姿勢は、気持ちの上で引き継いでいます」(企画グループ主任 相沢さん)。
   作業員の安全を何よりも優先するタニザワにとって、安全性を高めるための研究開発に誰よりも時間と労力を費やすのは、会社の存在理由そのものだと相沢氏は説明する。「最初にヘルメットを作ったんだから、他のところが追いついて来たら、ウチはもう一歩先に行かないといけない。意地もありますしね。耐久性の面では、コストに配慮しつつ、国の検定で決まっている線よりずっと上のレベルで作っているんです。また、ヘルメットは固ければ良いワケではなく、変形して衝撃を吸収するものなので、外側の帽体と、内装の柔らかい部分のバランスを重視しています。重さに関して言えば、強度に目配りしながら、形状まで変えて工夫しています。例えば、ある部分をコンマ5ミリ薄くして5~10グラムずつ減らすとか」。
  安全性の向上以外にも、重視することはたくさんある。ユーザーの声に耳を傾け、問題点を見つけ出し、製品に反映させることもその一つ。「接着でなく一体型の、透明のひさしを付けてファッション性を高めたり、穴をあけ蓋をかぶせた二層構造を開発して、通気性にもこだわってきました。シールド・ヘルメットに関しては、実は昔の鉱山時代のアイデアです(笑)」。こうした、ほんのちょっとしたユーザーへの気配りと発想の違いが、結果的に商品ラインナップの大きな差として表れてくるのだろう。これからも要望があれば、どんどん商品ラインを拡大していくそうだ。
  「コンピューターで力学的に解析も出来ますが、何度も実験を繰り返して改良していく方が無駄なく仕上がるのがヘルメットです」--相沢氏が語るタニザワの開発風景は、日本をリードする研究開発会社というよりは昔ながらの頑固な職人のイメージに近いかもしれない。「ヘルメットの基本である半円形は実に効率よく衝撃を吸収してくれます。どんなに開発しても、あの形を超える事って難しいんですよね」。
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プロフェッショナルな姿勢が印象的だった相沢氏
 

    

通気孔付きヘルメット

二層構造による大きな通気孔で高い通気性を実現。熱気を効果的に吐き出すレベルの高い設計に要注目。透明ひさしのカラーバリエーションが楽しい1830は視界の広さが抜群。快適さと安全性を両立したスグレモノ。


ソフトカバー付ヘルメット(ライナー付き)

帽体外側にソフトカバーの付いたヘルメット。狭い場所で周りに接触しても傷付けない。着用中のムレを防止する通気孔も要チェック。