まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。お盆休みも終わって気力充実、ますます絶好調と言いたいところですが、早くもガス欠でエンストしそうです。オレンジ色のエンプティーランプはもうずいぶん前から点きっぱなし。次のサービスエリアまでのあまりの距離に半ば絶望しながら車を走らせるドライバーのように、もうどうにでもなりやがれとヤケっぱちのフルアクセルで正月休みを目指しています。
読者の皆さんが楽しくお休みを取っていたお盆期間中、どうしてそうなっちゃったのかわからなけど、ずっとオフィスで仕事をしていました。本当は旅行にでも行きたかったけれど、そのうち予約をしようと思って後回しにしているうちに気が付いたらもう手遅れ。外出の機会が失われてしまったショックのあまり、ふん、旅行なんぞには最初から行きたくなかったのだと自分自身に言い聞かせ、ならば仕事の鬼になってやると連休中も毎日会社に来て、別に急ぎでもない仕事をとにかく片っ端から片付けていったというわけ。終戦の日の黙とうを誰もいないオフィスでするほど悲しいことはないです。耐えがたきを耐え、忍びがたきをしのび、もって全国のまいどファンのためにコンテンツの充実を欲す。一人号泣。こんなことなら、近場でもどこでも出かけてくりゃよかった。皆さんはお盆休み、楽しめました?

今月のテーマはヘルメット
今回は久しぶりにヘルメット特集をやりました。タイトルは事情通がこっそり教えるヘルメットの話。するどい読者の皆さんはもうお気づきかと思いますが、思わせぶりなタイトルの裏には、編集部の迷いとある種のためらいが隠されています。事情通っていったい誰だよって聞かれたら正直に白状しちゃいますが、そりゃ、まいど屋自身です。じゃあなんでヘルメットを販売しているまいど屋が、ヘルメットを探している読者の皆さんにヘルメットについてこっそりと教えなきゃならないのか。違法ドラッグ販売の裏サイトじゃあるまいし、正々堂々と人気のヘルメットについて語ればいいんじゃない?
本当はもちろんそうしたかったんです。でも、そこは編集部にもやむにやまれぬ事情がある。ついでに白状すると、ヘルメットは他のジャンルの商品と違い、商品の特徴を文章にするのがなかなか難しいんです。はっきり言っちゃうと見た目はどれも似たりよったりだから、何社もレポートしていると、だんだん書くことがなくなってくる。いきおい、テキストは個別の商品説明から外れたウラ事情に踏み込んでいくことになる。本来は書いちゃいけない編集部のグチやメーカーさんの悪口まがいのことまで書き始める。事情通であるまいど屋の正直な心情を吐露したものですから、それはそれで読者の皆さんにとっても有益な情報だとは思うのですが、出来上がった原稿を読み返すと、さすがに冷や汗が出てきます。親切に取材に応じてくれたメーカーの担当者さんも、きっとレポートを読んだら怒るだろうなぁ。できれば取材を受けたことなどすっかり忘れていてくれたら助かるなぁ。そんなわけで、今回のタイトルは事情通がこっそり教えるヘルメット事情。月刊まいど屋の読者の皆さんだけがこっそりと読んでくれたら幸いです。

亜熱帯のブラックスワン
皆さんは雑草取りってやりますか?庭がある豪邸に住んでるひとでもない限り、あまり縁がなさそうに思えるけど、まいど屋のスタッフはみなやります。別にスタッフ全員が豪邸を持っているセレブなわけじゃないです。セレブじゃない人間が雑草取りをするとしたら、それは町内会の清掃当番か、会社の業務命令のどちらかしかない。それぞれのスタッフが町内会でどんな当番をしているのかなんて知るわけないので、ここで私たちが雑草取りをしていると書いているのは、要するに、まいど屋の業務の中に雑草取りがあるってことです。しかもかなり重要なミッションとして。
というのも、まいど屋物流センターに隣接した駐車場は砂利が敷いてあるだけで舗装がされておらず、ちょっと油断すると雑草がすかさず勢力を拡大してくるから。初めは隅っこの方で遠慮がちにしていても、気が付けば我が物顔で敷地の周囲を取り囲む。そして雑草に蚊はつきものですから、物流センターのスタッフは終日、蚊に悩まされることになる。だからスタッフはみんな真剣に雑草を抜く。太めの草はシャベルで掘り返して根こそぎ抜く。一本たりとも生かしちゃおけない。なけなしの小遣いが入った財布を落としたときのように、目を皿のようにして、敷地内の地面を点検して歩く。
で、先日、あるスタッフが見つけたんです。普通の雑草とは明らかに異質な力強さを持った、緑色のその物体を。よく見ると、同じ形をしたものが周囲に四つ。まるで寄り添うように、地面から顔を出している。緑色で、平べったくって、画鋲のようなトゲトゲがたくさんついてる。これはどう見てもサボテンである。半信半疑のスタッフたちがみんな集まってきて、しばらくつつきまわしてみたけれど、サボテンにしか見えないのである。埼玉にサボテンが自生しているなんて話は聞いたことがないけど、とにかく私たちはその緑色の生命体をサボテンだと結論付けた。そしてまいど屋があるこの場所は、いつの間にか亜熱帯になっていたんだねと話し合った。道理で毎日暑いわけです。嬉しくってフェイスブックにも写真をアップしたので、ヒマを持て余しているひと、または植物学に興味のあるひとは見てみてくださいね。

ついでに
サボテンの話にはもう一つ小ネタがあって、個人的にはこっちの方でしばらく笑えたので書いておきます。例のサボテンの第一発見者であるスタッフの話。新人の彼が雑草取りをしたのは、実はその日が初めてで、かなりはりきって気合を入れてた。除草剤まで用意して、炎天下に雑草を抜き抜き、買ってきた除草剤をあたり一面にまきまくった。で、数時間後にようやく作業が終わって通常業務の持ち場に戻ってくると様子がおかしい。青い顔をして、ぐったりして、サボテン、サボテンと口走っている。聞くと風に舞った除草剤を大量に吸い込んじゃったんだって。除草剤が合法的なドラッグなのかどうかはわからないけど、間違いなく体に悪そう。もしかして、最近ハーブが厳しくなったから、こっちを試してみたのかな。薬効が強すぎて、幻覚でも見たのかな。結局彼はその日は早退して、翌日も休みました。ほかのスタッフが実際にサボテンを見たのは、彼が戻ってきてからのことです。ちなみに、除草剤はサボテンの周りにだけはまいてなかったみたい。優しいですね、彼は。

一夜の過ち
顔が痛いです。何かの比喩ではなくて、文字通り顔面がズキズキします。顔が痛くなったひとならわかると思うけど、顔が痛いと物事に集中できなくてつらいです。この原稿だってなかなか前に進まない。本当は痛くて原稿どころじゃないんだけど、締め切りがあるので仕方なくデスクに向かっている。ときどき腫れ上がった頬をさすりながら。
昨晩のこと。風邪気味だったので、久しぶりに早めに帰宅して寝ていたんです。微熱のせいか、身体が火照って寝苦しい。で、無意識のうちに夜中に布団から出て、フローリングの床の上をゴロゴロ転がっていた。そして、やはり意識がないまま、何かの拍子に立ち上がろうとしたみたい。なぜだか知らないけど勢いをつけて。
気付いたときは、顔面を両手で押さえた格好で絶叫していました。室伏広治なみの大絶叫が真夜中のマンション中に響き渡ったと思います。両手の指の隙間のほんの5㎝先には鋭角な柱の角が見えている。ほんの数秒前、その柱とJシネマのラブシーンのように激しく接触した記憶が確かにある。真夜中になぜ柱と愛を語り合わねばならないのかわからないけど、運命のいたずらでとにかく我々は真夜中に交わりを持った。そして僕は手で顔を覆ったまま、膝から床に崩れ落ちた。
今も昨夜の記憶がまだありありと残っています。一夜の過ち。顔の左半分が熱をもってズキズキと痛み、あれが夢ではなかったんだと僕に教えてくれます。そんな記憶をひとり胸に抱えながら、ときどき頬をさすりながら、いつものように集中できない自分を持て余しながら、この原稿を書いています。