まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。なんだかんだとやっているうちに、今年ももう最終号になりました。最終号ってことは、後がないってことです。ここでヘマをしたら、もう取り返しがつかないってことです。でも、裏を返せば、今回しっかりと有終の美を飾れば、今までの失態が全てチャラになる可能性もある。終わりよければすべてよしって言うじゃないですか。思えばこの一年、メーカーの営業さんをこき下ろしたり、ブラジャーをつくったり、そして素っ裸の女性にそのブラジャーをつけてもらって撮影したり、またあるときは突然失踪してみたり、ロクでもないことばかりしてきたけど、これを機会に更生して立ち直れば、少しはまともな会社として、そして常識を備えた一人前の社会人として、皆さんに認めてもらえるかもしれない。だからここは本当に慎重に、気を引き締めて頑張らなきゃ。
で、どうしたらいいんだろ。柄にもなく改まったりすると、緊張してモノが言えなくなっちゃう。そうだ、一年の総括っていうのはどうだろう。月刊まいど屋編集部はこの一年、何を達成したのか。でも、毎年この時期になると思うのだけど、一年間で特に何かをやり遂げたっていう実感はなかなか湧いてこないんですよね。無我夢中でやっているうちに、気付いたら終わっていたというか。ただ、最後まで走りとおして、歩くことはしなかったなぁって気はします。ふざけたこともあったけど、ちゃんと真剣にふざけたし、落ち込むときにはやはり手を抜かずに真剣に落ち込んだ。どんなことをしても、決していい加減にお茶を濁すようなことはしなかった。それだけは胸を張って言えると思います。曲がりなりにも、毎月こうして読者の皆さんにレポートをお届けできたってことで、それなりに今年もいい年だったのかな。さあ、これが最終号。あともう少し。ヘマをしないように。何かにつまずいて、転ばないように。

今月のテーマは防寒服
まいど屋の防寒服は、あったかいんだからあ。ちょっと古いですか。すみません。でも、どうしてもこのセリフを言いたかったんです。読者の皆さんに死語だと嘲笑されようが、罵詈雑言を浴びせられようが動じない。ひとには絶対に譲れないものがあるんです。あったかいんだからあ。まいど屋の防寒服はあったかいんだからあ。
率直に申し上げると、今回の企画は、このあったかいんだからあのためだけに存在しています。あったかいんだからあを号タイトルにしようと思いついたのは、ずいぶん前、まだ桜も咲く前です。休みの日に、たまたまテレビをつけたら、この曲が流れてきた。最近の曲はあまり詳しくないのですが、通っている牛丼屋のBGMでよくかかっていたから知っていました。で、画面をよく見ると、なんと、自分の家の玄関先が映ってる。なんでも、その曲を歌ってる芸人のお兄さんが川口市の出身だそうで、そこで地元に凱旋して一曲披露したというわけ。
それにしても自分の家が全国ネットのテレビに映るっていうのは、特に意味もなく興奮するもんなんですよ。で、それからしばらく、オフィスであったかいんだからあを連発していたのですが、他のひとは自分ちがテレビに出たわけでもないし、その番組を見てもいないのだから、一緒になって興奮してくれるはずもなく、必然的にその運命的なあったかいんだからあは、まいど屋のスタッフ間ではブームにならずに終わりました。
そう、もうおわかりですよね。今回のあったかいんだからあ特集は、社内で完全に黙殺されてしまったあの感動を、読者の皆さんと共有するために仕組んだ個人的なリベンジなんです。正しい興奮のあり方として、それが局地的な過熱現象、すなわち自分だけの執着にとどまっていていいはずがない。社内のスタッフが全員わからず屋であるのなら、思い切って間口をぐっと広げ、全国の月刊まいど屋読者の皆さんとこの熱い想いを分かち合わなければならない。執念深いようですが、10か月もの間、この日が来るのを待ち続けました。アイデアを温めすぎてちょっと古くなってしまった気がしないでもないけど、この期に及んで後には引けない。もうやるしかない。あったかいんだからあ。さあ、感動してください。さあ。
*そうそう、先月号の作業服特集からコーコスさんが抜けたため、急遽ピンチヒッターで登場したメーカーさんの名前はヒミツです。でも、もしかしたら、作業着としてはかえってコーコスさん以上にいい取材ができたのかも。

掃除機を情熱的に操ることについて
書こうか、書くまいか。ずっと以前から何度も逡巡し、結局書くのを思いとどまってきた話があります。その話題は一見、ごくありふれた体裁をとっていますが、根っこのところで極めて個人的な人間性が露呈してしまっていて、こうして文字にして他人に読まれると、ちょっと具合が悪いことが起きそうな類の事柄なんです。だからどんなに書くネタに困って苦しんでいる時でも、それだけは書いちゃいけないと自制してきた。いわば、ためらい傷がたっぷりついて、固いかさぶたになっているような話です。
トピックスは健康管理。特に問題ないように見えますよね。皆さん、しっかり健康管理してますか。書き出しはそんな感じで始まります。どこかの雑誌でたまに特集しているみたいに、○△で健康になった、×○で身体の調子が良くなった、そういう皆さんが興味を持ちそうな前フリをして話を始めます。作業着を着て頑張っている皆さんなら、ボディーケアは大事でしょ。身体が資本なんだから、ほとんどの読者の方はスムースに話に入って行けるはずです。そして皆さんと同じように、一日中ずっと座りっぱなしで体がなまりがちになる編集部の仕事も、実は健康管理が大事なんです。だからリアリティーもしっかりある。それがどうして具合が悪いのか。さっさと書けばいいじゃないか。ですよね。それなら、えい、もう年末だし、読者の皆さんだってきっと浮かれ気分だから、ここで突拍子もないことを書いたって大目に見てくれるか、あるいはうまくいけば、そのまま気づかずに素通りしてくれるだろ。もうどうにでもなりやがれ、ってことで本日解禁。あの話をします。掃除機を情熱的に操ることについて。
まいど屋がオープンして以来、いや正確に言うとオープンする前から、一つのルーチンにしていること。それは朝の掃除です。オフィスから倉庫まで、掃除機を使って隅々まできれいに掃除します。風邪をひこうが、二日酔いでふらふらしていようが、絶対にサボることはありません。それはもちろん会社をきれいに保つためですが、もうひとつ重要な目的は、身体を動かすことなんです。掃除機の柄を持ち、太ももがフロアに着くくらいまで、股関節が悲鳴を上げるところまで腰を落とす。そのままの姿勢で重心をゆっくりと前方に移しながら上半身を何度も左右に捻って掃除機をかける。下半身に十分負荷がかかっていることを確認したら、今度はそろりと立ち上がり、左足を徐々に頭のてっぺんまで持っていく。海老ぞりの態勢を保ったまま右手一本で掃除を続け、それからまた深く腰を落とす。1ストロークに時間をかけ、それぞれの筋肉が正確に動作していることを確認する。そうやってたっぷり1時間弱は掃除します。文字にすると、大したことはなさそうですが、慣れていないと5分で息が上がります。そして確実に全身筋肉痛になる。夏場なら床に水たまりができるほど汗をかく。スポーツジムでちゃらちゃらと時間を過ごすよりも絶対にキツイです。ウソだと思ったら、やってみてください。
掃除中、たまに飛び込みのセールスマンが来ることがあります。そういうときでも掃除の手を止めることはないです。足を頭より高く持ち上げ、海老ぞりになって何の御用でしょうかと言うと、大抵のひとは帰ってくれます。何かまっとうな用事があってやって来た運の悪いメーカーのひとにだって容赦はしません。止まっていたら、始業時間に間に合わなくなっちゃうんだから仕方ない。それにそんな時間に訪ねてくるのが悪いんです。朝はオフィスに来てくれるなって固く断ってあるんです。まあ、メーカーさんの場合は新聞やオフィス機器のセールスとは違ってまた来ますなどと帰ってくれることはないから、海老ぞりの姿勢のまま商談や打ち合わせをすることになる。それはかなり情熱的な会話になります。フラメンコの踊り手と観客の間に成立する、ある種のパトスのように。
こんな風にして、まいど屋の朝は始まります。これまで申し上げた通り、この朝の大騒動は単発的で特殊な出来事ではなく、まいど屋のビジネス・アズ・ユージュアルですから、スタッフは誰一人として口をはさんだりしてきません。多分目に入ることもあるんだろうけど、それについて口にすると、気力がくじけてしまうと思っているのかもしれません。毎朝の情熱的なダンスは、今ではまいど屋のエートスとなり、誰もが諦めて首を振るか、見て見ぬふりをするしかないものなのかもしれません。
読者の皆さんがこの告白を読み、まいど屋ってアブナイお店だったんだなどと思いそうになったとしたら、ここにいるスタッフを見習ってただ見て見ぬふりをしてください。それは小一時間もすればすぐに終わります。南国のスコールのようなものなんです。黙っていれば通り過ぎていく。そして後には穏やかな日が射してくる。決して怪しい者ではありません。ホント、大丈夫ですから。でも、こんなこと、やっぱり書かなきゃよかったかな。

今年もありがとうございました
冒頭で年末のご挨拶らしきものを書いたので、ここでは簡単なお礼だけにしておきます。今年もまいど屋は、無事に一年終えることができました。まいど屋にお立ち寄りいただいたすべてのお客さま、何度もお買いものしてくれたリピーターの方から、一度覗いてみたけれど結局は買うのをやめてしまった方まで、本当にありがとうございました。これだけ数多くの、言ってみれば無数のお店がある中で、まいど屋に(一度でも)足を踏み入れてもらえたということは、それだけで奇跡のようなものなんだと思います。きっと、特別なご縁があったんです。買った買わないは別にして、本当に心から感謝します。ありがとう。
また、月刊まいど屋にお付き合いしてくれた読者の方にも、厚く御礼申し上げます。文章の中で至らない点やお見苦しい点が多々あったこととは思いますが、どうかご容赦いただければと思います。
最後になりますが、来年も皆さんにとって、よい年でありますように。そしてまた、ここでお会いしましょうね。

年末年始期間中、まいど屋は下記の通りお休みさせていただきます。
12月30日(水)~1月4日(月)