まいど通信


        

 まいど! 編集長の奥野です。今回の特集は「事務服」ということで、いつもより“女子力マシマシ”でお届けしました。作業服をはじめ安全靴やヘルメットなど、なにかとガテン系の成分多めな「月刊まいど屋」ですが、今回は土と汗の匂いがまったくしない貴重な特集となっております。

 いつも「おお、ここにもペン差しがある!」「うわ、透湿のスペックすげぇ!」とか言ってる機能性フェチな編集長に「女性を美しく見せるオフィスウェア」の魅力をきちんと表現することができたのか……。その判定は読者に任せるとしましょう。

●未知との遭遇!

 正直、今回の取材が人生初の「事務服」との遭遇でした。男なので着たことがないのはあたりまえだけれど、よく考えてみれば事務服をロクに見たことすらなかった……。この事実には自分でも驚きました。

 いや、ランチ時のオフィス街には事務服の人がよくいるのは気づいていたし、銀行で女性スタッフが着ているヤツだ、とかいった「知識」はあったんですよ。しかし、その服に「注目」したことが人生において一度もなかった。事務服は、完全に私の中でオフィスの風景の一部であり、「この銀行の制服はオシャレでいいなぁ」「あの病院の事務員の格好は華やかだ」なんてことは一秒たりとも頭をよぎることはありませんでした。

 と、こんなことを書いていると「おまえは事務服をバカにしているのか!」という声が聞こえてきそうですが、もちろんそうではありません。むしろ、私のメッセージは180度逆で、

「周囲の人に何も意識させないオフィスウェアってすごい!」

 ということなのです。

 考えてみてください。もし会社で働く女性たちのウェアが「何の変哲もないもの」ではなかったら。「あれはカワイイ」「これはダサい」と語ることができるようなものだったら、と。

 まず着用する女性たちにとって余計なストレスが生まれるでしょう。出社して着替えるたびに「このセンスはないわー」と感じる人も出てくるだろうし、自らのオシャレを意識するうちに、ほかのオフィスの格好と比べたり、スカーフなどのアレンジなんかを考えなくてはならなくなってくる。

 こうなってくるとユニフォームの利点が失われてしまいます。そう、「何も考えなくていい」という最大のメリットが!

 さらにここからは個人的な意見ですが、オフィスウェアは男性にとっても都合がいいのではないでしょうか。いや「事務服の女性にグッとくる」とかいう話じゃなく、逆にオフィス風景に完全に溶け込んでしまう点がナイスだ、と。

 私服と違ってオフィスウェアだと、個々人のパーソナリティに意識が向かないので、「この人、何歳なんだろう?」とか「今日はオシャレしてるからデートかな」とか、余計なことを一切考えなくて済む。男性も女性とはまた違った意味で「何も考えなくていいからラク」と言えるのではないでしょうか。

 まとめれば、女にとっても男にとってもラクで、仕事がやりやすくなるのがオフィスウェアではないか、と。

 そう考えてみると、事務服ってスゴイものです。「着る側」からは、着心地や動きやすさ、メンテナンス性など、厳しい注文が付けられ、「採用する側」からは、コストをはじめ、業務の効率化、イメージアップ効果を求められている。しかし、そんなシビアな雰囲気はみじんも出さず、何の変哲もないものとしてオフィスに溶け込んでいる。

 日本独自の「事務服」とは、じつはものすごい叡智なのではないか――。こんなことを考えた今回の取材でした。

●安全靴で自転車

 前回の「まいど通信」で「ダイヤル式の靴がほしくなった」という話を書きまいた。あの原稿を送ってから、日を追うごとに物欲は増していく一方で……。ついに買ってしまいました。

 ダイヤル式の安全スニーカーです。

 当初はダイヤル式のウォーキングシューズを探していたもののデザインが気に入らず、「電車であの大きなスニーカーショップに行ってみようか」とかあれこれ考えているうちに、某メーカーのカッコいい安全スニーカーを発見。「もう安全靴でいいか!」となってしまった。

 自治会の作業などほかに防災用品としても使えそうだし、という理由のほかにちょっと試してみたいこともありました。それは、

「安全靴は冬のロードバイクにちょうどいいのでは?」

 という仮説です。

 ご想像の通り、冬の自転車は寒くて大変なわけですが、じつは体や手はなんとでもなるのです。運動するからすぐ温まるし、冬用グローブやスポーツ用の腹巻なんかも充実していますから。

 問題は「つま先防寒」です。つま先は乗っているあいだずっと風を受けるし、運動しても体や手のようには温らない。通気性のいいジョギングシューズなんかでロードバイクに乗ったら一発で霜焼けになってしまうのです。

 靴の上から履く「シューズカバー」という商品もあるものの、歩くときは外さなきゃならないわけでかなり面倒くさい。一日中走り続ける場合にはいいんでしょうけれど……。

 そんなわけで、サイクリストはだいたい各自の創意工夫で乗り切っています。風が入らない防水のスニーカーや防風素材の靴下を履いたり、つま先をアルミホイルで包んでから靴を履いたり、とネット上ではさまざまな"俺のつま先防寒"が披露されています。ただ、決定打はありません。

「もっと簡単なつま先防寒はないものか」

 そんなことを考えていたある日、ふと思ったのです。

「先芯は、風を通さないよな?」

 よく考えてみれば、自転車用のシューズは安全スニーカーに似ています。ペダルを踏む力が逃げないようにソールはカチカチ。アッパーも風を通さないタイプが多く、靴ひもだと巻き込みが怖いのでダイヤル式のモデルが多い。ひょっとして両者はとても近いのでは……。

 と、こんな考えもあって安全靴を選んだのです。

 さて、結果はどうだったのか?

 4月でも早朝はつま先が冷えるのですが、安全靴ならだいぶマシでした! 本当はもっと寒い時期に試してみたかったんですけど、少なくとも「つま先防寒の効果がある」とは言えます。厚手の靴下を履けば、真冬でもなんとか通用するかもしれません。

 先芯があるとペダルが踏みにくいのでは? と思う人もいるでしょう。そんなことはまったくないことには自分でも驚きました。先芯のせいで歩きにくくなったりしないのと同じ理由でしょう。

 強いて問題を挙げるなら、ソールが硬いので感触がほとんどないため、ペダルの裏表を目で見て確認しなければいけないことでしょうか。普通の靴なら、足裏に違和感があるからすぐわかるんですけど。

 ダイヤル式はとにかく脱ぎ履きがラクなので、玄関にあるとなにかと履いてしまいます。気が付いたら、安全靴ライドで峠を越えて他県に行ったりしていました。いまや完全に普通の靴として使っています。

「安全靴は普通のスニーカーとして使ってもまったく問題ない」

 というのは先月号に書いたことですが、今回、新たに次の一文を加えなければなりません。

「安全靴は自転車用シューズの代わりにもなる!」

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 というわけで、今月も最後まで読んでいただきありがとうございました。次回は「ツナギ服特集」でお会いしましょう!