まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月は久々の白衣特集をお届けしました。しれっと「久々」と言いましたが、実は2019年の10月以来。1年半くらいになるんですね。最後の白衣特集をしてから、本当にいろいろなことがありました。動画制作のルポを書いたり、小笠原諸島に行ったり、オリジナルマスクを作ったり、温泉旅館に泊まったり、米大統領選挙についての有識者インタビューをしたり……。作業着と関係ねぇー、という声が聞こえてきそうですけど、ついに戻ってきましたよ。正真正銘、押しも押されもせぬ専門職のワークウェア「白衣」の世界に!

●さよならWindows

卒業シーズンというにはかなり遅いですけど、編集長もこの4月、長いあいだ親しんできた世界とお別れしました。Windowsです。たしか実家にあった「95」を触ったのが最初で、以来ずっとWindows搭載のPCを使ってきたので、このOSとはかれこれ25年くらいの付き合いになります。大学では「98」を使って、就職してからは会社支給のPCで「XP」を、それからも「vista」や「7」など、いろいろ使ってきました。この3月まで使っていたのはもちろんWindows10です。

歴代Windowsとの関係と個人的感想をまとめておくと以下の通りです。

Windows 95……社会現象になったOS。実家にあったけれどそんなに触っていない
Windows 98……大学でレポートや論文の作成に使用。創成期のGoogleもこれで見た
Windows ME……使ってない
Windows XP……2004年に就職したとき会社のPCがコレだった。違和感なく10年ほど使用
Windows Vista……就職して買ったデスクトップPCに入ってた。オモチャっぽい見た目に反してけっこう使えた
Windows 7……買ったノートPCに入っていたが、すぐ「XP化」(※後述)したので印象に残っていない
Windows 8……使ってない
Windows 10……いつの間にか「7」からアップデートされてた。違和感ありあり

これほど使い込んできたWindowsをなぜやめたのか。一言で説明するのは難しいですね。ただOSとしてのちょっとした挙動というか、デザインとか操作性とか、いろんなものに何年も不満を抱えていたのは事実です。たとえば、ウィンドウの余計なアニメーションとか、エクスプローラーでファイルを探すときのおせっかいな表示とか。「余計なことしやがるなぁ」とはずっと思っていました。ゲイツさぁ、力を入れるべきはそこじゃないだろう、と。

2000年代半ばくらいから、新しいPCを買ったらまずWindowsの設定をいじって「従来のウィンドウを使用」「パフォーマンス最優先」にするのがお約束でした。これをやると、余計な演出やメニューが表示されなくなって、めちゃくちゃキビキビ動くんです。その代わり、見た目はWindowsになってしまいます。PCはどんどんハイスペックになっていくのに、OSは消費者の求めていない余計な機能を次々と実装し、PCのリソースを拡張されたそばから奪っていく。本当にやってられない、と思っていました。この「XP化」は、有効な方法ではあったものの「なんで高いカネ払ってこんなことしなきゃいけないんだろう?」「イマドキのかっこいい見た目でバシッと動くOSがなんで作れないの?」と、もやもやした気分でここ十数年、過ごしてきました。いや、ハッキリ言って意識の高いwindowsユーザーはみんなそうだったでしょう。WindowsはXP以降どんどん酷くなっていく……。でもこれ以外の選択肢もないし仕方ないか、と。普通の会社で支給されるPCはwindows機ですから。

●愛想が尽きた瞬間

いわば不快感をだましだまし使ってきたわけですけど、近年は本気で腹が立つことも増えてきました。悪名高いWindows10のアップデートです。仕事中にタスクバーからニョキっと出てくるアレといえばわかるでしょうか。「アップデートが必要です。クリックして下さい」とか「×時間後に再起動しますか?」とか、ごちゃごちゃ言ってくる。仕事に集中しているとき、これが出てくるとものすごくイライラします。しかも週に何度も、数時間おきに出てくる。このとき「アップデート実行」を選ぶと、インストールと再起動で10分くらい、運が悪いと30分くらい何もできなくなる。セキュリティ上の問題でアップデートが必要、という都合はわかるけれど、あまりにもひどい。開発者はPC作業をしたことがあるのか疑いたくなります。とくに文章作成というのは「没頭」がカギなので、画面端の時計も非表示にしているくらいです。そのくらい気が散るものを排除している。それなのにOSが仕事の邪魔をするって……、おい、いい加減にしろよ、ゲイツ!

状況が変わったのは、Windows10が勝手にアップデートするようになったときです。たとえば朝、仕事に取り掛かろうとスリープモードにしておいたノートPCを開くと、再起動後のログイン画面になっているわけですね。「ヘンだな?」と思って調べてみると、ユーザーがアップデートを拒否し続けていると、PCを使っていない夜中にアップロードする仕様になったらしい。「うーん、なんか気持ち悪いけど、仕事の邪魔されるよりいいか……」と、また我慢して使っていました。ところが、ある日、たまたま書きかけのテキストファイルを開いたまま寝てしまった。そんなタイミングでこの強制再起動が起きたのです。ライターとして一番許せないのは書いた原稿が消えることで、日頃から保存やバックアップには死ぬほど気を遣っています。一瞬、冷や汗が流れました。もうブチギレです。ゲイツ、貴様やりやがったな!

ファイルは閉じていなかったものの、保存処理はちゃんとしていたので原稿は無事でした。しかし、この事件によりWindowsへの不信感は決定的となりました。こんなOSと付き合っていたらそのうち原稿が消えてしまう……。ノートPCも古くなってきたし、そろそろ決意を固めるべきではないか。例えるなら「熟年離婚」といった感じでしょうか。

●ようこそMac

Windowsをやめるとなると、もちろん第一候補はMacです。ただ、私は昔からMacにはあまりいい印象がありません。なんつーか、Macintoshそのものには何とも思わないんですけど、Macのユーザーが気に食わなかった。Macを使っているというだけで「クリエイターでござい」という風を吹かせてくる輩が、昔はけっこういたのです。彼らの安っぽい自己陶酔というか選民意識が我慢ならなかった。そんな奴らの同類だと思われたくなかった。でも、そういう気持ちはとりあえず捨て、虚心坦懐に向き合おうと梅田のAppleストアに行ってみました。

あれ? 意外とカジュアルだな、というのが率直な感想でした。俺の知ってるAppleじゃない、Macってもっとお高くとまった感じじゃなかったっけ? とまわりの客を見回して納得しました。みんなMac(いわゆるノートPC)ではなく、iPhoneやiPadを見に来ているのです。つまりデザイナーやらフォトグラファーやらではなく、スマホでSNSとかゲームとかしてる普通の人々。iPhoneが登場してスマホ時代になったことで、Appleは「こだわり派ユーザーのための特別なメーカー」から、ただの「ハイスペックで高価格な端末メーカー」に様変わりしていたのです。これなら「宗旨替え」のようなややこしい意識もなく、素直に乗り換えができます。また、こちらもiPhoneが普及したおかげか、ファイル形式などWindowsとの互換性も大幅に改善している。私は迷うことなく2020年モデルのMacBook Airを買って帰りました。

今回の5月号は、新品ホヤホヤのMacで書いています。ひと月くらいは操作に戸惑うかも、との予想に反してすぐ慣れました。やはりお気に入りのマシンと信頼できるOSというのは、執筆上すごくプラスになります。これでもう訳のわからないOSに悩まされることはないと思うと、解放感でいっぱいです。このマシンならもっといいレポートが書けるような気がしています。

   ☆

というわけで、今月も最後までお読みいただきありがとうございました。コロナ禍はまだまだ続きますが、どうか元気でお過ごし下さい。では、次回の『月刊まいど屋』をお楽しみに!