まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月は少し趣向を変えて「空調服座談会」をお送りしました。普段とはだいぶ雰囲気が違いますが楽しんでいただけたでしょうか? 2022年の新作ファン付きウェアの性能については、来月号のメーカー訪問記でお伝えする予定です。もうしばらくお待ち下さい。

●ゆめしま海道へ

じつは5月の前半、取材のついでにサイクリングをしてきました。コースはあの「ゆめしま海道」です! って知らないですよね。これは尾道と今治を結ぶ超有名なサイクリングロード「しまなみ海道」の脇道ルートで、生口島(広島県尾道市)から船で東隣の岩城島(愛媛県上島町)に行って、岩城島-生名島-佐島-弓削島と東向きに橋を渡っていくコース。今年3月、岩城島-生名島の橋が開通したばかりの出来たてサイクリングロードなのです。

しまなみ海道は、尾道を起点にした場合、向島-因島-生口島-大三島-伯方島-大島とタテ(南北方向)に並んだ島を走っていくのに対して、ゆめしま海道はヨコ(東西方向)。もっともこのあたりの島はほとんど自転車のまま乗れるフェリーでつながっているので「行き止まり」の心配は無用です。因島-生口島間に組み込んだりして、約70kmのしまなみ海道を“ロングコース化”するのにも最適なルートと言えるでしょう。

今回は「ゆめしま海道」がメインなので、しまなみ海道はできるだけカットすることにしました。まず朝に尾道駅前の船着き場から小型船で生口島に渡って、瀬戸田港の近くでレンタサイクルを借ります。これでいまいち旅情に欠ける向島・因島をカットし、いきなり風光明媚な生口島の外周ルートに入ることができました。

生口島のド平坦な海沿いルートを半周して、洲江港から船に乗り込みます。そして10分ほどで岩城島に到着。さあ、ここからゆめしま海道の始まりです!

●スケール感の違い

まずは岩城島の海沿いを反時計回りに走って、岩城大橋に向かいます。この島の真ん中は積善山といってすばらしい展望台があると聞いているものの、今回の目的はサイクリングなのでカット。瀬戸内の穏やかな海を眺めながら軽く流して、スーパーがあるメインストリートを抜け、坂をぐいぐい登っていくと、右手に岩城大橋が現れました。

はやい、と思いました。いや自転車のスピードじゃなくて、島を半周する時間が。下船して走り出してから30分もしないうちにもう岩城島の出口です。しまなみ海道の「ひとつの島を通過する時間感覚」とだいぶ違う。うーん、こんなにサクッとひとつ目の島を終わらせてしまっていいのだろうか……。と何気なく地図をチェックしていて「からくり」に気づきました。

小さいのです。ぱっと見ると、4島が並んだゆめしま海道はそれなりの規模に見えるけれど、ひとつひとつの島はしまなみ海道を構成する6つの島よりはるかに小さい。4つ合わせても生口島と同じくらいの面積しかありません。つまり4島を渡っていったとしても、それほど距離はないのです。

しかし、狭いエリアだからといってつまらないわけではない。

まず人が少ないのがいいところ。生口島ではあちこちにサイクリストがいましたが、岩城島に渡るとほぼ見なくなりました。雰囲気もかなりのんびりしていて、観光地というより漁村といった感じです。

●弓削島ヒルクライム?

さらに自転車の目線で語るなら、ゆめしま海道の魅力は道路の起伏です。平坦はごく短い区間しかなくて、ほとんど坂。それも細かいアップダウンを延々と繰り返す。編集長はしまなみ海道ならママチャリでも完走できる自信がありますが、ゆめしま海道の場合、そんなこと想像したくもありません。

なかでもキツいのは橋にアプローチしていく登りです。しまなみ海道では、橋に近づくと自転車用に作られた傾斜のゆるい坂をずーっと登って徐々に標高を上げていくのに対して、「ゆめしま」は直登。岩城大橋の場合、橋の入り口からスパーンと続く直線の坂をクルマと一緒に登っていく。そして橋の真ん中で下りに入ると、こちらも“直滑降”です。自動車用の見通しのいい道路なので、ブレーキを握ることもありません。最高で時速50kmくらいになります。

下りのスピードに乗ったまま生名島に入った、と思ったらあっという間に島を貫通して、佐島に続く橋です。そのまま渡って、また下りながら佐島に入ると目の前に弓削島に続く弓削大橋が。このあたり「スピードを殺したくない」という意識を捨てないと、島の周回ルートに入るのは難しい。編集長は誘惑に負けて、そのまま直線的に弓削島に入ってしまいました。

サクサク進みすぎたので、弓削島では「ゆめしま海道」でもっともハードなコースという弓削島北東の海沿いルートで大回りしてみることにしました。これも確かに厳しい坂ではあるものの、距離が短いのであっさりクリアしてしまいました。ヒルクライムと呼ぶにはラクすぎますね(サイクリストはマゾなんです)。

その後は弓削島から船で因島に渡り、また生口島の海沿いを回って、瀬戸田港で自転車を返却。走行距離は約60kmでした。もうちょっと走りたかった気はするけれど、ネット上にも情報がほとんどない秘境サイクリングロード「ゆめしま海道」の下見としては上出来でしょう。次回はひとつひとつの島を丁寧にまわってみたいと思います。

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というわけで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!