【関東鳶】沈黙するカントビを批判するimage_maidoya3
驚いた、というのが率直な感想。この春、関東鳶の新商品が出なかった。春には桜が咲くように、夏には甲子園が始まるように、5月になったら当然届くべき関東鳶の新商品がない。カントビ始まって以来の緊急事態が確かに起きている。
  あるべきものがないまま春夏シーズンを迎えた全国のカントビファンは、おそらく拍子抜けし、あるいは納得のいかぬ思いを抱えているだろう。ケイタイを忘れたまま、家を出てしまったような、かなりの違和感を覚えているだろう。月刊まいど屋編集部も、そしてお客さまから直接お問い合わせを受けるまいど屋サポートセンターのスタッフも、まったく同じ思いを日々募らせる。
  綿花の高騰をはじめとする原料高や新たな素材の入手難など、いろいろ事情はあったと聞く。だが、言い訳は聞きたくない。沈黙したのは一時の緊急措置。これまで通り、誰もがあっと息をのむ新たなプランを隠し持っている。そんな前向きで意欲的な展望を聞かせてほしい。
  実際、今、カントビに何が起きているのか、この目で確かめなければまいど屋も前に進めない。期待半分。不安半分。大阪で開催された商品展示会に企画部課長の林さんを訪ね、お話を伺ってきた。
 

関東鳶
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展示商談会は今年も盛況。この日も会場内は多くのショップ関係者たちで賑わっていた。
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新商品のディスプレイがなく、ちょっと寂しい関東鳶の展示サンプル
■寂しすぎる2011春夏。あのカントビ魂はどこへ?!
  大阪の展示会場は盛況だった。新作を1つ1つ手に取って吟味するバイヤー、カタログを広げながら商談を進める担当者、そして、商談を終えて和やかに談笑するショップ関係者たち。そんな光景があちこちで見られる。
  だが、肝心の商品は見覚えのあるモデルばかりが並んでいる。NEWと記されたサンプルを見つけて、一瞬安堵しても、すぐに既存モデルの新色であることに気付く。やはり新商品はどこにもない。かすかな望みはぷっつりと切れた。これは担当者に問いただすしかない。カントビファンを代表して、やりきれない気持ちと苦情をぶつけるしかない。
  大勢のカントビファンが新商品を待っていると思うんですが、どうしたんです?挨拶もそこそこに、担当の林課長を問い詰める。はぁ、いろいろと事情がありまして…。事情とおっしゃいますと?まあ、そこは…。なんとも歯切れが悪い。ワケあって答えられないのか、それとも本当に知らないのか。後者だとしたら、受けた質問は彼自身が知りたいことそのものであったろう。そんなやり取りをしばらく続けた後、林課長は申し訳なさそうにこうフォローする。「ですが、新しさという点では、新商品に負けないものがあります。今回のカタログには自信をもってお届けできる安全靴が新たに加わりました。鳶さんに人気の「黒豹シリーズ」がカントビファミリーとして正式にリリースされたんです」。確かに黒豹はカントビに加わる前から、長い間、先行して販売されていたから、実績もかなりある。認知度も高く、評判もいい。カントビファンには朗報だろう。こちらが少し気を許したと思ったか、林さんはさらにこう続ける。「7440シリーズの新色もいいですよ。ネイビーやグレーなどの基本色が中心ですが、これまでよりもツヤがあり、輪郭のある上品な雰囲気に仕上がりました」。少し解説を付け加えると、7440シリーズはそれぞれのカラーに対し個性的な漢字一文字が用意され、商品にも縫いつけられる。ちなみに、新色のネイビーは「龍」、グレーは「虎」、アイボリーは「愛」、チャコールは「舞」、ブラウンは「輝」。長年のファンにとっては、コレクションの楽しみもあるだろう。
  寂しく思えた今年のカントビコレクションにも、多少の救いがあることが分かってきた。だが、やはり、本当の意味での新モデルがない虚脱感はいかんとも埋めがたい。素材にこだわり、あっと驚く商品開発でファンを魅了してきた、あのカントビの気概はどこへ行ったのか。
 
  ■沈黙の陰に秘策あり!水面下で動く関東鳶の新戦略とは?
  いくら質問しても答えてくれない関東鳶に代わって、彼らが沈黙している理由をここで考えてみよう。冒頭に挙げた原材料となる綿花の高騰。中国で工場労働者の確保が難しくなっていること。次の一手に向けて新たな工場を探しているのか。インタビューの間、のらりくらりとかわされるうちに、逆の意味で疑いが出てくる。「ここまで沈黙を続けているのは、水面下であっと驚く企画を着々と推し進めているからに違いない」と。
  何をたくらんでいるのか。あくまで推測の域を出ないが、おそらく、新しい素材、新しい生地を使った画期的な新商品を立ち上げようとしているのだろう。新商品が準備できなかったのは、関東鳶ブランドを語るにふさわしい、ファンが納得する素材に出合えなかった、いや、出合えたものの間に合わなかったからではないのか。驚きのある新商品でなければ、出さないほうがいい。それが、商品開発力を強みとする、プライドある彼らが出した今期の答えなのだろう。
  今回の特集で、まいど屋は関東鳶を批判する。全ての事情を察した上で、それでも敢えて苦言を呈することにする。もう肩すかしはゴメンだ。我々を悲しませるのは今回限りにしてほしい。ファンは待っている。果たして沈黙を破るのは、いつなのか?そして、それはどんなカタチで?我々は答えを求めている。
  そして、カントビファンの皆さんにもお願いしたい。今回だけはカントビを許してやってほしい。物足りないながらも、これまでリリースされたいぶし銀の定番アイテムは依然として絶好調だ。以下に多くのファンから支持を集めるラインナップを並べてみた。その実力のほどを改めて感じてみてほしい。
 
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企画部課長の林さん。気さくに話をしてくれる好人物だが、関東鳶の新商品に関しては鉄壁のガード
 

    

◆7440シリーズ

耐久性で定評のある、ポリエステル・レーヨン混のサージ織り。そのザックリとした肌触り、存在感のある独特の風合いは、着こなすほどに味わいを増す。風格ある正統派スタイル。豊富なカラーバリエの中からチョイスして、自分スタイルの粋な着こなしを楽しんでほしい。