【タジマ】腰まわり数センチの攻防戦image_maidoya3
ずっと前、タジマを取材したことがある。本社に行き、タジマの特徴について話を聞いたのだが、何か漠然としすぎて消化不良だったのを覚えている。まだまいど屋もオープンして2年目。力不足の編集部が咀嚼するには、タジマの商品ラインナップは幅広すぎた。定番のコンベから始まって刃物や電ドルのソケット、測量用のレーザー機器。ノコに研削ツールに切削工具。その他数え上げたらキリがない。しかも、どのジャンルだって中途半端でなく、優に普通のメーカーのフルラインナップの分量がある。実力不足を思い知らされ、安易に特集を企画した自分を恥じた。
  あれ以来、編集部ではあえてタジマの特集を避けてきた。どんなに品質が確かで人気があっても、どれほど全国のファンの皆さんから要望が寄せられても、まだその器じゃないと頑なに取材を自制してきた。爪を隠してまずは実力を蓄えろ。昔、鄧小平が言ったように、慎重に再チャレンジの機会を探ってきた。
  今度の取材はあの時のリベンジ。歳を重ねたまいど屋は、工具界の巨人、タジマに対峙できるほど成長したのか。誰もが知る有名ブランドを、自分の言葉で説明しきるだけの覚悟が備わったのか。悲壮な決意を胸に、タジマ本社の門をくぐった。
 

タジマ
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装着スペース10cmのTR150シリーズ
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縦型リール式安全帯TR150L2(左)と省スペース安全帯MR110L2(右)
「前回の取材は、確か2009年の夏。その頃、ちょうど安全帯を開発していたところで、市場に投入したのは、その後ほどなくして。せっかくの新商品でしたがタイミングが悪く、まいど屋さんでご紹介いただくチャンスを逃してしまった。そういう意味で再チャレンジは、お互いさまです(笑)」。そう話すのは、タジマ(株式会社TJMデザイン)東京営業所の加藤文彦所長。前回の取材内容を事前に調べていただいたようで、いきなりのこの発言。いやはや、ありがたい。なお、今回の取材では、営業一筋という加藤所長のほか、開発本部の小池洋光さんにも同席いただいている。
  それでは、お互いさまということで遠慮なく!そう意気込んだものの、タジマの商品群は幅広い。いったい、どこから切り込んでいったらよいものか?考えあぐねていると、加藤所長から「その時、開発していたのが横型リール式安全帯『Gリール』です」と、うれしい助け舟。間髪入れず、開発の小池さんが話を続けてくれた。「『Gリール』は、他社商品に比べて斬新なデザインでインパクトがありましたが、ショックアブソーバ(緩衝帯)を外付けにしたので、その分、装着スペースを取ってしまい、お客さまの反応がイマイチ良くなかった。そこで、今一度原点に戻って開発したのが、この縦型リール式『TR150』です」。
  職人さんは腰まわりに工具差しやコンベックスなど諸々のツールを装着することが多い。そのため、安全帯で場所を取ってしまうとツールスペースが確保できなくなる。『TR150』シリーズでは、この問題をクリアすべく、ショックアブソーバをリールケースに内蔵。これにより装着スペースをわずか10cmに抑えた。「『TR150』を出したことで、ようやく安全帯市場の土俵に上ることができました。タジマにはコンベックスで培ったデザイン力があります。安全規格に則った上で、デザインを被せることができたんです」。このほかにも省スペース安全帯には『MR110』シリーズがあり、11cmという装着スペースを、ショックアブソーバをフックの根元に付けることで実現させている。
  1909年に創業し、直尺や巻尺などで実績を築いてきたタジマは、1975年に建築工具の分野に進出。そんな中で腰まわり用品も10年以上前から開発してきた。タジマが安全帯にこだわる理由を、小池さんはこう話す。「腰まわり用品の開発にあたってリサーチしたところ、安全帯が腰まわりツールの装着アイテム数や配置を左右することがわかったんです。これはもう、腰まわりのシステムから考えなければダメだ!って。現場の職人さんからも、なぜ、安全帯を作らないの?作ってよ!との声がありまして・・・。良い安全帯があれば腰まわりのコーディネートが良くなります。そしてその分、作業性が向上する。なにせ、腰まわりの装備はトータルで10kgにも及びますから」。
  小池さんをはじめタジマの開発担当者は、とにかく現場に頻繁に足を運んで、いろいろな話を聞いてくる。「コイルコードが絡んで困る」という声を聞けば、絡みにくく、かつ省スペースの『スマートザイル』(高所作業用工具落下防止紐)を開発。「安全帯の胴ベルトは黒ばかりで味気ない」の声を聞けば、ドット入り胴ベルト(型番:TA-WM125)を開発し、赤、青、紫、黄、白の5色を揃えた。コンベの分野でも、テープを厚くして立ちを良くした『剛厚セフコンベ』、足場のパイプにくっつければ両手が自由に使える『セフG3ゴールドダブルマグ』など、現場の声から生まれたヒット商品は多数にのぼる。「ワークでいえば、安全帯の中の総合ツールメーカーでありたい」と話す小池さん。自分が開発した商品が店頭に並ぶ喜び、醍醐味を感じているという。
  話は変わるが、タジマといえば、一面黄色で彩られた売り場を思い浮かべる方も多いはず。最後に加藤所長から、タジマが大切にしている「魅せる売り場づくり」についてこんな話が聞けた。「メーカーとして品質第一はもちろんですが、お客さまに、いかにウチの商品に気づいてもらえるか?ということも大事です。パッと見て商品や特徴がわかるパッケージ。そういった商品を引き立てるバッグボードPOP。点のPRから面のPRですね。売り場に点で商品を入れても、すぐ姿を消してしまう可能性がありますが、面で売っていけば、これを防げます。まいど屋さんは通販ですが、お店で目にして、まいど屋さんで買うということもあるので、影響は少なからずあると思いますよ」。
  2~3ヶ月に1回は新商品を出し、トップメーカーを目指して商品の裾野を広げていこうとしているタジマ。今回レポートでは紹介しきれなかった商品など、以下に詳しく紹介しておくので、総合建築工具メーカーの実力をぜひチェックいただきたい。
 
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バッグボードPOPを手にする加藤所長(左)と小池さん(右)
 

    

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