【大川被服】ワークウェアに世界トップブランドをimage_maidoya3
山本寛斎。言わずと知れた世界のトップデザイナー。活動範囲はファッションからイベントプロデュースまで幅広い。既成概念を軽々と越えていく個性で世界を魅了してきた。そんな彼がワークウェアを手掛けるとどうなるか。ややもすれば保守的で、無難を由とし、変化を好まない作業服を。面白い試みだと思うひとは多いだろう。だが破壊的なパワーで、時に壊し屋のイメージも付きまとう彼のこと。とんでもない方向に突き進んでいってしまい、振り返ればひとりのユーザーもついてきていなかった、なんて恐れは十分ある。吉と出るか、凶と出るか。だが、やってみる価値は大いにある。
  まったく新しいタイプのワークウェアを作りたい。そんな強い決意で寛斎と手を組んだ勇気あるメーカーが今回紹介する大川被服。今から30年以上も前の話だそうだ。試行錯誤と紆余曲折の末、今では誰もが知るブランドとなった。寛斎ユニフォーム、またはKansaiユニフォームと言えば、皆さんもうおわかりだろう。読者の皆さんの批判を承知で言えば、これまでまいど屋はこの有名な寛斎ブランドをまったく扱ってこなかった。理由は某量販店、いやハッキリと言ってしまえば、ワークマンが大々的にこの寛斎ユニフォームをプロモーションしてきたから。全国のまいどファンの方には悪いと思いながらも、見て見ぬフリをして取り扱いを避けてきた。今回のインタビューは読者の皆さんに対する、まいど屋精一杯の罪滅ぼし。今後、心を入れ替えて寛斎を販売していくので、どうか許してほしい。
 

大川被服
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ポケットのフラップやカフスのデザインも寛斎流
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美しい二重ステッチはKANSAIのスタンダード
「山本寛斎と提携したのは1980年のこと。先々代(創業者)が“他と同じことをやっていてはダメ”と、将来有望なデザイナーとして寛斎先生に着目したのがきっかけです。当時、寛斎先生は海外で作品を発表しはじめた頃で、『KANSAI』 というと、関東?関西?って言われるくらい。デザイナーとしては一流でしたが、日本での知名度はまだまだでした」。
  そう話すのは、大川被服(株)常務取締役の大川恭弘(やすひろ)氏。「当時、私はまだ子どもでしたから詳しく知りませんが、KANSAIウェアは当初5年間は芳しくなかったようです。その頃の作業服といえば、紺、グレー、ベージュの3色ぐらい。そんな中で赤や黄色を配色したKANSAIの作業服は、100m先から見ても『〇○会社』と分からせたいところは別として、ほとんど相手にされなかったようです」。
  それが1980年代後半に入るとブレイク。そのままバブルを迎えることとなる。「市場が近づいたのか、寛斎先生が丸くなったのか・・・(笑)。バブルの頃は、キレイでカラフルなものを建設現場で着る傾向にあったので、“一番高いものをくれ!”って感じで売れていったそうです」。
  KANSAIウェアは品質が高く、デザインもいい。価格も一般的な作業服に比べて高い。それが売れたのは、光沢のあるポリエステルが寛斎デザインとマッチしたからだと大川常務は分析する。「朝礼などで50人、100人と揃った時に、綿の作業服だと色にバラツキが出るんです。着用回数、洗濯の仕方によって色落ちの度合いが違うので。これに対し、KANSAIウェアはクラレの生地でポリエステルがメイン。何回洗っても色の変化はほとんどありません」。
 
  ここで、デザイナー山本寛斎のこだわりをいくつか紹介しておこう。
  ≪寛斎のこだわり(1) ステッチ≫
  シングルステッチでも強度に何ら問題はないが、二重ステッチがルール。胸ポケットのフラップなどでは、直線のシングルステッチなら縫うのに2秒とかからないが、KANSAIデザインでは曲線でステッチ2本。ひと手間もふた手間もかかる。
 
  ≪寛斎のこだわり(2) パターン≫
  通常、1パターンでよいところを、品番によってスラックスのパターン(型紙)を変えている。エンジニア向けならゆとりがあって動きやすいパターン、営業向けなら美しく見えるパターンと、職種に合った最適な型紙を使用。
 
  ≪寛斎のこだわり(3) スラックスの仕様≫
  品番にもよるが、ウエスト部の内側は、礼服のズボンのようにしっかりした作り。シャツが外に出にくくするための滑り止めも付ける。
 
  「こういうこだわりがリピーターを生むのだと思います。ありがたいことに“どうしてもコレを着続けたい”“直してでも着たい”と、修理を依頼してくるユーザーさんもいらっしゃいます。『さんまのスーパーからくりテレビ』という番組をご存知ですか?その中に、田舎の両親が都会に出た息子・娘にビデオでメッセージを伝えるコーナーがあるのですが、そこに登場する農家や酪農家の方たちの多くがKANSAIを着ているんです。つまり、TVに出るための、よそいきの作業服、ハレの作業服として選んでいただいている。そういう扱いをされていると思うと、うれしいですね」。
  2~3年に1回のペースで新作を出しているというKANSAI。ここで大川常務に代表的な商品を紹介してもらうことにする。まずは、昨年デビューした最新作『K3091』から。「カジュアル系が流行していて“40代以上向けの落ち着いたウェアがない”という声を耳にして出しました。クラレの中でもハイグレードな素材を使用し、ボタンは艶消しの真鍮製。社内ではブルゾン、社外に出る時は背広。そんな方をイメージして作ったシックなウェアです」。
  続いて、ロングセラーの人気商品『K90202』。「撥水、撥油、防汚加工をした汚れに強い素材を、独特の寛斎カラーで展開しています。会社も従業員に洗濯や手入れの仕方まで指導できませんからね。良妻がいる人、ズボラな独身の人、誰もが90点レベルでクリーンに着られるウェアです」。
  そしてもう一つ付け加えておきたいのは、とーってもしなやかで風合いがいいポロシャツ、『K5031』。「生地が良くて、普通のポロシャツとは肌触りが全く違う。寛斎先生がポロを手がけると、ここまでに仕上がるんです。ウチが“この素材でポロを作りたい”といっても認めてもらえない。普通のものでは寛斎先生の認可が下りないんです」。
  最後になるが、大川被服はKANSAI以外にも、DAIRIKIブランドで独創的かつ機能的なウェアを多数出している。たとえば、体操服のジャージにヒントを得て作った、毎日着てもくたびれないウェア『FE21002』 や、着心地バツグンの元祖立体裁断『MAX500』など。「できるだけ市場にないものを世に出していきたいと思っています。『DAIRIKI』は漢字で“大力”。そこには大勢の人の力になりたいという想いが込められているんです」。
  以上、駆け足で寛斎ブランドを擁する大川被服の概要をお伝えしてきた。彼らがどれだけ独創的な取り組みをしているか、読者の皆さんに少しは伝わっただろうか。まいど屋としても、この他にご紹介したい商品がまだまだある。以下に詳細を載せておくのでご覧いただければと思う。
 
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上質な生地を使用したポロシャツ『K5031』
 

    

どんな動きも思いのまま!全方位にストレッチするニット素材で、ワークウェアの常識を覆す21002シリーズ

軽くて動きやすい!タフで扱いやすい!そんな体操服(ジャージ)をワークに取り入れた、大川常務イチ押しのシリーズ。一見すると布帛にしか見えないスラックスは、きちんと感もあって飲食店などのサービス業にも人気。素材はポリエステル100%のトリコット(帯電防止糸混入)。カラーはブルゾン5色、スラックス3色。


汚れが付きにくく、落ちやすい!引き裂きにも強く、毎日洗濯してもへこたれない!ガテンな現場でガンガン使える、最強スペックの79902シリーズ

その強さ、汚れの付きにくさは、引き裂き実験、撥水実験で実証済み。しかも、優れた形態安定性でお手入れもラクラク。生地はポリエステル75%、綿25%のパワーツイル(東レ製)。スラックスは圧迫感や窮屈感を軽減する脇ゴム入り。