第2章 スタッフそれぞれの想いimage_maidoya3
第1章を読み終えた読者の皆さんには悪いが、ここで少々時計の針を巻き戻してみたい。A氏の暴言事件があってからほどなくして、まいど屋に粛清の嵐が吹き荒れていた頃、新サイトの担当チームの人選が大きな問題になっていた。既存のスタッフは全員、志は高いが、具体的な方法論はまったく持ち合わせていない。センスがよくてファッショナブルな画面構成を。これまでにない斬新なプレゼンテーションを。そんな抽象的すぎる意見が出てくるばかりで、どんな絵を描こうとしているのか、どう動いたらいいのか、話を前に進めようとすると、逆に視界がぼやけてくる。とにかくスタートしてしまえば何とかなる。これまでまいど屋を動かしてきたそんな楽観論も、今回はまったく役に立たないことを思い知る。自分たちは海図を持たない船で新大陸を探す旅に出てしまったのかも知れない。桟橋を離れ、見慣れた浜辺が遠ざかっていくと、もう船がどこに向かっているのかわからなくなる。どっちの方角に進めばいいのか。そしてそこに約束の地はあるのか。まいど屋的なガテンの世界にどっぷりと浸かった人間は、よくも悪くもまいど屋を効率的に運営するのに最適なセンスや考え方が深く身にしみついている。新しい海へ漕ぎだすには、これまでとは違う知識と経験を積んだ船長とクルーが必要だ。最後は全員が納得し、そう結論を出した。船は浜に戻り、そして新しい人材探しが始まった。
  リクルート活動については詳しく話すとあまりに生々しすぎるし、プライバシーの問題もあるのでここでは割愛したい。時間をかけて手を尽くした結果、理想的なスタッフが集まったとだけ書いておく。それが去年の春ごろのこと。月刊まいど屋6月号のまいど通信でそれとなく仄めかしたので覚えている方もおられるかと思う。アパレル、広告、デザインと三者三様のバックグラウンドを持った強力チーム、第1章のインタビューに答えていた3人である。
  既存のスタッフでの出店計画がとん挫した経緯もあり、プロジェクトは完全に新人の彼女たち3人だけに任せられた。誰も一切口を挟まず、ただ黙って3人の仕事ぶりを見守った。やがてサイトのコンセプトが明確になり、漠然としていた画面のイメージに輪郭が付き始めた。やるべき作業が少しずつ見えてきた。約束の地はそこにあると信じるしかないんです。それがそこにあると強く思えば、それはきっとそこにある。まいど屋がスタートしたときだって、きっとそうだったんじゃないんですか?前だけを見て突き進む彼女たちを不安そうに見守る古参のスタッフに、チームリーダーの落合さんはあるときそう言った。そう、我々は信じるしかない。新しく生まれた事務コレ!が、皆さんが待ち焦がれていた理想のお店であることを。
 

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事務コレ!企画女子3人衆(左から金井、落合、安部
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ボードを使って校正案を練る3人
第2章では、『事務コレ!』をより深く知っていただくために、また3人の“人となり”を感じていただくために、余計な編集はせずにできるだけ彼女たちの生の声をお伝えしようと思う。オープンまで1ヶ月を切った時点の、ありのままの彼女たちの姿を記しておこう。
 
  編集部:まずは、自己紹介を兼ねて担当業務を教えてください。
 
  落合:“ひなまつりオープンを死守したい~~!”と、ひたすら走り続けているチームリーダーの落合です。肩書はプロジェクトマネージャー。担当は、システムのチェック、WEBデザインとテキストの全体管理、フェイスブック、その他諸々。テキストを作ったと思ったら、サイトパーツのデザインやら修正やら・・・。小回りのきく広告代理店にいたので、ちょっとしたことなら自分でやっちゃう。もう、いろんな部分を担当しすぎて頭の切り替えがタイヘンです(笑)。
  金井:ファッションコーディネーター、金井です。主な業務は、メーカーコンタクトと商品のプレゼンテーションについて。つまり、私たちが最も見せていきたい部分の落とし込みですね。各メーカーのセットアップを拾い上げ、シリーズ化してリストにして、データ入力の前段階までを担当。それと、特集ページのための情報収集も私の仕事です。
  安部:デザイナーの安部です。これまで主に空間デザインを手がけてきたので、新たにWEBデザインに挑戦!という気持ちでやっています。主な業務は、画像を含めた商品データの登録と管理。特集記事も皆さんと一緒に担当しています。
 
  編集部:新サイトへの想いや、苦労した点などありましたら・・・
 
  落合:まいど屋というベースのサイトがあるので、それを見やすく絵にしていくことを考えました。2013年4月にスタートして、コンセプトやサイト仕様を考え、夏には基礎づくり。秋からは商材組立、基礎データの入力、システムチェック・・・。思えば、この頃が一番つらい時期でしたね、思うように進まず、開発チームとの攻防もあったりして。でも、今はすこぶる順調。オープンに向けて、画面・パーツデザイン、画像加工、データ入力をコツコツとこなしていくだけです。
  金井:メーカーによって表現や表示が様々なので、サイトではどう表すか、そのルール作りに苦労しました。シリーズ名も同様で、独自の名称を付けているメーカーもあれば、生地の名前でシリーズ化しているメーカーもあります。それらを横並びにした場合に、どう統一させるか、どうわかりやすく伝えていくか。これは今後も苦労する点ですね。
  安部:私はサイトを一から立ち上げることにすごく興味があって、絶好のチャンスとばかりにここに飛び込みました。これまでで最もタイヘンと思ったのは画像集め。メーカーごとに整理して、使用可、不可をふるいにかけ、単体、モデル画像・・・と、サイトに載せるまでいろいろあるんです。モデルの版権がメーカーごとに違うので確認したり、モデル画像とカタログを突き合わせて、どの商品を着用しているのか一つひとつ調べたり。これでベースができてしまえば、新商品の追加、廃番管理、モデルの版権の期限チェックだけになるので多少ラクになるのかな・・・と。そうはいっても、取扱メーカーを順次追加していくので、当分は忙しい毎日が続きそうです。
  金井:私はこのサイトに“お店に行ってショッピングをしている感覚”を出したいと思いました。女性が洋服を買う時、何と何を合わせるのか、トータルコーディネートが見えてこないと買いづらいですよね。ですから『事務コレ!』では、セットアップにコーディネートあり、オススメ商品ありで、イメージしやすく、選びやすく。細部のデザインもズーム機能でしっかり見えますよ!合わせる小物もこれとこれが揃っていますよ!って。そういう目線を大切にして、これからもっともっとブラッシュアップしていきたいですね。
 
  編集部:シリーズページや特集など、オリジナル企画にも力を入れているようですが・・・
 
  落合:企画ページは『事務コレ!』らしさの見せどころなので、3人で手分けして取り組んでいます。特集は、基本的には1ヶ月に1つ以上を予定。オープン時(1回目)は、ジョアの“おもてなし”、営業職向けのパンツ特集、2013-2014秋冬展示会レポート3社分の計5本をぶつけます。また、2月にはメーカーの新作展示会があるので、こちらもオープン後に随時アップしていきます。
  金井:シリーズページはメーカーのデータ提供をもとに独自のフォーマットで組んでいます。各シリーズのトップページでは、雰囲気のあるモデル画像を大きく打ち出してシリーズの特徴を紹介し、下段には機能・素材の特徴も。各シリーズともにカタログ感覚でご覧いただけますよ。
  安部:特集記事を起こす目的もあって、展示会へは3人で行っています。3人で情報を共有し、金井さんは画像、私はデータというように作業を分担して、ね。2月はサイトオープンのラストスパートに加え、各メーカーの展示会があり、春夏新商品も出てきて大忙し。というか、毎日がバタバタの大騒ぎです(笑)。
 
  インタビューも終わりに近づくと、初めに感じたような気遅れは徐々に薄らぎ、事務コレチームの雰囲気に馴染んできた。彼女たちのやる気と情熱がこちらにも乗り移り、心に描いた理想に向かっていく充実感を久しぶりに思い出した気がした。かつてまいど屋がオープンするときに味わったような、何物にも代えがたいチームの一体感を。3人が夢中になって作り上げた事務コレ!は、3月1日、ひな祭りまで2日を残してグランドオープンする。オフィスファッションに興味のある女子の皆さんはもちろん、「オレは男だ、関係ない!」という殿方も、彼女たちへの励ましの意をこめて、ぜひぜひサイトを覗いてやってほしいです。
 
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