【トキワ】絞りに絞ったメニューは逸品揃いimage_maidoya3
決して幅広いラインナップを誇る大きなメーカーではない。いや、率直に言ってしまうとまいど屋にエントリーする他のブランドと比べてしまうのは気が引けるほど、小ぢんまりとした規模の小さい会社である。新商品だってほとんど出さない。だが、それがどうしたというのだ?考えに考え抜かれ、丹精を込めてつくられたそれぞれのウェアはどれもがある種独特の存在感を放っている。そして明確に定義された役割を、期待通りにキッチリと果してくれる。派手にアピールすることがない分、かえって安心できる。寡黙だが、芯の通った幼なじみの親友を無条件で信頼してしまうように。
  数が多ければ、新商品を次々出せばいいってもんじゃないんだよなと改めて思う。それが証拠に、長年使い続けてそのよさをわかっているお客さまからは、かなりの確率でリピートのオーダーが入る。数年前に買った、あのレインウェア。そろそろダメになったからまた新しいのよろしく。承知しました。本日発送します。では、また数年後にご連絡ください。そんなやり取りを通して、ファンはまたまいど屋に戻ってくる。決して大量にではないが、割と確実に。
  メーカーの名はトキワという。雨合羽一筋85年。実用性が高く、良質な商品を静かに、こつこつと根気よく、ずっとつくり続けてきた。先ほど述べたように新商品が全くないため、企画段階では今回の特集に含めようかどうしようかとかなり迷ったが、最後は腹をくくって取材のアポを取った。目新しい話が饒舌に語られることは期待できないにせよ、日本全国にはやはり確実に、トキワを求めているお客さまがいるのだから。そしておそらく多分、今まで全くトキワを知らなかった読者の皆さんの中にも、レポートによってその魅力に気付いてくれるひと達が間違いなくいるはずなのだから。
 

トキワ
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雨天の自転車走行はお任せ!『雨先案内人サイクルコート』(品番:3090)
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顔の向きに合わせてフードが左右にスライドするローリングフード
「実は20年ほど前までは多品種展開をしていて、自社商品の中でも類似商品がたくさんありました。同様のデザインで素材違いとかね。でも、ユーザーさんにはその違いがわからない。そこで思いきってアイテムを絞ったところ、非常にわかりやすくなった。以来、新商品をぼちぼち出しながら、既存アイテムに改良を重ねてより良くしていくという方向でやっています」。そう話すのは、営業部の萩原さん。カッパは通年商品であり、アパレルと違って流行にあまり左右されないので、こうしたやり方でも充分成り立つのだそうだ。「自分たちが絶対に自信があるものだけをつくる。こういう時にはこれですよって明確に説明できるものだけを使ってもらう。同時に、ウェアだけではどうにもならない問題は、別のアプローチで解決する。顔が濡れる、手が濡れる、足が濡れる、みたいなユーザーさんの不満は、ウェアとは別にレイングッズを充実させることで対応しています」。
  うん、なかなか潔いです。まるでラーメンとチャーシューメンしかメニューにない、頑固なラーメン屋さんみたい。そのかわり、出てくる一杯はメチャうまいんだけどね。で、そんなトキワでの今回の取材、メインで紹介してもらったのは、“雨の日に自転車に乗るひとのためのアイテム”。作業用とは離れてしまうが、彼らがどんな想いでモノづくりをしているのか、一番わかりやすくお伝えできるということなので、とりあえず話を聞いてみよう。「平成21年7月に道路交通法が改正され、都内では全国に先駆けて自転車の傘さし運転が禁止になりました。違反すると5万円以下の罰金(東京都道路交通規則第8条)です。そこで、雨の日に自転車に乗るひとのために我々ができることは何か?を考え、リサーチすることにしました」。
  まず手始めは“雨の日にカッパを着て自転車に乗るひと”へのアンケートだ。ところが、ここで早くも壁にぶつかる。都内を中心に、レインウェア売り場に来るお客さん、トキワ社員の友人・知人、そのまた友人・知人と手当たり次第声をかけるが、なかなか対象者が見つからないのだ。結局、300人ほどの声を集めるのに4年もかかったという。かなり息の長い、根気のいるプロジェクトである。「苦労しましたが、やっぱり自分たちだけの思い込みで開発を進めなくてよかったと思っています。アンケートを見ると、皆さん、不満だらけなんですね。一番多かったのは“カッパはダサい”という声。それと“首から上の部分を何とかしてくれ!”という声。フードをかぶると左右が見えない、風でフードが外れる、顔が濡れる・・・。ほかにも、ムレる、裾がめくれて濡れる、靴に水が入って気持ちが悪い、夜間見えにくいので怖い、などなどなど。そうした声を汲み取ってカタチにしたのが、『雨先案内人サイクルコート』(品番:3190)です」。
  このコート、小雨の時やちょっとした外出の際はレインコートとして、大雨の時や自転車に乗る時は足先までカバーを付けて完全武装と、状況に合わせて対応できるのがミソ。本体は、ナイロンに透湿ウレタンをコーティングした透湿防水素材で、カラーは女性向けのベリーピンク、男女対応のターコイズ、シルバーホワイトの3色。レッグカバー、フットガードは黒で、ナイロンにPVC(塩化ビニル)の防水素材を使用している。「不満の多かったフードは、顔の動きに合わせてフードも動くローリングフードにしました。右を向けばフードも右にスライドするので、左右の視界を遮りません。これ、昔から作業用カッパに採用している仕様なんですよ。ただ、作業する方はヘルメットをかぶるので、フードをあまり使いませんが・・・」。顔まわりは透明素材で、より見やすく。フードのボタンを留めればホールド部が口元まで立ち上がり、顔の下半分が濡れるのを防いでくれる。
  アンケートの声が生かされた工夫はまだまだある。「“裾がめくれて濡れる”という不満には、裾の合わせ部分にフロントガードを付けることで応えました。さらにレッグカバー、シューズガードを付ければ、足元が濡れるのも防げます。ズボンをやめてレッグカバーにしたのは、“人前でズボンを脱ぐのが恥ずかしい”という声が多かったから。このレッグカバーはラップ式なので靴をはいたままスマートに着脱できます」。なお、レッグカバーはレインコートの内側に紐をかけて吊り上げるタイプで、紐調整により自分サイズに丈調節可。また、シューズガードは靴の紐部分にフックを引っかけて甲をカバーし、靴内への雨の浸入を防ぐ。このほか、上半身には前と後ろに反射パイピングを施し、夜間の視認性を高めている。「7年前に東京で始まった傘さし運転の処罰化は、ジワジワと全国に広がっていき、ついに昨年、最後の長野県にも規制がかかって全国統一ルールとなりました。まだまだ法規自体も浸透していませんし、車の飲酒運転に比べれば罰金の額も小さい。でも、規制ができたのは自転車事故が多いからで、こうしたレインウェアを着用して安全に乗ってもらえればなと思っています」。
  さてさて、なんせ頑固者のラーメン屋、いやカッパ屋さんなので、一品のみで話を終わりにするべきところだが、せっかくなので、最後にもう1点。雨の日の自転車走行に超便利なレインバイザー『雨先案内人』(品番:383)を紹介しておこう。「可動式の透明ツバを下げることで雨の強弱に関係なくフェイスガードできます。発売して10年以上になりますが、このたび3回目のリニューアルを行い、より快適に、より使いやすくなりました」。
  今回の改良ポイントは、これまでビニール素材だった透明ツバを、アタッシュケースにも使われるポリカーボネートに替えて強度を上げたこと。ツバの周囲にぐるりと高輝度反射パイピングを施し、夜間の視認性を高めたこと。そして、アンケートでも声の多かったUVカット機能を付けたこと。まいど屋でも特に女性に人気で、単品での注文はもちろん、カッパと一緒に購入する人も多い。「これをフードの上から付けると、フード留めになって一石二鳥です。ツバを上下しているとフロントが下がってくるので、頭にしっかり固定できるよう、前々回のリニューアルでは、頭にジャストフィットさせる調節紐を付けました」。
  雨の日を少しでも快適に過ごせるようにと、ユーザーの声に耳を傾け、手間を惜しまず満足いくモノに仕上げていくトキワ。何度も言うけど、彼らの一途な姿を見ていると、道を究めようとするラーメン屋さんを思い出しちゃいます。そんなストイックな姿勢から生まれ、進化を遂げたレインウェアやグッズを以下に紹介しておきますね。数は少ないけれど、どれも長い間お客さまから愛されてきた逸品ばかり。作業用から一般用まで揃っているのでぜひチェックしてみてください。職人気質が生んだお品書きだってこと、きっとわかりますから。
 
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顔が濡れずに快適なレインバイザー『雨先案内人』(品番:383)
 

    

ジャストサイズで着こなせば、動きはこんなに軽やかになる!袖のロールアップやパンツ丈の調節などを自由自在に「アジャスト」できるレインスーツ

上着はロールアップで半袖に早変わり。背中の切り返し部にあるベンチレーションで通気性も良好。パンツは裾ボタン付きで、1段階6cm、2段階12cmの丈調節が立ったままできて便利。表はナイロン/PVC、裏は:ポリエステルメッシュ。背中には高輝度の再帰性反射材を使用。サイズはS~5Lで、LとLLはB体も揃った全9サイズ。


消耗の激しいパンツが2本入り!なかなか思いつかないけど、確かに便利なスペアズボン付きレインスーツ

上着と比べて消耗の早いパンツはスペア付き。表地は耐水圧 10,000mm以上、ナイロンタフタにポリウレタンコーティングで軽くて快適。裏地はサラッとしたナイロンメッシュ。頭の左右の動きに合わせて回転するローリングフードで視界をしっかり確保。背中のワッペンには再帰性反射材を使用。自転車などに取り付けて常備できるサイクルケース付き。