【DIC】プラが解決!image_maidoya3
ヘルメットといえば白い帽体。じゃあその素材といえば、もちろんプラスチック――。読者はこんな安易な導入を許してくれるだろうか、いや今回だけは目をつぶって「まいど屋さん、ユーモラスな文章だね☆」と言ってくれるに違いない。じつは今回のDICプラスチックの取材アポは、当初「朝10時に埼玉県の大宮駅前」という関西人が震え上がるスケジュールに設定されており、編集長は数日前から目覚まし時計の動作確認や睡眠時間の調整に戦々恐々としていた。ところが、なんと家族に新型コロナの陽性者が出たため、取材は出張前日にリモートに変更。家庭内感染におびえながらZOOMアカウントを「時間制限なし」の有料プランに変更し、初めての「オンラインミーティングへの招待」を行うと、画面の向こうにDICの担当者が現れた。このように数日もの眠れぬ夜を乗り越えて実現したレポートを白い目で見つめるような冷血漢は、このワーキングの世界には存在しない……はずだ。

DIC
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遮熱モデルについて語る清水さん
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組み合わせカラーも楽しめる「IZANOⅡ」
●「練り込み」は夏の定番!
 
  「やはり今年も売れてるのは、涼しいモデルと軽いモデルですね。ほんとうにシンプルな話で、みんな暑くて重いヘルメットが嫌なんですよ。毎年毎年この暑さですから」
 
  と、しみじみ語るのは産業資材営業グループの清水さん。ヘルメットには「飛来落下物用」「墜落時保護用」「電気用」の3つの安全基準があり、現場に適したモデルを着用しなければならない。そして、安全の次に重視されるのは「快適」だ。言ってしまえば、「何もかぶっていないかのような風通しのいいヘルメット」「何も着けていないかのような軽いヘルメット」をだれもが求めている。そして前者の「涼しい」を代表する商品こそヒートバリア採用モデルの「AA16・涼神」である
 
  「AA16の帽体は、遮熱顔料を練り込んだABS樹脂を成形して作っています。塗装や表面加工を施したものと違って、低コストで遮熱機能をもたせることができ、しかも効果が長持ちします。ヘルメットってけっこう頭をぶつけたり擦ったりするケースが多いんですが『練り込み』だから、いくら傷がついたり、表面がはがれたりしても遮熱の性能が落ちることがありません。こういったことが評価されて2018年の登場以来、涼しいヘルメットの代名詞となっています」
 
  涼しさの秘密は帽体だけではない。一般的な発泡スチロールのライナーを使わずに「エアロメッシュ」という新開発の内装を採用したことで、ヘルメット内部の通気性を確保している。
 
  「発泡スチロールは風通しが悪く、断熱材にも使われるくらいだから熱がこもりやすいんです。そこで通気性のいいメッシュ状の内装を使うことで、帽体の中を風が流れるようにしました。これだと頭と帽体のあいだの熱気もすぐに排出されるし、通気孔付きのモデルを選べば、涼感はさらにアップします」
 
  同社の性能試験によれば、発泡ライナーのヘルメットと比べた場合、帽体内の温度差は最大で8℃も低くなる。本来なら36℃まで上がってしまうところが28℃で済むとなれば、選ばない手はないだろう。
 
  ●帽子感覚の軽量モデル
 
  さて、涼しさの次は軽さ。先ほど挙げた「何も着けていないようなヘルメット」の話である。これはうちの中でもすごい強みのある商品で……、と言いながら清水さんが取り出したのは「AA17・軽神」。その名のごとく最高の軽さを謳ったモデルだ。
 
  「とにかく軽い。ただただ軽い。説明はこれだけなんですけど(笑)、まだ他社にも追いつかれていない260グラム以下の軽さが自慢です。ユーザーさんからも『肩が凝らなくなった』とか『帽子みたいな感覚』といった感想が寄せられています。なかでも個人的に一番うれしかったのは『もっと早く出会いたかった』の声ですね。産業用ヘルメットって毎日8時間もかぶるものですから、わずかな重さによる疲労の蓄積ってバカにならないんです。ほんの少しでもラクにかぶれるものを使うことでストレスも軽減できる。そういうことに気がつく人が増えたのか、年々、リピート購入が増えてきています」
 
  この軽さを実現したのは「インモールド製法」と呼ばれる技術。帽体の内側に発泡ライナーの部材を取り付けるのではなく、両者を一体成型することで原材料の量を大幅カットした。
 
  「たとえばモノが落ちてきたとき、普通のヘルメットだと外殻(シェル)から発泡ライナーに力が伝わり、そこで衝撃が吸収される。つまりシェルとライナーの2段階で対応するわけです。対してインモールド製法の場合、シェルとライナーが一体化しているので、ショックを1段階で効率よく吸収できる。ライナーに力を伝えなくていいぶん、シェルのプラスチックは薄くて済むわけです」
 
  薄いことの利点は軽さ以外にもあるという。
 
  「厚みがないぶん、デザイン的にも引き締まっていてカッコイイという声もありますね。黒系の塗装をオーダーするお客さんもいます。せっかく最新の薄くて軽いヘルメットを導入するんだから、よりスマートな印象にしたいというご要望でした。イマドキなルックスを追求することで若い職人さんの採用なんかにも有利なんじゃないか、と思います」
 
  ●産ヘルを携帯する
 
  「涼しさ」「軽さ」に続いて清水さんが紹介するのは利便性を重視した製品。2021年登場の折りたたみヘルメット「IZANOⅡ」である。一見するとただの防災用品のようだが、じつは建設現場などでも使える「飛来落下物&墜落時保護用」検定モデル。折りたたみ時の厚みが従来品より23%も薄くなり、さらに持ち運びやすくなった。
 
  「これは災害時だけでなく、『持ち歩ける産業用ヘルメット』としても使ってもらうために開発しました。折りたたみ時の厚みは6.3cmとカバンに入れても邪魔にならず、専用のポーチも付いています。ヘルメットの持ち歩きに不便を感じている職人さんをはじめ、電車で現場を回る工事監理者、出張先で作業する舞台装置屋さんなど、さまざまな場面で活用していただいています。一般的な防災用ヘルメットは飛来落下物からの保護用品としてしか認定されておらず、入れない現場も多いのですが、このモデルは墜落時保護の検定もクリアしているので、2m以上の高所作業などでも大丈夫です。災害時でも、これひとつで避難や救援から復興事業までこなせます」
 
  災害時の備蓄は、放置してホコリだらけにしてしまったり、収納した場所を忘れてしまったりということがよくある。しかし、普段から産ヘルとして活用していれば、常にベストコンディションを保つことができるだろう。
 
  「活用度でいえば、“使い回し”ができるのもポイントです。帽体を頭に固定するバンドは、最小47cmから最大62cmまで対応しているので、子供から女性、大人の男性までフィットします。人数分そろえておけば災害時にはみんなが着用できるし、現場の備品としても女性スタッフや小学生の見学用に使えて便利ですよ。また、従来品と違って内装を交換できるので、汗や汚れの心配もありません。この手の商品は値が張るので、買い替えのことを考えて二の足を踏むユーザーさんも多いのですが、内装交換という手もある。これは現場で毎日使う職人さんのニーズに応えたかたちですね」
 
  IZANOⅡの帽体は3つのパーツを組み合わせているため、さまざまなカスタマイズが可能。カタログに載っている5色のカラーバリエーションを組み替えることで、「ホワイトベースにオレンジライン」「グレーベースにホワイトライン」といった通常の産ヘルではできない“遊び”ができる。
 
  「静岡の会社で『ブルーにてっぺんが白の富士山カラーにしたい!』というお客様もいて、意外とおもしろいなぁ、と。このような組み換えオーダーは10個以上から承っていますし、コーポレートカラーなどのリクエストに応じて製造するフルオーダーも300個以上ならできます。お気に入りのカラーのヘルメットを持ち運んで使ってもらえたら最高ですね」
 
  ●すべてが「女性用」に
 
  さらにDICではヘルメット以外に、内装の開発にも力を注いでいる。なかでも最近の目玉は「J内装」。Jは「女性」である。つまり、ヘルメットに取り付ける女性専用の内装である。どんなヘルメットにもサイズ調整のバンドが着いているのに、なぜそんなアイテムが必要なのだろうか。
 
  「そこがポイントなんですが、まず頭の小さい女性はヘッドバンドをいちばん短くしても固定できないことがあります。そんな場合でもこの内装に交換することでしっかりフィットさせられる。女性用の小さいサイズのヘルメットを追加で買わなくても、すでにあるヘルメットをJ内装で女性用にカスタムすればいい、と。これがこの商品を導入する最大のメリットです」
 
  では、ただのサイズ調整アイテムなのか。そんな視線を向けると、清水さんは“女性ウケ”を狙ったさまざまな工夫について語り始めた。
 
  「通常内装との大きな違いは、ヘッドバンドの高さを変えられることです。通常は後頭部にあるものが、アジャスターで首の方まで移動できる。これによってさまざまなヘアスタイルに対応できるようになりました。髪を上の方でくくってもヘッドバンドのあいだから出せるので、髪型の自由度がアップします。また耳ひもも3段階に調節できるので、アクセサリーなどとの干渉を避けることができる。そしてもちろん、あご紐は日焼け跡が残りにくい透明のもので、汗止めは抗菌防臭素材を使っています」
 
  開発の背景には「女性用ヘルメット」に対する問い合わせの増加があったという。
 
  「帽体を小さいものを作って『女性用です』とする手もあったんですけど、『これを付ければどんなヘルメットも女性用になります』という方がインパクトがあるかな、と。内装のうち検定に触れない部分はぜんぶいじって、女性専用モデルにリメイクしました。反響の中に『今まで無理してかぶってたけれど、本当はピッタリ合うものが欲しかった』といったものがあって、うれしかったですね。そんな女性の声が、男性のヘルメット選びにも効いてくればいいなと思います」
 
  ヘルメットの世界にもジェンダーレスの流れが押し寄せている。DICはこの波をプラの技術で乗りこなす。
 
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J内装でさまざまなヘアスタイルに対応
 

    

重いヘルメットよ、さようなら! 着用しているのを忘れる「軽神」シリーズ

業界最軽量の270gを誇るDIC自慢のモデル。帽体と発泡ライナーを一体成型することで、原材料をカットし大幅な軽量化を実現した。軽量化によって肩や首の疲労も軽減されるほか、前かがみになったとき帽体に振られる心配もなし。帽子のような感覚で着用できる。


大人も子供も、防災も仕事も! 折りたたみヘルメットの決定版「IZANOⅡ」

災害への備えや現場への持ち運びなどで活躍する折りたたみヘルメット「IZANO」の最新モデル。従来品より折りたたみ時の厚みを抑え、業界最薄の63mmを実現。防災備蓄のほか、飛来落下物だけでなく墜落時の保護にも対応した産業ヘルメットとして、現場まわりや出張などの場面でもスッキリ持ち運べる。