まいど屋コミック156号/刺繍かプリントか、それが問題だ

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156話刺繍かプリントか、それが問題だ

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お話に出てくるアイテム

50713
半袖クルーネックシャ

前略。今回もセンセイのマンガ、受け取りました。相変わらず精力的に活動されているようですね。センセイの作品を読むたびに、私たちもセンセイを見習って、もっともっとクリエイティブに仕事を進めていかなければならないと強く思います。自分の理想に近づくためにまずは情報を貪欲に求め、ときに想像力を豊かにし、またときには現実をひん曲げさえして芸術性を追求する。真実なんぞにこだわっていては、自分の世界を作り上げることなど到底できやしない。正に、これこそが創造的なアプローチなんですね。勉強になります。先日、センセイがマンガに描かれている商品加工についての説明を求めてきたとき、未熟な私たちは一線で活躍するひとが持つそんな徹底したプロ意識について、まだナイーブなほど理解していなかったようです。貴重な時間を割いて、いそいそと協力してしまいましたからね。でも、今ではわかります。偉大なる芸術の前では、蹂躙された人間の心情などは取るに足りないことなのだということが。乳牛が乳を搾られ続けることを目的に生まれてきたように、踏みつけられる人間は、踏みつけられるためだけにそこに存在している。踏みつける側は踏みつけた結果について何ら責任を負わず、また、そんなことをいちいち考慮すべきではないのです。マンガに登場した鈴木君は、これが俺なのかと言って叫び声を上げました。二重あごに団子鼻。モッズヘアで整えた自慢の髪型は七三分け。必死の筋トレで鍛えた体が渡辺直美みたいになっている。でもいいんです。牛舎で牛がモウっと咆哮したって、絶望の涙をためていたって、誰も気にしやしないんですから。彼は鞭打たれながら、今日も身を削って自分の役割を果たしています。次から次へと回ってくる加工注文によって作業場に縛り付けられ、バケツをミルクで満たすがごとく機械的に、ただひたすら加工作業を続けています。まるでそうすることが生まれてきた唯一の理由みたいに。そして時にはセンセイのマンガの中でいいように使い捨てにされても文句を言わずに仕事を続けることが、自分が取るべき正しい態度だと知っているみたいに。

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