まいど屋コミック182号/ホームステイの留学生

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182話ホームステイの留学生

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お話に出てくるアイテム

JT-6754
男女兼用作務衣

もしも僕に神の手があったなら。僕は全ての始まりだったあの0号を探して、2019年の武漢の街をさまよい歩くだろう。秋晴れの空の下、街の空気は綺麗に澄み渡っている。町の中心にある海鮮市場の狭い路地で、僕は辺りを何度も見回すことだろう。目的の人物を見つけ出すまで、この手に世界を取り戻すまで、僕は辛抱強く通りを往復する。僕は知っている。0号はそこにいる。そのひとは大勢の買い物客が通り過ぎていく古びた店の前で、ひとり何かを物色しているだろう。僕はそのひとの背後に慎重に近づいていく。僕の手は買い物かごの縁からわずかに覗いている財布を素早く、確実につかみ取る。僕は走り出す。振り向いて僕は大声を出す。そのひとが買い物をやめて、僕を追いかけてくるように。もしも僕に神の手があったなら。僕は2001年のニューヨークに行くだろう。9月のあの日の早朝、僕は巨大なビルのエントランスの前で人びとを待ち受ける。次々とビルに吸い込まれていく彼らを、ひとり残らず突き飛ばしてやるために。僕は警官に取り押さえられるかもしれない。そうなる前に僕はビルのロビーにガソリンをまく。僕の手にはライターが握られている。僕が火をつける素振りをすると、館内には避難指示の放送が流れるだろう。僕は人びとが不機嫌そうにビルから出て行くのを眺めている。最後の人間が出て行った後、僕はようやく空を見上げる。西の方角にあった点のような何かが、次第に飛行機の形になり始める。それはどんどん大きくなっていく。人びとが騒ぎ始め、その場から逃れようと走り始めたとき、僕も一緒になって人ごみの中に姿を消すだろう。もしも僕に神の手があったなら。僕はあの男の父親に会いに行く。ときは1945年。場所は同じくニューヨーク。クイーンズで不動産業を営むドイツ移民の彼に、僕は一ダースのコンドームを手渡すだろう。彼がそれをしげしげと眺めている間、僕の手はじっと汗ばんでいる。それから彼は僕に礼を言う。絶対に今夜使ってみてくれ、と僕は念を押す。世界をよりよい場所にするために。今夜、絶対にだよ。明日、僕は未来に帰ってくる。そこでは何もかもがうまくいき、人びとは明るく前を向いている。もうすぐオリンピックが開幕する。それがどんなに特別なことなのか誰も知らないまま、その日がやって来る。

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