まいど屋コミック209号/鳶用レイン超超ロング八分

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209話鳶用レイン超超ロング八分

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お話に出てくるアイテム

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鳶用レイン超超ロング

昔はね、こういう商品が飛ぶように売れたものです。梅雨の時期なんか、段ボールのケースを倉庫に山積みにして在庫していました。あの頃、超超を穿いていない鳶職人はいなかった。それを着用しない人間は、仕事仲間とは認められない雰囲気が、当時の現場にはあったんです。言ってみれば、最近のマスクみたいな感覚です。今どきマスクなしで外出することがほとんど不可能なように、超超じゃない格好で仕事に行くのは、他者との一般的な人間関係を自ら絶ち切るに等しい、社会的自殺行為でありました。それほど、超超は鳶職人のアイデンティティーと一体化していた。あれから時は流れ、色々なものが失われてしまいました。職人さんたちの気質も変わった。それに伴って、現場の風景も変わった。今じゃ、マンガに出てくるような硬派な仕事人は少数派です。誰もがスマートに振舞いたがる。他人と区別できる自分の個性を、血眼になって見つけようとしている。そして、自分探しなどという気味の悪い言葉を、いい年をした大人まで真に受けるようになっている。彼らは何かを探しているフリをすることで、一人前の人格が持つべき覚悟を固めることを先送りし続けています。理想は突拍子もない場所で偶然に発見されるものではなく、与えられた環境の中でもがいているうちに少しずつ固まっていくものであるという事実から、目を背け続けているんです。今の現場には超超と鳶シャツの代わりに、まるで街歩きにでも出掛けるようなデニムの上下が溢れています。梅雨の季節になると、スポーティーなアウトドアタイプのレインウェアが色とりどりの花を咲かせ、さながら夏休みのキャンプ場のような光景です。かつて、そこでは超超の雨合羽が職人たちのプライドを包み、そこかしこを忙しそうに歩き回っていました。武骨で不器用で、みっともないほど強面だけど、一本筋が通っていた。昔々、そういう時代があったんです。

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