まいど屋コミック231号/母の日のプレゼント

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231話母の日のプレゼント

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お話に出てくるアイテム

SBPU-2004
胸あてエプロン

壁に留めたカレンダーが風に揺れている。それはもう何日も前から左右に小刻みなスウィングを繰り返している。思いがけず、次の月が半分見えてしまうくらいの突風が吹くこともある。めくれ上がってほんの一瞬顔を出した6月のページには、確かに色鮮やかなヒマワリ畑の写真が掲載されていた。青空の下、太陽の光を浴びて丘の上まで続く黄色のグラデーション。あの丘を越えると、一体何が見えるのだろう？カレンダーの第二土曜日のマスには、ピンクのマーカーペンで小さく「母の日」と書き込みがあった。几帳面な文字からは、疑うことを知らない善意が感じられ、記入者の人柄がそのまま表れているようだった。そして同時に、彼女の深い優しさがにじみ出ているように見えた。それがもう何日も前からパタパタと風に揺れ、その様子をベッドサイドに転がった熊のぬいぐるみが睨みつけていた。風が吹き込んでくる通りの方向にある壁には、クルマが通り抜けられるくらいの大きな穴が開いている。床には窓ガラスの破片がそこら中に散らばっている。脚を失ったキッチンテーブルが奇妙な角度でひっくり返り、ところどころが焼け焦げたソファーの上には、黒い煤ホコリがうっすらと積もっている。窓にあったはずのカーテンは、穴の縁に引っ掛かって階下へと垂れ下がり、スタジアムに翻った国旗みたいに風にはためいている。風は一か月前と比べて、随分と暖かくなっていた。寒さが厳しい北の国にも、去年と同じように春はやって来たのだ。そしてもうすぐ、マーカーペンの彼女が心待ちにしていた母の日が来る。廃墟と化したこの町にも、瓦礫が散乱する通りを踏みつぶしていく戦車の中の兵士にも、その日は平等に訪れる。感謝の意を示すカーネーションからは、真っ赤な血がしたたり落ちている。大量の血が大地へ浸み込むと、来年は一体どんな色の花が咲くのだろう？窮屈な戦車の中で、年若い兵士がせめて何がしかの葛藤を抱えていることを願う。もうすぐ、丘一面にヒマワリが咲き乱れる季節がやって来る。青空と黄色い大地のコントラストが目にまぶしい季節に、現実離れをした砲弾の音が響き渡っている。

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