まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月はかなり久々の作業服特集をお届けしました。今回の取材先は、地元大阪と広島県の福山市です。しょっちゅう行ってる感じがする福山ですが、よく考えてみれば2022年になって初の訪問。数カ月開いたせいか、街を歩く感覚も少し新鮮で、ちょっとした観光気分でした。いよいよ5月に入り、おでかけに最適な季節となります。行楽やアウトドアを快適にするウェアのお求めは、ぜひ「まいど屋」へ!

●ダイエット1周年

思えば去年、編集長がダイエットを決意したのも出張中だったと記憶しています。

あれは5月の出来事です。「もうすぐ夏か、半袖の服を出そうかな」と、風呂上がりにボンヤリ考えていたとき、ふと思ったのでした。あれ、腹ヤバくないか? と。10年ほど前から体重が増加傾向にあるのは自覚していたものの、中年だから仕方ないとも考えていました。同年代にはもっと丸々としてきた人もたくさんいるし、まあ比較的マシだ、許容できるレベルだろうと思っていました。しかし、腹はそんな見解を嘲笑うかのごとく、着実に前に出てきている。遠慮気味に微増していく体重をよそに、腹はすでに帝国主義的な拡張政策に出ていたのです。これではTシャツが着られない! 今が引き返せる最後のタイミングだ!

そんなわけで、人生初の食事制限によるダイエットをスタート。食うことだけが楽しみで、炭水化物も酒も大好きな人間が、食事制限をするというのは、想像を絶する苦労でした。ホントに、つらいなんてもんじゃなかった。

パスタは100グラムの束をバキッと折って半分だけゆでる。ごはんは秤で計量して80~120グラムの範囲で食べる。外食は基本的に蕎麦を一人前だけ。マクドナルドではハンバーガーやフィレオフィッシュといった低カロリーなメニューを単品で注文し(ポテトはダメ絶対)、コンビニでメシを買うときは400kcal以内に収まる冷凍ボンゴレやペペロンチーノをリピートしました(冷凍パスタはセブンイレブンがおいしい)。わが家は私以外みんな少食で(むしろ体重が増えなくて悩んでいる)代わりに食べてくれないので、買い置きしてあった大盛りカップ焼きそばや冷凍ドリアなど、高カロリーなものは工夫して自分で食べ切りました。半分だけ食べたら冷蔵庫に入れておき、翌日に続きを食べるのです。

このような涙ぐましい努力を続けた結果、体重は毎月2kgほど落ちていき、半年で10kg以上の減量に成功しました。本誌1・2月号でレポートした東海道の徒歩旅行に出かけたのは、ちょうどそのタイミングです。旅行中もかなり緩めつつも食事制限は続けました。毎日30km以上も歩いているんだから好きなだけ食べてもいいのではないか、と思うかもしれませんが、そうではないのです。朝食は普通にしっかり食べて、昼は軽く麺類。夜の炭水化物は控えるという方針で二週間あまり歩き続け、東京・日本橋のホテルで体重計に乗ったときは出発前より1kg減っていました。この日以来、東海道で得たマイナス1kgをマージンとして、制限を緩めたり締めたりしながら生活しています。つまり、旅立つ前の数値を「最大体重」、ゴール後の数値を「最低体重」としたわけですね。

こうして東海道踏破という「ダメ押し」をもって、私のダイエットは完了したのでした。

●「現状維持」の戦い

いま体重マージンに余裕があるときは、けっこう好きなものを食べています。しかし、体重というのはひじょうにたやすく増えるもので、なかなか油断できません。たとえば先日、家族で定食屋に入ったときのこと。妻が「ごはんが多すぎる」というので「まかせろ!」とペロリといったら、翌朝の体重は600g増でした。やはり米は太る。相撲部屋ではなぜパスタやパンではなく白い米ばかり食わせるのか、食事制限で体重をコントロールしてみるとよくわかります。

これを元に戻すには、2、3日のあいだ軽い制限をかけるか、1日だけ去年のダイエット中のようなハードな制限をやるか、どちらかです。後者でおすすめの方法は、ごはんを1日200g前後にすること。これは一膳よりやや多めで、レンジで温める「パックごはん」の平均的な量です。朝にチンしたら100gだけ食べて残りは昼に食べる。これは体重増加に対する強力なブレーキとなります。そして、ごはんは麺やパンより腹持ちがいいからなんとか耐えられる。低血糖になりそうなときは飴やラムネでしのいで、夜はビールでも呑んでさっさと寝ましょう。

さて、こうして体重をキープしていると、新たな問題が生まれます。「マージンが1kg以上になってしまった場合に何を食べるか」です。これは意外と難しい。べつに回転寿司で好きなだけ食べたりココイチでカツカレーを注文したりしてもいいんですけど、なんだか「もったいない」と感じるのです。せっかく苦労してコツコツ積み上げたマージンを、そんなのに費やしてしまっていいのだろうか? もっとものすごく美味しくて“貯金”が大量にないと絶対に手を出せないようなものを食べるべきじゃないのか、と。つまり「何を食べてもいい状況」だから気楽に選べるはずが、逆に慎重になってしまうわけです。とくに牛丼やカップ焼きそば、フライドポテトなんかには絶対に使いたくない。ぜんぶ大好きだけど!

こんな意識を持ち始めると、必然的にグルメになります。ラーメンはそれほど体重が増えないものの、塩分で一時的にマージンが消し飛ぶので、軽い気持ちでは口に入れられない(2、3日で戻るとわかってはいるけど)。食べるなら文句なしのうまい店に、本当に心から求めているタイミングで暖簾をくぐる。カレーも同様で「ふつうに美味しい」レベルのものには関わらないようにしています。ただし、女性が多いカフェ風の店とかだったら、ある程度はギャンブルができる。ごはんの量が少ないからです。「かつや」のカツ丼も大好きなんですけど、一撃で“貯金”を失うのは痛いので、ごはんの量を減らしてもらいます。カツ丼のごはんの量はおそらく250gくらいですが、150gくらいにしてもなんとか「カツ丼感」は保てることを発見しました。もちろん注文するときは具体的に「ごはん150gで」と指定する。店員のおばちゃんに失笑されます。しかし、恥も外聞もありません。こちらにとっては死活問題ですから。

この一年で私は悟りました。神はお望みなのです。--中年が太ること、そして腹がポッコリ出ることを。

つまりダイエットというのは、この神の意志に真正面から逆らう行為です。私は神に反旗を翻したのだから、甘んじて食事制限という地獄に飛び込む必要がありました。もう天界に未練はありません。もし読者の中にも、炭水化物の楽園を失ってでも私のように真剣にダイエットに取り組みたいという人がいれば、連絡してください。私はサタンの役を引き受けて、反逆軍を率いたいと思います。

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あ、そういえば触れるのを忘れていましたが、今回の総合タイトルは社長の提案であり、編集長としてはノーコメントです。語呂だけはいいんですけど……、あ、つい余計なことを。というわけで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!