【進和化学工業】独創する新興ブランドimage_maidoya3
カタログを開くと、デザインの多様さに驚かされる。個々のアイテムのカラーバリエーションの多さに圧倒される。ヘルメットが必要だけど、自分の好みのイメージがない。そんなときに必ず力になってくれる。それが進和科学のヘルメットだ。MP型などのオーソドックスなデザインはもちろん、流行りのアメリカンタイプでも、左右に段差をつけたり、通気孔を搭載してみたり。単調になりがちな半円形のシルエットに、あの手この手で変化をつける。一つのモデルに、他社ではマネができないほどの色数がある。ありきたりでない、ちょっと変わったデザインや珍しい色を探している時、まずチェックしてみて損はない。
  手堅く丁寧な商品づくりで、これまで多くのユーザーの信頼を獲得してきたが、決して保守的ではない。小心とさえ言える緻密さと、旺盛なチャレンジ精神。進和化学には常に相反するイメージが付きまとう。開発の焦点を、軽くて発色性のいいABS素材に絞り込み、偏執的とも言える情熱で新商品を開発してきた。例えば、業界関係者をあきれさせた、常識はずれの四角形のヘルメット(型番:SS-21)。例えば、バイザー部分を自由に取り換えられる着せ替え可能なヘルメット(型番:SS-19)。時に脱線しながら、時に世間があっというようなヒットを飛ばす。
  新興勢力らしい大胆な商品開発で大手メーカーもその動向を注視する進和化学。今回のインタビューでは、そんな同社を訪ね、彼らのヘルメットの魅力について、常務取締役の三村敏明さんに詳しくお話を伺ってきた。

進和化学工業
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群馬県藤岡市に本社を構える進和化学工業。広い敷地内に、工場、倉庫、事務所が点在する。
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進和流の商品開発について熱く語る三村常務。
■ユーザー目線でひたすら目指す、ストレスフリーのヘルメット
  「ユーザーは何を求めているのか、どのように使いたいのか。営業が外回りのついでに現場に足を運んで、実際に使っている人たちの話を聞いてくるんです」。インタビューの間、三村常務は何度もそう言った。進和化学の商品開発はいつもここから始まる。ユーザーの声にとことん耳を傾け、ユーザーが望んでいるものをカタチにしていく。そこには、「モノづくりの原点は、使い手にあるのであって、作り手にはない」という確固たるポリシーがある。
  「開けて、持って、グッと引っ張るだけ。簡単でしょ!」と、三村常務自ら装着して見せてくれたのは、ワンタッチとスライド式を合体させた『S式ワンタッチあご紐』。これは、あご紐の調整に手間がかかってイライラする、もう少し簡単にできないか…との声から生まれたものだ。今では進和化学の多くの製品に採用され、作業現場はもちろん、工場見学や鍾乳洞見学など不特定多数の人が利用する場所での需要も多いという。
  「たったこれだけのことですが、とても喜ばれています!」。そう言って見せてくれたのは、ヘルメット内に装着する『タオルバンド』。暑い夏の現場では欠かせないアイテムだ。「目に汗が入ると作業に集中できないし、事故にもつながる。手で汗をぬぐいたくても、手袋をしているのでぬぐえない。それで、なんとかならないか、と」。タオル製なので肌あたりも良く、汚れたら取り外して付け替えるだけ。洗濯をすれば何度でも繰り返し使えるので経済性も高い。
  このほか、ワンタッチで後頭部をホールドしてヘルメットのぐらつきを防ぐ『ラチェット式ヘッドバンド』、耳紐の取り替えを容易にした『ホック式ワンタッチ紐』など、ユーザーのストレスを軽減するアイデアは枚挙にいとまがない。
 
  ■ヒットの秘密は、業界の常識にとらわれない発想力
  進和化学には、こうしたユーザーの声を反映した堅実な商品の他に、業界の常識を覆すユニークな発想で売れている商品がたくさんある。たとえば、冒頭でも触れた『着脱式クリアバイザー対応ヘルメット』(型番:SS‐19T-PRA)。他メーカーでは帽体とバイザー部分は一体化しているのが普通だが、進和化学の場合は着脱式。「現場では作業内容によってバイザーが邪魔になる場合もあるんですね。だから必要でないときは外して、暑くて眩しいときだけバイザーを付けておく。そういう使い方ができるんです」。
  特に注目したいのは、カラーバリエーションの多さ。ヘルメットが12色、バイザーは7色。色の組み合わせは12×7=84通りになる。「着脱式バイザーのもう1つのメリットは、個人やチームを色で特定できることです。現場監督はこの色、作業員はこの色と決めておけば、遠くからでもその人の職階がひと目でわかる。自治会などの防災訓練でも、1丁目の住民は青、2丁目は黄色というようにすれば、ヘルメットは同型同色でも、バイザーの色で何丁目の人なのか見分けがつきます」。
  また、サイズ展開に着目し、他社と差別化している製品もある。通常、ヘルメットのサイズはフリーか、多くてM・Lの2サイズ。ところが、進和化学では超特大LLサイズを加えた3サイズを用意する(型番:SS‐88)。「現場では全員同じ型で揃えたいところですが、中にはLサイズでは入らないという人もいます。そういう人たちが例外的に違う型を着用しなくてもいいように、M・L・LLの3サイズを用意しました。最大着サイズが64cmですから全員が同じ型で統一できるんです」。
 
  ■独創の道をひた走る、全社一丸の商品企画
  こだわりの強いデザインも進和化学の特徴だ。「これ、ガンダム風と評判なんです」というのは、フロントフェイスの通気孔配置がカッコいい、バックエキゾーストヘルメット(型番:SS‐18VS-18T-PRA)。「通気孔を全方位に配置して風通しを良くし、フォルムにもこだわりました。飛来物が身体に当たるのを防ぐために、後ろの部分をわざと長くしています」。
  では、こうした個性的なデザインや様々なオリジナル商品は、どのようにして作られるのだろう。「企画、デザイン、設計、製造と、社内で全部やります。粘土を買ってきて、あーでもない、こーでもない、とやりながら形を作る。で、これでイケるとなったら、型を取り、金型を起こして試作品を作る。ウチにはデザイナーの肩書きを持つ社員はいません。社員全員の知恵を持ち寄るのが進和化学の商品開発なんです」。商品企画では、ヘルメットとは縁のない女性社員の意見も大切にするそうだ。ユーザー視点で意見を言ってくれるので非常に参考になるという。
  新しいアイデアを常に追い求めているから、製造もユニークになる。ヘルメットに関わる成形品は、細かいパーツひとつから印刷・シールに至るまで、すべてが社内の一貫生産だというのだ。「他社がやっていないもの、作っていないものをやってみよう。ウチだけにしかない製品を作ろう。そうやって突き詰めていったら、一貫生産になってしまいました」。素材以外、製品の一から十までオリジナル。こうした徹底したこだわりが、他に二つとない製品となってファンを魅了するのだろう。
  「今回の震災で、ヘルメットがより身近なものとなりました。これからも他社にないもの、他社にできないものを、ユーザー視点で作っていこうと思っています。現在開発中のものがあるので楽しみにしていてください」。大企業にはマネのできない旺盛なチャレンジ精神と発想力で突き進む進和化学。次はどんなサプライズが待っているのだろうか。彼らの動向からますます目が離せなくなりそうだ。
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多種多様な商品の入出庫を迅速・正確に行う全自動倉庫。
 

    

◆個性的なデザインで印象度100%のヘルメット

バイザー部分にもデザインを施した個性的なフロントフェイス。曲線を描くサイドデザインも斬新でクール!雨だれを防ぐミゾ付き仕様で機能面もGOOD!


◆バイザー交換可能ヘルメット

前方の視界も良好なクリアバイザーは、作業内容に合わせて付けたり、外したりできる着脱式。豊富なカラーバリエは、本体12色×バイザー7色で組み合わせ自在。職階別やチーム別で色分けをすれば、個人やメンバーがひと目でわかって作業もスムーズ!