【住べテクノ】歴史を拓き続ける老舗の発想力image_maidoya3
全てにおいてソツがない、というのが第一印象。それもそのはず。日本のヘルメット産業の黎明期、会社の前身の住友ベークライト時代からヘルメットを作り続けて50年。住ベテクノプラスチックは、業界でも屈指の老舗メーカーである。
  歴史は伝説を生む。ミゾ付デザインヘルメットの走りであるSA1は、発売当初、他メーカーがこぞって類似品を発売するほどのセンセーションを巻き起こした。そして、通気孔付きヘルメットの先駆けとなったKKC。長い間、帽体内のムレに悩まされてきたワーカーたちが、どれほど熱狂的にこの商品の登場を歓迎したか。住ベテクノが歩んだ道程は、まさに、日本のヘルメットが進化してきた歴史だと言っていい。
  住友ベークライトから引き継いだ、精密な金型を作る技術。プラスチック製品全般を取り扱うことで蓄積された、樹脂加工関連の膨大なノウハウ。それらが相まって生み出される圧倒的な信頼感が、革新的なアイデアを「当たり前」に変えてきた。同社の商品ラインナップが「ソツなく」見えるのはそのためだ。
  老舗にありがちな融通のなさとも無縁。要求があればできるだけ納期を早めるなど、小回りのきく、フットワークの軽さも魅力である。今回のインタビューでは、そんな住ベテクノの心臓部とも言うべき栃木工場を訪ね、同社商品の魅力について、製造部部長の中曽根氏に詳しくお話を伺ってきた。

住べテクノ
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インタビューに答えてくれた中曽根製造部長(左)と峰松営業部長(右)
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看板商品の“KKC-Bクール”は職人たちの創意工夫の結晶
■国家検定通過も危ぶまれた、新・開発商品のインパクトとは?
  「親会社の住友ベークライトから引き継いだものは、緻密な樹脂加工のノウハウ、そして『この技術を使って何かできないか?』と常に試行錯誤する習慣ですね」。インタビューに応じてくれたのは、プラスチック加工技術を知り尽くす中曽根部長。たたき上げの職人だ。
  住友ベークライト時代のヒット商品といえば、日本で最初に発売されたプラスチックまな板。この商品も加工技術が進化するにつれ、『この技術を使って何かできないか?』という思いが強まって企画されたという。ユーザーの潜在的なニーズを察知し、高度な加工技術と組み合わせて生まれる製品は革新的かつ機能的だ。前例のない商品はどれもが驚きに満ち、ユーザー自身に発想の転換を迫る。奇異にみえたアイデアは、使っていくうちに徐々にその利便性が浸透していく。
  例えば、通気孔付きヘルメットの先駆けとなった【KKC】(型番:KKC-B、KKC-Bクール)。ヘルメットに通気孔を付けるというアイデアが、当時、あまりに斬新だったため、商品化するかどうかで社内の意見が大きく割れたそうだ。また、前例を重視する国の規格検定を通過するかも危ぶまれた。「検定は大丈夫だったんですか?」との問いに「穴が開いていても安全性が全く損なわれていないことを粘り強く説明し、なんとか検定には通りました」と、にっこり笑う中曽根部長。そんなプロセスを経て誕生した【KKC】は、着用したときの快適さとデザインの斬新さから空前の大ヒットになり、現在も売れ続ける同社の看板商品に成長した。ちなみにこの【KKC】はその後もさらに進化を続けている。その開発のヒントは意外なところから生まれていた。
 
  ■職人気質の老舗メーカーが生むヒット商品の裏側にせまる
  通気孔付きヘルメットの先駆けとなった【KKC】がさらに進化し、新たなニーズを開拓したのが“KKC-Bクール”。それは一体どんなものなのか?
  「遮熱(しゃねつ)効果のある酸化チタンをヘルメット表面に塗布することで太陽光の熱吸収を抑え、帽体内の温度の上昇を抑制するという画期的なものです。普通のヘルメットと比較すると、帽体内の温度差はマイナス8℃もあります。さらに、通気孔から空気が入るから、ムレ感が全くない。社内での呼び名は“快適クン”なんですよ!」。ヘルメットを愛しそうに見つめながらそう話す中曽根部長。開発中に自らモニターになって野外で作業をしてみて、その効果に改めて驚いたという。「暑い環境での快適さが全然違いました。これはいけるなと…」。
  ヘルメットに塗布した酸化チタンは、実は、住宅用の塗料。その塗料を持ち込んだのは飛び込み営業で訪れた住宅メーカーのセールスマンだったと中曽根部長は笑う。太陽光の熱吸収を抑え、室内の温度上昇を防ぐという酸化チタンの話を聞くうちに、これはいけると思ったそうだ。「ひらめいたまではよかったのですが、住宅用に作られた塗料をヘルメットに塗布するのが大変で…。何度もトライしました」と、苦笑する。「これまでにない商品を開発するには、アンテナを常に外に向けて張っておくことが大切なんです。ですから、どんなセールスでもできるだけ会って話を聞くことにしています。『何かのヒントにならないか?』『この技術を使って何かできないか?』という気持ちで向き合うことが信条です」。
 
  ■付加価値を永遠に追求する、開発魂ここにあり
  住ベテクノのヘルメットが持つ魅力は、その革新性ばかりではない。価格も手頃なコストパフォーマンスの高さもユーザーを強く引き付ける。「圧倒的に売れているのは、豊富なカラーバリエーション(9色~13色)を持つSAシリーズ(型番:SAI-B、SAIⅡ-B)。値頃感、色数の多さ、そして軽量性が魅力です。企業がコーポレートカラーに合わせ、従業員の人数分購入するパターンが多く、震災後は、注文が殺到しました。一時は生産が追いつかずに工場をフル稼働させて受注をこなし、全員で内装の組み立てを必死でやりました」と、中曽根部長。企業だけでなく個人も防災に対しての考え方が変わってきている今、かなりの手ごたえを感じているようだ。
  防災について変化するユーザーの気持ちを汲みながら、住ベテクノはこれからも進化し続けるのだろう。中曽根部長の自信に満ちた表情から、すでに新たなアイデアがひらめいているようにも見える。圧倒的な加工技術を持った職人集団が作り出すヘルメットは、これからもユーザーの安全を守りつつ、他に類を見ない快適さも提供してくれるはずだ。
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広大な敷地内に建つ工場
 

    

◆顔面を保護するシールド面付きヘルメット

軽量で扱いやすさは抜群。しっかりと顔面を保護してくれるインナーシールド付。360度頭部を守る、野外作業の強い味方。これで安全対策はバッチリ。


◆清涼感抜群の通気孔付きヘルメット

今までムレに悩まされていたのが一気に解決!計算されたデザインと通気性で、頭部に風が通り抜けるような清涼感。これぞ通気孔ヘルメットの決定版。作業がはかどる、ピカイチのオススメ品。