一目見ただけで、名前をいい当てられるブランドはめったにない。シルエットやデザイン。素材やカラーリング。それぞれのディテールは全く違うコンセプトで作り込まれているのに、製品としてカタチにしてみると、不思議とブランドそのものを体現する雰囲気を醸し出す。ウェアが纏う独特の匂い。個性。何故だかはうまく言えないけど、とにかくそのブランドであることだけはハッキリわかる。ディッキーズはそんな数少ないワークウェアブランドの一つだ。
もともとアメリカの厳しい現場労働向けに誕生し、第二次大戦中は米陸軍の制服にもなったほどだから、仕事着としての耐久性や機能性は折り紙付き。彼らの存在感を際立たせているのはむしろ、揺るぎない基本スペックの上に表現される独自のファッション世界にあると言っていい。ラフな着こなしがサマになるややルーズめのウエストライン。よく使い込んだあとに出てくるクタ感や、味わいのある色落ち感。全てが混然一体となり、初めてディッキーズらしさが立ち昇ってくる。
このブランドを仕事に使うひと、ファッションとして注目したひと。ディッキーズが世界中のファンに受け入れられてきたのは、着るひとの解釈次第でPOPにも見え、ワイルドに気取ることもできる懐の深さゆえ。古きよき時代から連綿と続く、ストーリー性に共感したがゆえ。
まいど屋を訪れるツナギフリークの皆さんにも是非、ディッキーズの魅力を知ってもらいたい。そう考えて企画した今回のインタビュー。同ブランドをOEM生産するツナギ服メーカー、山田辰で詳しくお話を伺ってきた。
もともとアメリカの厳しい現場労働向けに誕生し、第二次大戦中は米陸軍の制服にもなったほどだから、仕事着としての耐久性や機能性は折り紙付き。彼らの存在感を際立たせているのはむしろ、揺るぎない基本スペックの上に表現される独自のファッション世界にあると言っていい。ラフな着こなしがサマになるややルーズめのウエストライン。よく使い込んだあとに出てくるクタ感や、味わいのある色落ち感。全てが混然一体となり、初めてディッキーズらしさが立ち昇ってくる。
このブランドを仕事に使うひと、ファッションとして注目したひと。ディッキーズが世界中のファンに受け入れられてきたのは、着るひとの解釈次第でPOPにも見え、ワイルドに気取ることもできる懐の深さゆえ。古きよき時代から連綿と続く、ストーリー性に共感したがゆえ。
まいど屋を訪れるツナギフリークの皆さんにも是非、ディッキーズの魅力を知ってもらいたい。そう考えて企画した今回のインタビュー。同ブランドをOEM生産するツナギ服メーカー、山田辰で詳しくお話を伺ってきた。
ディッキーズ
2007年にデビューしたOEM生産第1号の701
この胸のワンポイントがディッキ―ズの証
「2007年にスタートして今年で6年目。正直いって、生産を始めるまで、これほど強いブランドとは知りませんでした」。そう話すのは、製造企画部の島部 達也さん。「ディッキーズは、ウチが手掛ける前からツナギを着る方の中では有名で、作っている我々より、買っている人たちのほうがブランドの価値を認めていた。実際に売り出して、それに改めて気づかされたんです」。
そもそも、なぜディッキーズなのか。同社がディッキーズをライセンス生産するようになったいきさつを紹介しておこう。「アメリカ直輸入品のディッキーズ。これが、街のカジュアルショップで1万円くらいで売られていたんです。ツナギばかり作っている人間から見ると、『なんで、コレが1万円なん?』って感じです。一般的な作業ツナギの場合、同じようなクオリティのものでも、よくいって5,000円~6,000円。1万円出して、それでも満足している人たちが大勢いる理由が知りたかった」。
ファッションとしてのディッキーズに、ブランドの底力を感じたという島部さん。早速、自社製品でそのニオイを出そうと頑張ったが、なかなか思うように味が出ない。そんな折、ある記事が目に留まる。「ディッキーズのライセンスを持っている商社が、そのライセンスをユニフォームに展開するのでメーカーを探している。そんな記事が業界新聞に出ていたんです。それで、是非!と名乗りを上げたわけです」。
かなり厳しい審査を経て、ライセンス契約は無事終了。そして2007年、一挙に6品番を企画・デザインして投入した。ディッキーズの正統派といえるベーシックなデザインの701、702、703と、その半袖バージョンの711、712、713である。「販売を開始するとすぐに自動車修理工場などに噂が広がり、1年目は生産が追い付きませんでした。インポートものがかなり出回っていたので、潜在的に好きな方が多かったのでしょう。不思議なもので、それまでどうやってもあの独得のニオイが出なかったのに、ディッキーズのタグを付けると、とたんに雰囲気が出る(笑)」。
翌2008年は、カジュアルテイストのヒッコリーシリーズ(型番:801、811)。2009年は切り替えデニム素材(型番:903、904)を発表し、レディースにも挑戦した。そして、2010年のヘリンボン(型番:1002、1012)へと続く。
ディッキーズというと、そのブランドイメージからツイルや平織りのオックスといった素材が思い浮かぶが、同社では従来にない素材にも果敢にチャレンジしている。その一つが、2011年に出したブッチャー織(型番:1101)で、今春夏はその半袖バージョン(型番:1111)が登場した。「ブッチャー織りは、盛り上がった織りのラインが所々に走る生地。表情のある高級素材を惜しげもなく使った、今季のイチオシアイテムです」と自信を見せる。
従来のディッキーズに新風を吹き込んでいる山田辰製ディッキーズだが、実は本家本元のアメリカ製品とは大きな違いがある。「まず、アメリカのは生地が硬い。そもそもサイズが全く違うし、パターンも違う。それに同じ品番でもボタンやファスナーのメーカーがバラバラで、生地の色もまちまち。日本でモノづくりしている人間からいうと、こんなのありえないが、そこがグローバルスタンダードのいいところ。『細かいことを気にするな!』です。ウチでは風合いのいい日本の生地をできるだけ使うようにしていますし、ロット毎に色ブレが出ないように、かなり気を配っています」。
社内・社外を問わず、常時ツナギを着ているという島部さん。展示会でも着用時の参考になると、ツナギ姿は好評だという。「着慣れると非常にラク。ウチの場合、後ろ身のパターンが独特なので、座った時に感じる背中の突っ張りもほとんどありません。それに何より、商品企画でも実際に着てみることで分かることが多いですから」。
最後に、島部さんが考えるディッキーズの今後について伺ってみた。「ディッキーズはブランドイメージが強いので、そこから外れすぎると『違う』といわれ、路線を守ると『マンネリ化している』といわれる。『やっぱりディッキーズやなぁ』『ディッキーズはこうでなくちゃ』といったお客さまの期待に応えながら、いかに新鮮味を出していくか。じっくりと思案しているところです。次に我々がどう答えを出すか、皆さん、期待していてください」。
そもそも、なぜディッキーズなのか。同社がディッキーズをライセンス生産するようになったいきさつを紹介しておこう。「アメリカ直輸入品のディッキーズ。これが、街のカジュアルショップで1万円くらいで売られていたんです。ツナギばかり作っている人間から見ると、『なんで、コレが1万円なん?』って感じです。一般的な作業ツナギの場合、同じようなクオリティのものでも、よくいって5,000円~6,000円。1万円出して、それでも満足している人たちが大勢いる理由が知りたかった」。
ファッションとしてのディッキーズに、ブランドの底力を感じたという島部さん。早速、自社製品でそのニオイを出そうと頑張ったが、なかなか思うように味が出ない。そんな折、ある記事が目に留まる。「ディッキーズのライセンスを持っている商社が、そのライセンスをユニフォームに展開するのでメーカーを探している。そんな記事が業界新聞に出ていたんです。それで、是非!と名乗りを上げたわけです」。
かなり厳しい審査を経て、ライセンス契約は無事終了。そして2007年、一挙に6品番を企画・デザインして投入した。ディッキーズの正統派といえるベーシックなデザインの701、702、703と、その半袖バージョンの711、712、713である。「販売を開始するとすぐに自動車修理工場などに噂が広がり、1年目は生産が追い付きませんでした。インポートものがかなり出回っていたので、潜在的に好きな方が多かったのでしょう。不思議なもので、それまでどうやってもあの独得のニオイが出なかったのに、ディッキーズのタグを付けると、とたんに雰囲気が出る(笑)」。
翌2008年は、カジュアルテイストのヒッコリーシリーズ(型番:801、811)。2009年は切り替えデニム素材(型番:903、904)を発表し、レディースにも挑戦した。そして、2010年のヘリンボン(型番:1002、1012)へと続く。
ディッキーズというと、そのブランドイメージからツイルや平織りのオックスといった素材が思い浮かぶが、同社では従来にない素材にも果敢にチャレンジしている。その一つが、2011年に出したブッチャー織(型番:1101)で、今春夏はその半袖バージョン(型番:1111)が登場した。「ブッチャー織りは、盛り上がった織りのラインが所々に走る生地。表情のある高級素材を惜しげもなく使った、今季のイチオシアイテムです」と自信を見せる。
従来のディッキーズに新風を吹き込んでいる山田辰製ディッキーズだが、実は本家本元のアメリカ製品とは大きな違いがある。「まず、アメリカのは生地が硬い。そもそもサイズが全く違うし、パターンも違う。それに同じ品番でもボタンやファスナーのメーカーがバラバラで、生地の色もまちまち。日本でモノづくりしている人間からいうと、こんなのありえないが、そこがグローバルスタンダードのいいところ。『細かいことを気にするな!』です。ウチでは風合いのいい日本の生地をできるだけ使うようにしていますし、ロット毎に色ブレが出ないように、かなり気を配っています」。
社内・社外を問わず、常時ツナギを着ているという島部さん。展示会でも着用時の参考になると、ツナギ姿は好評だという。「着慣れると非常にラク。ウチの場合、後ろ身のパターンが独特なので、座った時に感じる背中の突っ張りもほとんどありません。それに何より、商品企画でも実際に着てみることで分かることが多いですから」。
最後に、島部さんが考えるディッキーズの今後について伺ってみた。「ディッキーズはブランドイメージが強いので、そこから外れすぎると『違う』といわれ、路線を守ると『マンネリ化している』といわれる。『やっぱりディッキーズやなぁ』『ディッキーズはこうでなくちゃ』といったお客さまの期待に応えながら、いかに新鮮味を出していくか。じっくりと思案しているところです。次に我々がどう答えを出すか、皆さん、期待していてください」。
製造企画部の島部さん
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