【ディックプラスチック】本当はヘルメットがお好きでしょimage_maidoya3
ウイスキーがお好きでしょ。そんなCMがある。いいCMだ。ウイスキー好きが見たら、きっと家に帰ってウイスキーを一杯やりたくなるだろう。ウイスキー好きじゃなくても、お酒の飲める人なら、たまにはウイスキーでも飲んでみるかと思うかもしれない。ヘルメットの特集記事で、なんでウイスキーの話なんかしてるんだとお叱りを受けそうだが、編集部には都合に応じて耳が聞こえなくなるという特技がある。強行突破してさらにウイスキーの話を続ける。あのCMが成り立つのは、ウイスキーという商品が、飲んでみればまあ、それなりにおいしいからである。それなりにおいしいと思っているひとに、お好きでしょと囁けば、嫌いではないから好きなんだろうと自己暗示がかかり、めでたくウイスキー好きが一人誕生するというわけ。世の中のほとんどのひとが、ウイスキーなんか見たくもないと思っていたら、お好きでしょというようなアプローチはしないはずだ。きっと、青汁のCMみたいに、まずいって堂々と認めた上で、でもね、と訴えてくるんじゃないかな。
  紙数が足りなくなりそうだから、そろそろヘルメットの話をしなきゃいけない。ここまで長々とウイスキーについて書いたのは、ヘルメットという商品の特性、いや有体に言えば宿命ともいえる嫌われぶりを際立たせたかったからだ。ウイスキーと違って、ヘルメットはお好きなひとがほとんどいない。かぶれば暑いし、ムレるし、せっかく朝整えてきた髪型だって台無しになる。長くかぶっていれば臭くもなる。できれば避けて通りたいんだけど、万一、作業中に何かがあれば髪型が崩れるどころではない損害を受けるから、仕方なくかぶる。暑くても臭くても我慢する。形だって素材だって、素人目にはどれこれも似たように見えるから、購入するときの高揚感もほとんどない。販売していて言うのも何なのだが、本当にかわいそうな商材なのだ。
  ここにDICプラスチックというヘルメットメーカーがある。今回の特集の主人公だ。このメーカーの偉いところは、日本中からこんなに嫌われているヘルメットに、思いつくありとあらゆる工夫をこらし、何とか少しでも嫌われ度が低くなるように懸命に努力しているところ。例えば空気孔つきのヘルメット。ムレ感が和らいで、作業員も少しはラクになる。またはスモークバイザーを採用したり、スケルトン仕様にしてファッション性を高めてみたり。形だって単純な半円形ではなく、少しでもスマートに見えるように変化をつける。けなげに地道にコツコツとやっているうちにラインナップが膨れ上がり、楽しくないはずのヘルメットに、気が付けば選ぶ楽しみが出てきているから驚きだ。
  ヘルメットがお好きでしょ。そんな風にDICを紹介するつもりはサラサラないが、少なくとも、そんなに嫌わなくても大丈夫ですよくらいには言えると思う。まずい、でもね、というくらいの反撃態勢は整っている。ちょっと能書きが長すぎた。あとは、同社営業本部の畑野さんと、品質保証課の井田課長にDIC製品の良さについて、思う存分語ってもらおう。
 

ディックプラスチック
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衝撃吸収性試験。後頭部部分には平らなストライカーを落とす
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大きなシールドが付いたAA13タイプ
「当たり前かもしれませんが、最も力を入れているのは、安全性をいかに高めるかというところです。人の頭を守るものですから。我々は働く人の命を預かっているっていう使命感みたいなものが強くあります。そしてそこから生まれる責任感が自社商品に対する思い入れを強くしています。私たちの作ったものをかぶってくれればイザというときも安心ですよ。大怪我したり、場合によっては命を落としたりしなくて済みますよ。そう全国の現場に訴えて回りたいくらいです。でもね、まいど屋さんが言うようにみなさんなかなかヘルメットをかぶりたがらない。固くて暑苦しいですからね。だから少しでも快適に着用していただけるよう、こっちも必死で考えるんです。お医者さんが苦い薬に砂糖をまぶして出すようにね」。インタビューの間中、営業本部の畑野さんは何度も快適性について繰り返した。ヘルメットをかぶりたくない理由を一つひとつ根気よく取り除いてやれば、きっとたくさんのひとが抵抗なくヘルメットをかぶれるようになる。そうすれば現場はもっともっと安全になる。そう熱っぽく語り続けた。まるで編集部でパソコンを前に編集作業をしているときでも、ヘルメットをかぶるべきだとでも思っているみたいに。
  熱に浮かされたような快適性への情熱は、ときに我々が予想もしなかったカタチになって姿を現すこともある。例えば新商品の折り畳み式ヘルメット(型番:AA13)だ。「これはもともと、震災後に備蓄用に少しでもコンパクトなものが欲しいという需要が高まって企画したものです。だけど、防災用としてそのままロッカーにしまいこまれたんじゃ、つまらないですよね。ヘルメットだってかわいそう。やっぱり使ってもらわなきゃね。ならば防災用であってもしっかりと日常の現場で使えるものを作っちゃえって。そうして試行錯誤を重ねて開発したのがこれなんです」。畑野さんがそう言いながら手渡してくれたヘルメット(らしきもの)にはボタンが3つ付いている。平べったく、ぺしゃんこにつぶれている状態だが、内側から押し上げるとまるでロボットアニメの変身シーンのようにあっという間に立体のヘルメットが出現した。「現場で使うヘルメットなので、安全性はもちろんなんですが、開いたときにもヘルメットだと分かる形状にすることにもこだわりました。たたみ方をいろいろ試してみて・・・そうですねぇ、10パターンくらいは試作しましたよ」。
  折りたたみタイプだからといって安全性を犠牲にしているわけでもなさそうだ。当然、法律で定められた安全基準をクリアしているので、通常のヘルメットとして現場で使用しても何の問題もないという。「社内からも非常に厳しい要求が出ましてね。極端なことをいえば、折りたたまれた状態でも基準をクリアするくらいの意気込みで開発しました(笑)」。
  使い終われば、今度はボタンを使って折りたたむ。通常のタイプのヘルメット5~6個分のスペースに、これなら10個は収納でき、ほぼ4割の省スペースになる。また、携帯するにも楽なので、電車で現場に通うようなひとにとっても非常に便利。快適性を追求する範囲を着用時以外にも広げて考えれば、この商品もまたDICの情熱を色濃く反映しているといえそうだ。
  さてお次は、イチバンの売れ筋商品というAA11。この製品の特長は、全面に大きなシールドが付いていること。しかもこのシールド、使わない時は本体に収納できるというスグレモノだ。「シールドの面が広いので、口もとあたりまでカバーできます。たぶん業界で一番大きいんじゃないかな。それまでは、ヘルメットとメガネを併用している人が多かったんですが、メガネって持っていくのを忘れちゃうんですよね。それに、メガネと違って、目元だけじゃなく、広い面積を守ってくれますから、例えば林業をしている人が伐採したり草を刈ったりする際に、飛び散る木片から顔面を守ったりすることもできます」。
  また、AA11は、装着バンドの後頭部の部分が上下可動式になっているので、従来品よりも、より頭部へのフィット感がよくなっている。こんな細かで目立たないところにも、快適性に対するDICの執念が表れている。「機能もデザインも、これで完成、ということはないんです。常に改良、改良を積み重ねて、前年よりもいいものを作るようにしています」。
  DIDの快適性に対する様々な工夫は、この他にもまだまだたくさんあり、畑野さんが熱心に説明してくれたのだが、少し専門的でこのまま書きつづけてもレポートが単調になってしまうので、本文の後の商品紹介で、まとめて詳しく説明することにする。その代り、インタビューの後に見学させてくれた製造ラインの品質検査の様子について最後に紹介しておこう。
  工場を案内してくれたのは品質保証課の井田課長。長い髪を後ろで束ねた女性である。品質保証課はヘルメットの強度や衝撃吸収性などを測定して、安全性能がきちんと保たれているかをチェックする部門だ。「試験には、衝撃吸収性試験と、耐貫通性試験、通気孔のないものについては電気試験があります。ヘルメットはさまざまな条件下で使用されますので、一つのヘルメットを、50℃、-10℃、それから水に濡れた状態にして、チェックするんです。今日、お見せするのは、衝撃吸収性試験です」。
  衝撃吸収性試験とは、文字通り、与えられた衝撃をどれくらい緩和できるかをチェックするもの。頭頂部は、上からモノが落っこちてくることを想定して行い、前後左右は被っている人が転倒して地面などに頭を打ち付けることを想定して行われる。「上からモノが落ちてくる場合はRのきついものが落ちてくることを想定してカーブのついたストライカー(おもり)を使います。自分が転倒する場合は、打ち付ける場所が地面のような平らなところが多いですから、ストライカーもこのように水平なものを使います。では、転倒して後頭部を打ち付けることを想定して、5㎏のストライカーを1メートルのところから落としますね」。
  50℃に保たれたケースからヘルメットが取り出され、試験機にセットされる。「行きますよ」と井田課長が言ったとたん、ヘルメットの上に容赦なくストライカーが落とされる。鈍く低い音が辺りに響く。想像していた以上に、かなりの衝撃だ。モニターを見ると、その荷重は約600㎏を示している。「ヘルメットをかぶっていないときの衝撃は、この10倍だといわれています。厚生労働省の規格では、1,000kg未満であればOKなんですが、社内規定はさらに厳しくしています」。ちなみに落下物を想定した試験では、500kg未満の規格に対して、DIC製品は300kg前後になるように製品を作っているそう。
  DICの「安全第一」「快適性の追求」は決してお題目ではない。なにせ、井田課長の所属する品質管理部門は、一日に2回、製造ラインのチェックに出るというのだ。そんな厳しい社内基準をクリアして生まれ出たDIC製品の数々を以下に紹介する。どれもが水準以上の高い安全性をキープしながら、同時にガウディーのようにコツコツと、地道に快適性を高めてきた商品たちであることはこれまでレポートしてきたとおりである。鮮やかなDICカラーバリエも豊富なラインナップから、ぜひお気に入りを探し出してほしい。
 
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ロックを外してパタパタと折りたためばコンパクトになるAA11タイプ
 

    

性能、プロ仕様!収納、ハーフサイズ!コンパクトに折りたたんで携帯できるIZANO

備蓄性・携帯性にすぐれているから防災用としてまずはオススメ。注目ポイントは飛来落下物用、墜落時保護用のどちらもカバーする国家検定取得品だってこと。つまり、通常の現場作業にも使える新型防災用ヘルメット。カラーバリエはツートンカラータイプを含む全6種類。携帯に便利な収納袋付き。


独自設計の強力ベンチレーションシステムで通気性が抜群!帽体内のムレを防止する高性能通気孔付きのSYA-WV

めっちゃ強力な大型通気孔を搭載し、夏場の作業を快適にするヘルメット。E1ワンタッチアゴひもが標準装備で装着もラクラク。雨だれ防止溝も付いて、雨の日の作業も安全に。カラーは9色。