【進和化学工業】まいど屋もMに目覚める加虐的ラインナップimage_maidoya3
少し前のことになるが、進和科学から新しいカタログが届いて腰を抜かした。新商品がたくさん出ている。読者の皆さんに大きな声では言えないが、正直言うと少しブルーになる。楽屋話で恐縮だが、ヘルメットの商品登録は、膨大な関連商品をすべて調べた上で慎重に画面を作っていくから、編集部にとって結構大変なのだ。だが、それはまだいい。楽しみにしているたくさんのファンが待っていてくれると思えば、編集部員が何日か徹夜をするくらいはわけのないことだ。カタログをめくりながら顔面が蒼白になったのは、長年取り扱ってきた既存商品を確認していたときのことだ。何かがちょっとずつ違う。神経を集中してよく見ないとわからないが、型番が微妙に違っている。そしてヘルメットの裏側にある内装体が今までと違うことに気付く。頭がくらくらし、本当に、文字通り泣けてくる。
  何かの間違いじゃないの?折れてしまった心を引きずりながら気力を振り絞って担当者に問い合わせると、いともあっさりとそれを認めた。ああ、内装を変えたんですよ。全商品。フィット感がより高まるように、後部にスライド式のラチェットをつけたんです。長年のユーザーさんもきっと喜ぶと思いますよ。。。あとは彼が何を言ったのか、よく覚えていない。いつ電話を切ったのかさえ分からない。そうか、全てはお客さまのためなんですね。号泣。
  何度も楽屋話をして読者の皆さんには申し訳ないが、ここは日頃のお付き合いに免じて編集部のグチに付き合ってほしい。まいど屋が取り扱うアイテムは、そのすべてに商品IDが付いている。そして、そのIDをもとに、各商品を互いに関連させながら、お客さまがスムースに買い物できる画面を作っている。商品画面の「関連商品」欄には、その商品に取り付け可能なアイテムだけを並べてある。ところでヘルメットの仕様が少しでも変わってしまえば、それはもう別商品として新しい商品IDで登録し直す必要があるから、必然的にすべての関連登録を一からやり直す必要が出てくるのだ。これがどれほどの作業量か、皆さん、きっとわからないでしょう。だから何なのって言われたら、返す言葉もないのだけれど。
  その後、心の骨折を何とか癒し、必死の思いでまた以前と同じように買い物しやすい画面を一から作り上げた。その集大成が今回の特集記事ってわけ。作業中は何度もバカヤローって叫びそうになるほど張りつめていたけど、インタビューに出かけたときは再登録も一通り終わって安らかな気持ちになっていたので、ちゃんとまともなインタビューができたと思います。人の苦労も知らないで、なんて悪態もつかず、行儀よく。そう、まいど屋が大変な目にあったなんてことはどうでもいいこと。全てはお客さまのためなんですね。ここはひとつ、襟を正して、恨み言葉をぐっと飲み込んで、営業担当者、鈴木さんの話を傾聴しようじゃないですか!
 

進和化学工業
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本庄早稲田駅から30分の工場入口
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話を聞いた進和工業の若いもんたち
上越新幹線本状早稲田駅から車を走らせること30分。ようやくたどり着いた進和化学。迎えてくれたのは常務取締役の三村敏明さん。応接室に案内してくれるやいなや、「今日の取材は若いもんに任せますから」と姿を消す。代わって現れたのは営業担当、デザイナーの若いもん4人衆。営業担当の鈴木列さんが口火を切る。「商品登録がとか、IDがとかおっしゃいますけどね。当社のモットーはお客さま本位、お客さまのご要望を少しでも製品に反映することなんですよ。お客さまにとって良いと思えれば、これからだって何度でも改良しますから、覚悟しておいてくださいねっ(笑)」。
  インタビューが始まって、いきなり覚悟しろと言われてたじろいだ。鈴木さんのセリフの最後に(笑)を入れておいたのは、編集部のせめてもの強がりである。(笑)というよりも、(冷笑)の方がその時の実際の感覚には近いかもしれない。だが、お客さまのためだって言われたら、もちろんその通りですよねって相槌を打つしかない。これからだって何度でも?そんなに脅かさないでくださいよって口まで出かかったが、顔には出さずに礼儀正しくジェントルマンらしく、口元に笑みを浮かべて話の続きを待つことにする。
  「前置きはともかくとして、今日は、お客さまのご要望を随所に生かした当社イチオシの4つのモデルを知っていただきたくてここにいるんですから、心してよく聞いてくださいよ。まずは『SS-01』と『SS-02』についてです」。再び話し始めた鈴木さんに、「カタログに沿ってもっとゆっくり話してあげなきゃだめでしょ」と営業の紅一点、有我愛さんが口を挟んでくれる。うれしい気配りだ。が、まいど屋のためを思って今後の改良は差し控えるなんてことはついに言ってくれない。優しそうに見えて、やっぱりここは完全アウェイの敵地なのだ。誰もまいど屋のために商品開発を進めてはくれないのだ。まいど屋をいじめるために作られたとしか思えない商品の話が続く。「このシリーズには、業界初のブラインド式通気孔を搭載しました。ヘルメット側に縦、カバー側に横の格子状の通気孔を設けたことで、通気性をキープしながら降雨時には雨の浸入も防げるようになりました。どうです、新しい発想でしょ?」。
  確かに新しく画期的だ。大型の通気孔が付いているヘルメットは、ムレ感が大幅に軽減されて快適だが、雨の日は使いづらいという欠点があった。これなら雨が降っても安心して作業に専念できる。まいど屋のお客さまはきっと喜ぶだろう。だが、やはりというべきか、まいど屋を喜ばすようにはできていない。「『SS』 シリーズのもう一つのウリは、へルメットと通気孔カバーの色の組み合わせが169通りあることです」。鈴木さんがサディスティックにそう教えてくれる。
  ウソだと思う読者の方は、レポートを読んだ後で商品画面を確認してほしい。ヘルメットのカラーメニューを開くと、選択できるカラー名がはるか下まで果てしなく続く。あまりに色が多すぎて、横にスクロールバーを設置しなければならなかったほどだ。これを全部在庫管理しなきゃいけないなんて、正気の沙汰とは思えない。頭を抱えそうになったが、有我さんが優しく助け舟を出してくれる。「そんなに在庫をしなくてもいいんですよ。本体は13種類。ブラインドも13種類。これを組み合わせながら、169種類のバリエーションを作るんです」。ああ、やっぱり彼女はまいど屋の味方なんだ。お客さまだけではなく、まいど屋の事情だってちゃんと考えていてくれているんだ。アウェイだと思っていたけど、まいど屋のサポーターだってスタンドの端っこに少しはいることを知り、多少は自信を回復してインタビューを続ける。
  では、その13色のうち、売れ筋のカラーについては多めに在庫をしてみたいと申し出ると、ヘルメットをデザインした神宮航太さんが、白にライトブルーの組み合わせを推薦してくれた。だが、鈴木さんは白のヘルメットに白のカバーを配したベーシックな組み合わせが一番人気だという。そして有我さんは紫と黄色の組み合わせが魅力的だと主張する。結局その場にいた5人の意見はバラバラに分かれ、やはり全色平等に在庫を積み増すしかないという結論がまるで仕組まれていたかのように導かれ、最後に有我さんのトドメの一言でせっかく芽生えかけていた自信がお約束通り、彼らがきっと事前に用意していたに違いないシナリオ通りに砕け散った。「ちなみに『SS-01』と『SS-02』の機能は同じですが、『SS-02』は、多様化してきた会社のロゴやマークも問題なくプリントできるよう、正面のマーク加工スペースを広げているんです。『SS-02』も『SS-01』と同じように169色のカラーバリエーションがありますので、こっちについても同じように在庫の積み増しをする必要がありますよねっ(笑)」。最後の(笑)は、言うまでもなく、編集部の強がりである。
  さて、在庫の件は社に持ち帰って改めて検討するとひとまず逃げ、どうにか体勢を立て直してから次の新商品の話に移る。これもまたベンチレーション部分に特徴があり、どうやら進和の商品開発部には加虐的な嗜好があると確信せざるを得ないほどのカラーバリエーションを誇る『SS-23V』シリーズである。「スタイリッシュなデザインがいいでしょ?おまけに軽量。通気孔にはスライド式のベンチカバーを搭載して全天候型のヘルメットに仕上げました。例えば工期が迫ってくると、雨の日でも暑い日でも外で作業をしなくてはならないことってあるじゃないですか。通気孔を閉めれば、雨の浸入が防げるし、開ければ通気がよくなってムレを防ぎます」。そんな鈴木さんの説明が全く耳に入らない。視線は通気孔の上にかぶさっているスライド式のベンチカバーに釘付けになったままだ。このベンチカバーにもいろんなカラーバリエーションがあるんですかと半ばヤケ気味に尋ねると、鈴木さんは当然のように例のサディスティックな笑みを浮かべてこっくりとうなずく。有我さんが優しい声で励ましてくれる。「本体は13色ですが、ベンチカバーは4色だけなので、52色のカラーバリエーションになります。さっきよりだいぶ少ないでしょ」。確かにさっきより少ない。きっと在庫管理を担当するまいど屋物流センターのスタッフたちもガッツポーズで喜んでくれるだろう。
  そろそろ外の空気が吸いたくなってきた。これ以上商品説明を受け続けたら、まいど屋を今後も営業し続けていく最後の気力が失われてしまうかもしれない。そんなワケで(どんなワケだ?)、本日の大トリは『SS-22V S-22T-PRA』。鈴木さんの意気軒昂とした声がどこか遠くの方でこだましているが、もはや言葉は頭の中に像を結ばず、むなしくどこかへ消え去っていく。まるで駅のホームで目の前を見知らぬ列車が通り過ぎていくみたいに。「研磨や溶接作業のときに、目を保護するワイドなシールドと上方視界を遮らないためのクリアバイザーを搭載しています。使わないときはシールドをヘルメットに収納できますし、クリアバイザーは7色からお好きなカラーを選んでいただけるんです」。あとで取材用のテープを聞きなおしてみると、そんな話をしてくれているようだが、そのときはヘルメットのクリアバイザーに注意が奪われて上の空だったのだ。クリアバイザーは7色ある。ヘルメット本体が15色だから、カラーバリエーションは105色。有我さんが大丈夫ですよと元気づけてくれても、もう心には響かない。よくわかっていますよ。確かに進和化学はお客さまのことだけを真剣に考えて商品作りをしているのですね。そして、まいど屋が大変な目にあうことに深い喜びを感じているのですね。
  なんでも、今ではヘルメットを売る側にいる鈴木さん、数年前まではヘルメットをかぶって作業をする側だったという。それ故に、ヘルメットに対するこだわりは人一倍強く、実用性はもちろん、デザインにもとことんこだわる。そしてそのこだわりをまいど屋の事情など一切考慮せずに実現するのがデザイナーの神宮さん。有我さんは申し訳なさそうにまいど屋を気遣ってくれるが、最後はがんばりましょうねと言ってくれるだけで結局問題はそこに横たわったまま永遠に放置されて話が終わる。ことここに至ればまいど屋だって覚悟を決めざるを得ない。そう、全てはお客さまのため。もう泣き言は言わずにとことん進和の若いもん4人衆の挑戦につきあっていくしかないのである。とりとめもなくグチを書き連ねたようなレポートになってしまったが、まいど屋が決意を新たにしたってことだけは信じてほしい。以下、その証に進和イチオシの商品を改めて詳しく紹介する。
 
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原料からヘルメットへ。
 

    

ヘルメットをファッション感覚で着せ替える!通気孔のブラインドカバー色を選んで自分だけのオリジナルスタイルが作れちゃう次世代型ヘルメット

格子状の新通気孔搭載のSHINWAイチオシモデルは、169パターンのカラーバリエーションから好きな組み合わせを選択できる! 『SS-02』は『SS-01』に比べて、マーク加工領域を広げたセンターリブ強調スタイル。


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着脱式のクリアバイザーのカラーが選べて、ヘルメットとのコーディネートが楽しめる。安全性とファッション性を両立させた注目シリーズ。新登場のベンチレーションモデルの「SS-19V-T-PRA」が人気。