【中国産業】男前ですけど、何か?image_maidoya3
なんせ男前である。いや、男前っていうのは誰かがそう言っているわけではない。自分自身が、自分のことを男前だって宣言している。よほどの自信家か、キムタクのように誰もが異議を申し立てることができない場合にしか、そういうセリフはでてこないはずなのだが、皆さんはその稀有な例をまいど屋のカタログ立ち読みページで目撃することができる。これからレポートする中国産業のカタログ表紙のことだ。カタログのキャッチはさらにこう続く。And quality design without compromise。妥協を知らない洗練のデザインということだ。かようにこのブランドはデザイン主義を貫いている。そして確かに、カタログのページを開いてみる限り、彼らのコレクションからはスタイルを究めようとする強固な意思がにじみ出ているように思える。
  だがやはり、実物を見てみないことにはわからない。謳い文句は本当なのだろうか。彼らの意図は思惑通りに達成されているのだろうか。そしてそもそも、彼らが目指す男前というのは、一体何を指しているのだろうか。それを確認・検証するのが本レポートの目的だ。男前は本来、他人によってささやかれるべき語彙である。レポートを読んだ皆さんが、ああやっぱり中国産業は男前だねと思わず漏らすときにこそ、一番しっくりくるキーワードであるはずなのだ。中国産業は本当の本物か、あるいはただのナルシストか。これからそれを明らかにしよう。
 

中国産業
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男前カタログを手にする原専務と営業部の高須賀さん
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こだわりの変わり織り生地を使った7909(カラー:OD)
「男前ですか?そこまで深く考えたこともなかったな」。唐突な質問に、営業部の販売チームリーダー・専務取締役の原政達さんは、苦笑しながらこう答えた。「“男前、作業服”っていうキャッチコピーは、10年ぐらい前からずっとカタログで使っています。でも、当時の担当者はすでに退職してしまっていて、どういった経緯でこの文言を使うようになったんだか、私も覚えていないんです。ただ、今ではすっかり定着して、お客さまも“男前のカタログ”って呼んでいる。結局、わかりやすいから使っている。そんな感じです」。
  えー、そうなの?せっかく意気込んで取材にやってきたのに、なんだか出鼻をくじかれた感じ。とりあえず態勢を整え直し、気を取り直してしつこく食い下がってみることにする。「深くは考えてないにせよ、意識の底ではどこか、それが残っているようなことはないですか?かつて中国産業さんが目指していたであろう、その「男前」が商品開発の暗黙の前提になっているような。そして、そのスピリットは今なお息づいているんじゃないですか?」。
  焦りのあまり、取材相手から聞き出したかったセリフを自分で言ってしまった。何ということだ。これじゃ、取材じゃなくて、誘導尋問だ。でも、まあいい。男前はもはや単なる謳い文句に過ぎないのか。10年後の今現在のコレクションの中に、「どうだ、男前だろ」と胸を張って断言できる商品があるのかないのか。今回、わざわざ中国産業を取材する価値があるのかどうか。これからじっくりと話を聞いて判断することにする。「そうですね。自薦をベースにお客さまの人気を加味していえば、カジュアル系できちんと見える『6909』とか『7909』かな。それと、T/Cカジュアル系の走りとなった『5008』とか」。そうでしょ、そうでしょ。ちゃんと男前の商品はあるんでしょ。じゃ早速、その自称「男前」たちをここで紹介してもらおう。
  綿100%の国産生地を使った『6959』シリーズは、10年以上のロングセラー『6909』シリーズのリニューアル版。「昔から好評をいただいている『6909』のデザインはそのままに、ポケットを大きくし、ネームを新しくしました。『6909』は洗い加工で落ち感があるのに対し、この『6959』はワンウォッシュなので少しキレイめ。繰り返し着用いただくことで独特のムラ感が出て味わいを増していくウェアです」。
  そう、そうこなくっちゃ。実物を見せてもらうと、確かにきりっとした顔立ちに風合いのよさが相まって、独特の雰囲気を醸し出している。例えて言うなら、人情味のあるイケメンといったところか。さらに生地には、やわらかな着心地を叶えるソフト加工や、洗濯による縮みや型崩れを防ぐ防縮加工が。機能性についてもかなり工夫を凝らしたようで、ジャンパーひとつ見ても、ツッパリ感を解消する肩プリーツや肘タックが入って動きやすく、胸ポケットには携帯ホルダーやファスナーポケット、身頃には内ポケットも付いてなかなか意欲的。「『6909』と同じデザインにしたのは、幅広い年齢層の方に着ていただきたいから。最近のカジュアルワークは細身なので年配の方が嫌いますが、これなら着やすい」。
  一方、『7909』シリーズは、カジュアル系ながらデザイン的にはワークのド定番。それでも生地に風合いがあるので自然とカッコよく見えてしまう。「当社のカジュアルワークブランド『DOGMAN』で使うべきクラスの生地をあえて定番ユニフォームに使ったことで、かえって新鮮さが出ています。もう4年目になりますが、右肩上がりに伸びていまして、企業向けの納品モノとしても人気があるんですよ」。
  生地は国産綿100%の変わり織り。前述の『6959』同様、ソフト加工と防縮加工が施されている。カラーは当初4色だったが、キャメルとODの2色が追加され、現在6色。中でもアイボリーとムーングレーが人気で、この2色を軸に検討するお客さまが多いのだそうだ。
  だんだん調子が出てきたみたいだ。じゃ、次は、冒険して自信がついたという、ポリエステル100%のライダース系カジュアル『5008』シリーズ。綿にはない独特の光沢と美しい発色がウリのウェアだ。「6年目になるシリーズで、ほかの作業服に比べてもデザインはかなりとがっている。発売当初は、ポリエステルでこんなロックなウェアを作って大丈夫って心配されました。普通、こうしたカジュアル色の強いデザインは、綿を使うのが王道ですからね。でも、仕事着として使い勝手を良くすることを考えると、どうしてもポリエステルの特性を生かしたい思いが強かったんです。で、思い切って商品化したらすぐに人気に火が点いて、1年目は在庫切れ。お客さまにご迷惑をかけてしまいました」。
  生地は、発色性、耐洗濯性、形態安定性、制電性に優れた東レ製。ポリエステル100%でこれだけボリューム感のある生地はまずないという。「ディーテールにもこだわっています。長袖ジャンパーはフルジップのスタンドカラーで、肩プリーツ、肘タック、内ポケット、携帯電話ポケットを付けています。カーゴパンツは、マチなしのファスナーポケットにしてすっきりしたシルエットに。もちろん、モノを入れれば膨らんでしまいますけどね(笑)」。カラーは4色。一番人気はクロ、次がブラウンワインだそうだ。
  ここまでつらつらと商品を紹介してもらったが、総じて言えるのは、デザイン重視のブランド『DOGMAN』と違って、たとえカジュアル系でも機能性をしっかり確保した上でデザインしていること。加えて、生地、付属品ともに国産にこだわっていること。これが中国産業のワークウェアの特長のようだ。「特にファスナーなどの付属品は製品の信頼性に関わるので価格が高くても国産。ここは妥協しません。値段を落とすために海外製を使って不具合が起きると、お客さまが離れていってしまう。それがたまたまの1回だったとしてもね。それだけ信頼性は大切なんです」。
  取材を終えて確信した。モノづくりの姿勢は確かに男前。そして商品の顔つきもそれに負けず劣らず男前。だからカタログに大きく男前って書いてあっても、やっぱりそれは嘘ではなかったのだ。取材中、原さんは自分から男前だとはとうとう言わなかったので、中国産業が公式に男前を目指しているのかどうか、今でもよくわからない。でも、結局、それはどうでもいいことかもしれないです。中国産業が男前かどうかは、最終的にはこれを読んだ読者の皆さんが判断することだからね。そうでしょ。
 
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ポリエステル100%のライダース『5008』(カラー:ブラウンワイン)
 

    

あくまでシンプルに、さり気なく!グレードを感じさせる微起毛の国産生地を使用した綿100%、7909シリーズ

独特の風合いを持つ変わり織り生地を、あえて定番デザインに惜しげもなく使ったシリーズ。ハードワークに適した非常に丈夫な綿100%生地に、やわらかな着心地にするソフト加工と縮み・型崩れを防ぐ防縮加工を施し、高級感と扱いやすさをプラス。ジャンパーは肩プリーツ、肘タック、しっかり収納できる大きめの胸ポケット付き。


ソフトな着心地なのに、ハードワークにめっぽう強い!すました顔で、実力はAクラスの3508シリーズ

強くて丈夫。カッコよく見えて着心地はソフト。肩プリーツ・肘ダーツで突っ張りにくく動きやすい。そんないいコト尽くしで現場の男をサポートするシリーズ。耐摩耗性に優れたポリエステル85%。綿15%の交織ツイルは、やさしい肌ざわり、イージーケア性、制電性でも高ポイント。右はファスナー、左はフラップと2タイプの胸ポケットでキリッとカッコよく。