【作業服】制服なんて日本だけ?image_maidoya3
不況である。しかも今回はかなり長引くらしい。大変だ、大変だと日本中の会社が経費節減に努める中、なぜ、作業服を買わなければいけないのか。海外を見渡してみても、全員が同じユニフォームを着る現場はかなり少数派。大抵はジーンズにシャツなど、それぞれが思い思いの私服で仕事をする。各人の個性と創造性を重視するこの時代、ユニフォームなんて時代錯誤では?着古した私服を転用しちゃいけないの?毎シーズン作業服を新調するのは、もしかして、作業服業界の陰謀では?毎年2月14日にチョコレートを買わされている女性たちのように…。そんな疑念にとらわれながら、日本の作業服生産の牙城、岡山行きの新幹線に飛び乗った。

作業服
image_maidoya4
桑和専務 藤井さんと営業課長 山本さん
image_maidoya5
反論に力が入る桑和 山本さん
取材先は商品企画力でシェアを伸ばす桑和と、卓越したファッション性が話題のクロカメ被服。桑和からは代表取締役専務の藤井荘大さん、営業課長の山本雅彦さん、クロカメからは専務取締役の大崎愉一さんにお時間を頂き、インタビューはいつものように和やかに始まった。春夏ものの新商品のこと、商品開発の裏話など、親切、丁寧に説明が進んでいく。今回の取材目的からかけ離れた展開に内心焦りを感じ始め、途中で勇気を振り絞って方向転換を試みる。まずは軽いジャブで先制攻撃だ。「ところで、前々から疑問に思っていたんですが、なぜ、全員が同じ服を着る必要があるんでしょう?」
  「同じ服を身につけるのは、同じ会社の仲間としての一体感を生み出したり、仕事に対するモチベーションを高めるという理由があります。スポーツでもユニフォームを着ますよね。あれと同じです。仕事においてもチームワークは大切ですからね(桑和・藤井さん)」。
  「作業服というものは、絶対に必要なアイテム。何よりも、その人たちを識別させるアイコンの役割をもっている。例えば、警察や警備員などね。そして何より、裸で仕事をする訳にはいかないですからね(笑)。(クロカメ・大崎さん)」。
  ユニフォームを真っ向から否定する根本的な問いかけだが、アッサリかわされた。危うく納得してしまいそうになるのをこらえて質問を続ける。「では、作業服を着るメリットをもっと具体的に。」
  「何よりも仕事のための服なので、私服に比べて機能性が圧倒的に異なりますよ。帯電防止や低発塵性など、職場環境によって必須の機能もある。素材についても仕事内容に合わせ、綿100%でなければならないとか、汗を多くかくので吸汗速乾性がいいとか。ポケットの数や位置、収納性なども現場の作業を意識して作ってある。着用することで業務効率を図れることが、作業服のメリットではないでしょうか(桑和・山本さん)」。
  「作業服はあくまで実用服。同じ服と言っても、単純にアパレルと比較はできません。作業服は、汚れる・痛むということが前提につくられている。だから当然、価格も安くなければならない。その価格の安さが、着る人にとってはメリットでしょうね。(クロカメ・大崎さん)」。
  うーん。想定内の回答だったが、改めてお話を聞くとその通りかなと納得してしまう。気を取り直して別の視点から再度アタックを試みる。「衣替えは作業服業界の陰謀ですか?ワーカーを洗脳して、必要ない作業服を販売してない?ユダヤの秘密結社が裏で全世界を支配しているように(笑)」
  「衣替えは何も作業服に限ったことではなく、学校の制服などでも実施されています。それは制服文化が根付いた日本の文化。暦に区切りをつけ、新しい気持ちで仕事を始めれば、作業能率も上がるし、職場の規律も保たれます(桑和・山本さん)」。
  「でも、、夏冬2回の衣替えは多すぎますね。一年に1回なら妥協しましょう(笑)」。
  「確かにオールシーズン商品で年間通すこともできますが、ジメジメした夏場の暑い時期は、やっぱり夏物がいい。吸汗速乾など、さまざまな付加価値を開発しながら、実際にユーザーの支持を得てきた。夏場になれば、売上比率が圧倒的に夏物になることを見てもわかります。お客様に強制したわけではなく、お客様自身が良さを分かってくれて、購入してくれている(クロカメ・大崎さん)」。
  敗色が濃厚になってきた。何か突破口はないものか。「作業服って、今と昔で違いはあるんでしょうか?」。
  「素材が飛躍的に向上したと思いますよ。携帯安定加工を施したものや、今とても普及率が高いエコ素材を使用したもの、動きやすさを追求したストレッチ加工、水場での作業のことを考えた防水加工など、昔に比べると今の作業服の性能は凄いですよ。(クロカメ・大崎さん)」。
  「生産技術が向上したことで、より働く人の環境を考慮した商品づくりができています。例えば、金属部品が表に出ないように加工したもの。これは、荷物を運ぶ業者の方が、荷物を傷つけてしまうのを防ぐ配慮なんです。単なる大量生産から、よりシチュエーションを絞った服づくりをしています(桑和・山本さん)」。
  「すると、作業服は、これからまだまだ進化する?」
  「実は、今年の春夏モデルから、新たに取り組んでいる商品があるんです。それは、スポーツシーンで注目される機能性アンダーウェアをいちはやくワークシーンに取り入れたこと。体を動かすスポーツで注目されるならば、体を動かす仕事にも応用できる。働く人がより快適に、楽しく働ける環境はまだまだつくっていけますよ。(桑和・藤井さん)」。
  「デザインの幅が自然と制限される作業服でも、例えば、裏地の縫い糸1本の色使いについてもわかる人にはわかってもらえる。そんなコダワリをずっと追及してきた。ファッション性の追求は、まだまだ奥深いですね。『クロカメのワークウェアを着ると元気が出る』そう言ってくれるファンがいる限り、まだまだ作業着を進化させてみせますよ(クロカメ・大崎さん)」。
  インタビューはノックアウト負け。参りました。貴重なお時間を割いてお付き合いいただき、ありがとうございました。
 
image_maidoya6
インタビュアーを撃退するクロカメ専務 大崎さん
 

    

9113シリーズ(桑和)

肌触りがソフトで、耐久性もある裏綿素材使用。アイロンいらずのイージーケア性もグッド。裏綿素材の中では特に価格面を抑え、長く愛されている定番商品!


1311シリーズ(クロカメ)

ハードワークの定番素材・火や熱にも強い綿100%(日本製チノクロス生地)を採用。製品をシリコン洗い加工することで、ソフトな着心地と、アメリカンワークテイストを演出。ワークシーンはもちろん、カジュアルにも着用できるかっこよさがコンセプトの新提案スタイル。