建設中のマンションの下を通りかかる。ふと上を見上げると、色とりどりのトビが舞っている。青、赤、緑、白、茶。裾の広がったズボンが風にハタハタとなびき、まるで蝶のよう。そういえば、あのズボン、超超(チョウチョウ)って言うんだっけ。言い得て妙と一人納得。でも、あんな高いところで、あのズボン、危なくないのかなぁ。何かに引っ掛かって墜落でもしたら、名前が鳶なのに、シャレにもならない。そんな商品を製造しているメーカーに一言文句を言っとくべきだ。
鳶服
鳶服について丁寧に説明する関東鳶 浜辺さん
にこやかに応対する寅壱 芦原さん(左)。内心は?
取材に応じてくれたのは寅壱の営業課長・芦原さんと関東鳶の事業室次長・浜辺さん。今回の取材目的を事前に伝えたためか、やや警戒気味の様子。型どおりの社交辞令を済ませ、いざ、戦闘開始。戦いを有利に進めるため、最初にとっておきのカードを切る。「ところで、鳶ズボンは、どうしてあんなにダボダボなんですか?」
「あのたるみにはアンテナとしての役割をもたせているんです。突起物等の危険がないか確認したり、風向きを読みとる助けをするのが、あの拡がった裾なのです。例えるならば、昆虫の触角みたいなものですね(関東鳶:浜辺さん)」。
「スーパーロングと言われるシルエットを考えたのも、私たちが最初。若い人が働くことを考えると、昔の人と同じシルエットでは短かかったのです。あくまで、働く人の需要に応えた結果の形なんです(寅壱:芦原さん)」。
なるほど。高所で作業する鳶さん達はあのたるみを使って、足元の神経を研ぎ澄ましているようだ。では、独特のシルエットには意味があるとして、あのカラーはどうだろう。「色、派手じゃないですか?ガラ悪くない?」
「もともと、鳶装束にはあずき色・ベージュ・紺色しかなかったんです。それ以外の色を初めて手掛けたのが、私たち寅壱。その理由は、若い人たちが働くことを考えた結果なんです。(寅壱:芦原さん)」。
「最近はシックな色を好まれる方も増えてきました。住宅地での作業の際には、カラフルな服を禁止される会社もあります。やはり、ガラは悪く見えますよね(笑)。ただ、昔から『鳶装束』と呼ばれることもあり、他とは違う特別感やかっこよさが重視される風習があるんです。選択肢を増やすために、カラー展開も豊富なんです。(関東鳶:浜辺さん)」。
「見た目以外に、機能面でのメリットは?」
「スーパーロングだって、ただ身長に合わせただけではありません。ゆとりをもたせることで、動きやすさを追求しています。あとは、丈夫さの確保。体を守るために厚めの生地を使ったり、長持ちさせるために縫製をしっかりしています。機能にこだわることで、見た目もよくなっていったんです。(寅壱:芦原さん)」。
「身を守る機能を備えたアイテムもちゃんとあります。例えば『胴付きズボン』といって、腰を守るために太いベルトを付けたものとかね。分厚く・動きやすい生地を使用したりと、鳶装束はしっかりと職人のことを考えて作られているんですよ。(関東鳶:浜辺さん)」。
「そういえば、胴付きズボンは九州だけのローカルアイテムって聞いたけど、ホントですか?なんで九州男児は胴付きを好むんでしょう?」。
「確かに九州地区で売れ行きがいいのは確か。ただ、先ほど言ったように、このスタイルには独特の良さがあり、他地区でも徐々にファンを増やしていますよ。まいど屋さんでも九州以外から胴付きの注文がかなり入っているでしょう(関東鳶:浜辺さん)」。
そういえばそうだった。気を取り直して、失礼を承知で再反撃。「鳶服って、高くないですか?ぼってないですか?」
「ぼってないです(笑)。少なくともうちの鳶服は使用する生地、染色、縫製、全てにこだわり抜いて製品づくりをしている。例えば2530。生地の丈夫さ、しなやかさ、制電糸の使用など、価格以上の付加価値を付けている。職人さんもそのことはよくわかっているから、何度もリピートで購入してくれます。値段が高いだけなら、これほどのロングセラーにはならないでしょう(寅壱:芦原さん)」。
「作業服と違って、縫製のパターンが複雑というのはある。ヘリンボンや昼夜織など、職人さんが好む生地を使ったりすると、さらにコストもかかる。ただ、価格に敏感なお客様の層がかなりあることも確か。一定の品質をキープしながら、企業努力でできるだけ価格を抑えた商品を開発している(関東鳶:浜辺さん)」。
「これからもずっと、必要な服なんでしょうか?」
「なくなることはないと思っています。でも、シェア争いの中で特徴のない店は淘汰されていくかもしれない。売り場にも活気が求められるんですよ。カラー展開に加え、最近では柄物の服も増えてきました。仕事中だけでなく、売り場でいかに目立つかということも各社考えていると思いますね。(寅壱:芦原さん)」。
「私たちも、なくなりはしないと思っています。ただ、いつまでも同じ商品だと選ばれなくなる。作業着のよさに鳶装束の良さを取り入れて、進化させることが大切でしょうね。ファッションの流行に合わせてシルエットを細くしたり、異素材を組み合わせたりしながら『楽しいものをつくる』という気持ちは常に大切にしています(関東鳶:浜辺さん)」。
インタビューは予定時間を大幅に超えてようやく終了。数々の無礼な質問ににこやかに答えてくれた芦原さん、浜辺さん、どうもありがとうございました
「あのたるみにはアンテナとしての役割をもたせているんです。突起物等の危険がないか確認したり、風向きを読みとる助けをするのが、あの拡がった裾なのです。例えるならば、昆虫の触角みたいなものですね(関東鳶:浜辺さん)」。
「スーパーロングと言われるシルエットを考えたのも、私たちが最初。若い人が働くことを考えると、昔の人と同じシルエットでは短かかったのです。あくまで、働く人の需要に応えた結果の形なんです(寅壱:芦原さん)」。
なるほど。高所で作業する鳶さん達はあのたるみを使って、足元の神経を研ぎ澄ましているようだ。では、独特のシルエットには意味があるとして、あのカラーはどうだろう。「色、派手じゃないですか?ガラ悪くない?」
「もともと、鳶装束にはあずき色・ベージュ・紺色しかなかったんです。それ以外の色を初めて手掛けたのが、私たち寅壱。その理由は、若い人たちが働くことを考えた結果なんです。(寅壱:芦原さん)」。
「最近はシックな色を好まれる方も増えてきました。住宅地での作業の際には、カラフルな服を禁止される会社もあります。やはり、ガラは悪く見えますよね(笑)。ただ、昔から『鳶装束』と呼ばれることもあり、他とは違う特別感やかっこよさが重視される風習があるんです。選択肢を増やすために、カラー展開も豊富なんです。(関東鳶:浜辺さん)」。
「見た目以外に、機能面でのメリットは?」
「スーパーロングだって、ただ身長に合わせただけではありません。ゆとりをもたせることで、動きやすさを追求しています。あとは、丈夫さの確保。体を守るために厚めの生地を使ったり、長持ちさせるために縫製をしっかりしています。機能にこだわることで、見た目もよくなっていったんです。(寅壱:芦原さん)」。
「身を守る機能を備えたアイテムもちゃんとあります。例えば『胴付きズボン』といって、腰を守るために太いベルトを付けたものとかね。分厚く・動きやすい生地を使用したりと、鳶装束はしっかりと職人のことを考えて作られているんですよ。(関東鳶:浜辺さん)」。
「そういえば、胴付きズボンは九州だけのローカルアイテムって聞いたけど、ホントですか?なんで九州男児は胴付きを好むんでしょう?」。
「確かに九州地区で売れ行きがいいのは確か。ただ、先ほど言ったように、このスタイルには独特の良さがあり、他地区でも徐々にファンを増やしていますよ。まいど屋さんでも九州以外から胴付きの注文がかなり入っているでしょう(関東鳶:浜辺さん)」。
そういえばそうだった。気を取り直して、失礼を承知で再反撃。「鳶服って、高くないですか?ぼってないですか?」
「ぼってないです(笑)。少なくともうちの鳶服は使用する生地、染色、縫製、全てにこだわり抜いて製品づくりをしている。例えば2530。生地の丈夫さ、しなやかさ、制電糸の使用など、価格以上の付加価値を付けている。職人さんもそのことはよくわかっているから、何度もリピートで購入してくれます。値段が高いだけなら、これほどのロングセラーにはならないでしょう(寅壱:芦原さん)」。
「作業服と違って、縫製のパターンが複雑というのはある。ヘリンボンや昼夜織など、職人さんが好む生地を使ったりすると、さらにコストもかかる。ただ、価格に敏感なお客様の層がかなりあることも確か。一定の品質をキープしながら、企業努力でできるだけ価格を抑えた商品を開発している(関東鳶:浜辺さん)」。
「これからもずっと、必要な服なんでしょうか?」
「なくなることはないと思っています。でも、シェア争いの中で特徴のない店は淘汰されていくかもしれない。売り場にも活気が求められるんですよ。カラー展開に加え、最近では柄物の服も増えてきました。仕事中だけでなく、売り場でいかに目立つかということも各社考えていると思いますね。(寅壱:芦原さん)」。
「私たちも、なくなりはしないと思っています。ただ、いつまでも同じ商品だと選ばれなくなる。作業着のよさに鳶装束の良さを取り入れて、進化させることが大切でしょうね。ファッションの流行に合わせてシルエットを細くしたり、異素材を組み合わせたりしながら『楽しいものをつくる』という気持ちは常に大切にしています(関東鳶:浜辺さん)」。
インタビューは予定時間を大幅に超えてようやく終了。数々の無礼な質問ににこやかに答えてくれた芦原さん、浜辺さん、どうもありがとうございました
インタビュー予定時間を大幅に過ぎ、そろそろガマンも限界に
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4309シリーズ(寅壱) 今流行のソフト系トライプ素材をシックなカラーで展開。今シリーズから投入の三つ釦超超ロング、ヒヨクオープンには要注目。その三つ釦超超ロングは従来の超超ロングよりもズボンの幅をスリムにシェイプしたデザイン。合わせのトップスにはヒヨクオープンを。作業時に気になる釦の引っかかりを解消する新デザインで、快適な使用感が売りの一着だ。 |
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