【TS DESIGN(藤和)】艶めく「職人キラー」image_maidoya3
仕事に限らずプライベートでも作業服を愛用する。夏は空調、冬は電熱。足元はいつもハイスペックな安全スニーカー。そんなワークウェア・ホリックの皆さんなら一度は耳にしたことがあるだろう、「TSデザイン」の名を--。一番(TOP)洒落たもの(SHALETON)というぶっ飛んだネーミングだけでも、もう妖しいフェロモンがぷんぷん。で、福山市の展示場に行ってみるとワーキングを超越したハイ・コンセプトぶりに頭がぐわんぐわんする(実際、帰りのタクシーで酔った)。さらに実際のウェアとなると地球によく似た別の惑星から持ってきたのではないかと勘ぐりたくなるほど圧巻のクリエイティヴィティ。カッコいいワークウェアは数あれど、TSは「カッコよさ」の質が他のメーカーとまるで違うのだ。その求心力をひとことでいえば「蠱惑」。こんなやばいウェアを店頭に並べたら人心が掻き乱され社会騒擾につながるのではないか、少なくともティーンエージャーには規制が必要なのでは……。そんな心配が湧いてくるくらいだ。

TS DESIGN(藤和)
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ブランド戦略部の瀬尾さん
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裏地に注目!
●「わかりにくさ」の意味
 
  話を聞かせてくれたのはブランド戦略部の瀬尾さん。婦人服業界の出身とのことでひじょうに物腰は柔らか。ただでさえTSデザインの商品は独特なのに、瀬尾さんのしっとりした声を聞いていると何の取材をしているのかわからなくなってくる。ワーキングでもカジュアルでもなく、まるでデザイナーズブランドのショップで接客を受けているような感覚だ。では、さっそく秋冬コレクションの全体像から教えてもらおう。
 
  「今回のテーマは『More Freely』です。もっと自由に、新しく、ワーカーを別次元に連れて行くようなイメージ。既成概念にとらわれないというのは、個々のウェアだけでなくTSの商品展開にも言えることですね。上下ものや素材別に『☓☓シリーズ』とまとめて企画するのではなく、発売した商品の中に高く評価していただいたものがあれば、そこから派生させていろんなバリエーションを出していく。素材や機能を軸にした展開もあれば、デザイン展開、カラー展開と、アメーバが分裂するように有機的に広がっていきます。だから『わかりにくい』と言われたりもするんですが(笑)。今日はしっかり商品構成をつかんでいってください」
 
  たしかにTSデザインはわかりにくい。いやあえてわかりにくくしていると言っていいだろう。カタログもワークウェアの分類概念にとらわれず、ファッション雑誌のようにパラパラめくったり写真を眺めたりすることでTSの世界にどっぷり浸れるように作り込まれている。いっぽう静電素材やスーツ風作業服など、特定の機能を求める人には「別冊」として販促用パンフも用意されているから安心だ。
 
  「TSデザインはそもそも変化を嫌うワークウェアの世界に、一石を投じるために始まったブランドですから、カタログでもそういう自由なイメージを表現しています。来年でTSがスタートしてから15年、会社は60周年を迎えます。この展示スペースの什器や掲示物なんかも自社制作なんですが、ひとつひとつの商品だけでなく見せ方や展開の仕方でも、TSデザインの世界観を見せていきたいですね」
 
  ●「裏」に注目!
 
  というわけで、まずは今回の目玉商品「エコハイブリッドダブルクロスジャケット(型番4616)」から紹介してもらおう。軽さや着心地の良さを追求した「無重力ゾーン」シリーズの最新作だ。定番感のあるデザインのジャケットに、同素材のメンズカーゴパンツ(型番4614)、レディースカーゴパンツ(型番46141)が対応する「上下もの」だ。ワークウェアの異端児・TSの新商品にしてはちょっと大人しすぎるような……、と思っていたら、瀬尾さんはいきなりウェアの裏を見せてきた。アピールポイントはまさかの裏地である!
 
  「パッと見てもわかりにくいですけど、これは素材と機能をとことん追究した商品です。裏地に使っているのは今回のために開発したTSエコハイブリッドダブルクロスという生地。これは再生ポリエステル糸を綿糸でカバーした二重構造の糸で織ったもので、表面は綿でコーティングされているから肌触りがいい。それでいて綿のウェアのようにシワだらけにならず、洗濯しても乾きやすい。しかも耐久性はポリエステル生地と同じくらいなので、傷みを気にせず使っていただけます」
 
  よくある「内側綿」の作業着に対して、このウェアの裏地は綿とポリエステルの「いいところどり」をしたハイテク生地なのだ。腕や太ももといった部分の肌当たりがソフトなので長時間でもストレスを感じにくい。さらに上着を脱いだりハンガーに吊るしたりしたときなど、安っぽいポリ生地が見えるとちょっとテンションが下がるが、この生地の風合いなら「上質なウェアを着ている」という満足感も味わえるだろう。
 
  いっぽう表面はどうなのか。こちらにも裏地に負けないこだわりがあった。
 
  「表面は裏地と違ってポリエステル生地なんですが、光沢の少ないフルダル糸を使いました。これによってギラついた感じを抑えて、ナイロンのようなマットな雰囲気を実現しています。そして、色もオーソドックスなベージュやネイビーに加えて、少しひねったものを入れました。黒は少し光沢のあるガンメタルで、緑は目新しさのあるセージグリーン。イマドキのオシャレ作業着でありながら上品な印象があるので、ユニフォームとして納入するケースも多いですね」
 
  ジャケットの右胸には止水ファスナー、パンツには独自のクイックアシストポケットを片側だけに配置するなど、ファッション性だけでなく、ツールの出し入れのしやすさや作業性まで考え抜かれたデザインとなっている。なにより特筆すべきは機能満載の最新ワークウェアでありながらどこかシックな印象があることだろう。TSらしい技巧的な逸品だ。
 
  ●スーツ作業服が秋冬対応
 
  続いて瀬尾さんがイチ押しするのは、スーツ風作業服「ステルス」シリーズの新作。秋冬用に防寒性をもたせたTS TEXアクティブウォームステルスメンズジャケット(型番9236)と対応するメンズパンツ(型番9232)に加えて、女性専用のレディースジャケット(型番92361)とレディースパンツ(型番92321)までそろえた盤石の布陣だ。
 
  ワーキングでは画期的とはいうものの、紳士服やカジュアル業界では、立体裁断のジャケットやストレッチパンツなど「動けるフォーマルウェア」はすでにたくさんある。それらとTSの「ステルス」はどんな違いがあるのだろう。
 
  「これは作業服ですから、スーツのように見えても耐久性や収納力といった面で他のワークウェアに劣らないように設計されています。それでいて『ステルス』の名前の通り、作業服であることがわからないデザイン性がウリです。ジャケットにはブルゾンのような両脇ポケットはもちろん、左ソデにはペンをさせるマルチポケットまで付いている。つまり、作業着と同じようにツールを出し入れできるのにポケットは見えないわけです。さらにカフスボタンはなくフロントボタンも外側に出ない。余計な突起物もないのでスタイリッシュでかつ作業もしやすい。スーツの代わりではなく、あらゆる仕事シーンで使えるワークウェアなんです」
 
  なるほど、スーツ風作業服というと、ハイソなオフィスビルの清掃員など限られた業種のものだと思っていたけれど、もっと柔軟に考えればさまざまな活用法が出てきそうだ。現に瀬尾さんは、このステルスを着て営業もするし出張までしている。このように作業メインの仕事以外でも葬儀スタッフ、生保レディーなどが導入するケースが出てきているという。
 
  「しかも新作の秋冬モデルは、高性能中綿を入れたり、裏地に機能性フィルムを貼ることで防寒面もバッチリです。シルエットはスッキリしているのに保温力があって、冷たい風が生地を通り抜けて入ってくることもない。しかも透湿性もあるから汗や蒸気をちょうどよく逃してくれる。表面は耐久撥水の加工がされており、多少の雨や雪でも心配無用です」
 
  スーツ嫌いの編集長も、これならワードローブに加えておきたい気がしてきた。
 
  ●鳶に3ピース!
 
  最後は、TSデザイン独自の鳶スタイル「ニッカーズ」の最新モデルを語ってもらおう。瀬尾さんが紹介するのは「TS X TECメンズニッカーズワークジャケット(型番5536)」と対応するカーゴパンツ(型番5534)、そしてベスト(型番5538)。展示場に足を踏み入れたときから、ひときわオシャレにジャケットを着こなしているマネキンがいるとおもっていたのだが、なんとこれが鳶職向けに提案したスタイルなのだという。鳶職人に3ピースを提案するなんて一体どんな思考回路をしているのだろう? と常識的には感じる。ところが、これが文句なしにカッコいいのだ。
 
  「この3ピースのテーマは『和魂洋才』。日本らしい良さを忘れずに西洋の技術を取り入れようという意味ですね。3ピースのジャケットというと欧米風な着こなしの代表ですけど、ニッカーズらしいデザインや素材、カラーリングで『和』を表現しています。鳶はもちろん庭師や石工にもオススメです。3ピースなんて面倒だと思うかもしれませんが、体温調節もしやすいしベストのぶんポケットの数も増えるわけで、意外と便利なんですよ。本格的に冬になる前なら、ベストとパンツだけで着こなしても様になりますよ」
 
  生地の「TSクロステックシャンブレー」は、綿100%の天然繊維とストレッチ性のあるポリエステルの二層構造糸を使ったもの。じゅうぶんなストレッチ性と耐久性がありながら、ナチュラルな風合いと和を感じさせる朴訥な存在感を兼ね備えている。カラー展開も「アイイロ」「トビイロ」「スミイロ」と、昔ながらの伝統色を意識した。素材からデザイン・カラー・ネーミングまで、どこをとっても“職人殺し”な一着だ。
 
  ワークとカジュアルの既成概念を超越した商品構成に、独自路線を突き進む新作ウェア--。ファッション界における破壊的イノベーションは、ここTSデザインで勃発するに違いない。
 
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「ステルス」対応のシャツ
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「3ピース鳶服」の前で

    

やはりTSは“わかってる”! 綿の肌触りがうれしい「エコハイブリッド」シリーズ

裏地に独自開発の生地「TSハイブリッドダブルクロス」を使用したストレスフリーな作業服。ポリエステルを綿でカバーした二重構造の糸で織っており、肌触りは綿そのもの。表面は光沢の少ないフルダル糸を使うことでポリエステル感を抑え、シックな印象に。パンツは女性用の型番が用意されているのでユニフォームとしてもオススメ。


「無重力」の名はダテじゃない! ラクなのにビシッと決まるライダース作業服

TSの人気シリーズ「無重力ゾーン」の耐久性をアップさせた新定番モデル。着心地も軽やかなライダース風ジャケットだが、肩や肘、膝には補強が施されておりハードワークでも安心。さりげない反射プリントや反射パーツもデザイン上のアクセントとして効いている。SS、Sサイズはレディースシルエット。