【シンメン】めざせ「脱・低価格」!image_maidoya3
JR福山駅で福塩線府中行きの列車に乗り込むときはいつもドキドキする。まず、座れるか。ローカル線なのに意外と乗客が多くてたまに学生で混み合うから「座席でコーヒーでも」と思ったら失敗することがある。次に、降りられるか。一部のワンマンカーは降車口が1カ所だからうっかりしていると降車できずパニックになる。三つ目が、乗り越さないか。終点の府中で降りるなら寝てもいいけれど、途中駅の万能倉や戸出、新市あたりはのんびり本でも読んでたらあっという間に通り過ぎてしまう。そんなわけで、編集長は、ひとつ前の駅を通過したらドアの前でスタンバイすることにしている。このレポートの取材日は、車掌付きの列車に乗ってコーヒーを味わい、上戸手通過のタイミングで席を立って、ぶじ新市に降り立つことができた。パーフェクト! 目的のシンメン本社は駅からワークウェアストリート(編集長命名)に出てすぐである。

シンメン
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営業部の髙橋さん
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伸長率140%のバウンディデニム
●「いいもの路線」への挑戦
 
  シンメンは現在、公式サイトやSNSなどのネット発信体制を準備中。そんなわけで、ウェブ上で最新情報が読めるのはここだけ。本誌「月刊まいど屋」には2018の鳶服特集以来の登場である。本社2階の応接室に通されると、企画・生産管理部の平さんと営業部の髙橋さんが迎えてくれた。
 
  「今年も外出自粛が続きましたけれど、展示会は一部で開催できたし、訪問できなくても営業もなんとか継続できて、まあよかったですね。関東で春夏の動きがやや低調だったものの、それ以外は順調で手応えを感じています。当社は長年、ショップ販売向けの低価格なウェアを作るメーカーというイメージだったのですが、今その路線から抜け出そうと藻掻いているところです。これからはただ安いだけじゃなくて『それなりの値段のするいいもの』『高いけどカッコいいウェア』を売っていく。うちはオンライン体制やスタッフのITリテラシーなんかも遅れているので、コロナ禍をきっかけに変わっていかなきゃいけない。そんな危機感もあります」(平さん)
 
  過去からの脱却を図るシンメン。そのための突破口となるブランドが数年前にスタートした「SLASH」と「STX」だ。
 
  「SLASHはイマドキのカッコいいワークウェアを目指す当社の主力ラインナップ。STXはワーキングの進化系というか、高級な素材を使ったりすることでハイスペックで高機能なものを追求する路線です。どちらも目標は、本当にいいものを高めの値段で売ること。もう安いから売れるって時代は終わりましたから。他メーカーの後塵を拝する状況ですけど、カッコよさとパーツや素材へのこだわりをアピールして、なんとか検討してもらえるレベルに持っていきたいですね」(同)
 
  秋冬コレクションでは、通常アイテムに加えて、電熱ウェアの「ヒートベスト」を積極展開。バッテリーとつないだ電熱シートをウェアの首の後に差し込む構造で、なんと今シーズンに展開する防寒アウターの9割が取付可能となっている。電熱ウェアを手掛けるメーカーの中でも抜きん出た力の入れようだ。
 
  「ヒーターウェアは今回で2年目。最大65℃の暖かさがウリです。他社モデルも研究したんですけど発熱体の温度は低いし、背中にシートを付けると体に密着せずジンワリとしか暖かくならない。じゃあウチはもっと高温の発熱体が首元に当たるようにしよう、と。もちろん低温やけどを防ぐ安全装置なども備えた上でね。北海道や東北など寒冷地のユーザーさんも多いのですが『暖かくない』って言われたことはありません。いま使っている電熱ウェアが物足りない人はぜひチェックしてみてください!」(髙橋さん)
 
  ●デニムに殴り込み
 
  では、シンメンの2021年の秋冬モデルを見ていこう。髙橋さんが最初に取り出したのは、新作の「バウンディストレッチデニムジャケット(型番02140)」と対応する「デニムカーゴ(型番02142)」の上下。もはやマストアイテムとなった感のあるストレッチデニムの作業着だが、独特のシワ加工が特徴的なアイテムだ。
 
  「じつはこの商品が当社のデニム作業着の第一号です。デニムやらないの?の声は数年前からあって、シンメンだからどうしても『安いの出してよ』といった話になってしまう。それじゃあダメだ、と考えて企画会議を重ねてきました。さっきも言ったように、もう安いから売れる時代じゃない。カッコよくて他社と差別化できた商品じゃないと出してもしょうがないんです。そして満を持して発表したのがこのバウンディデニム。伸長率140%という別格のストレッチ性能に、胸ポケットのイエローアクセント、個性的なシワ加工で存在感を出し、目の肥えたユーザーにも認めてもらえるレベルに達しました。デニム作業服ってみんなもうおなかいっぱいだと思うんですけど、これならカッコいいデニムを求めている人や少し変わったものを探している人にとっての『もうひとつの選択肢』になれるかな、と」(平さん)
 
  言いたいことはよくわかる。ストレッチデニムの作業着はたしかにカッコいいけれど、さすがに飽和状態なのである。メジャーなブランドの人気モデルが「正解」であることは間違いないけれど、他人とカブる可能性が高いし、買い物としても無難すぎておもしろくない。もとは個性を主張するためのアイテムだったはずが、最近ではありふれてしまって逆に埋没してしまう。その結果「デニムは好きだけど人気のアレはもう……」という話になってくる。そこで、「オルタナティブな選択肢」として後発組にもチャンスが生まれてくる。ただ、並大抵の商品では長年デニム作業着を見てきたユーザーを唸らせることはできないわけだが。
 
  「バウンディストレッチデニム」は、いいもの路線を掲げるシンメンの未来を左右する戦略的な商品なのだ。
 
  ●地味にスゴイ!
 
  さて、続いて髙橋さんが紹介するのは「THE VALUE バウンディストレッチジャケット(型番02102)」と対応する「ストレッチカーゴ(型番02102)」。先ほどのデニムと同じように、伸縮率の高いストレッチ生地を使ったオーソドックスなカジュアル作業着だ。全体のテイストとしては珍しさはないけれど、素材が綿96%というのは珍しい。
 
  「さっきのデニムは個人買いをターゲットにした商品でしたが、こちらはショップ販売もユニフォーム納入も幅広く狙ったアイテムです。見た目はよくあるイマドキの細身な作業服ですけど、130%伸びるストレッチ生地の動きやすさと綿の着心地の良さは極上です。TC(ポリエステルと綿の混紡素材)+PU(ポリウレタン)ならともかく、綿+PUでこんなに伸びる作業着はほかにないんじゃないか、と。ストレッチによる作業性に加えて、綿生地のソフトな印象はユニフォームにちょうどいいし、肌触りもいいから長時間着ていてもストレスにならない。派手さはないものの、動きやすさや着心地といったニーズの高い部分にしっかり応えました。試着すれば間違いなくインパクトを感じてもらえる商品です」(髙橋さん)
 
  同じく綿素材のアイテムでは「ガーメントダイストレッチジャケット(型番02940)」と「ストレッチカーゴ(型番02942)」の上下も3年目を迎えた。こちらは、ウェアの縫製が出来上がってから染色した「製品染め」のアイテム。製造コストが上がってしまうためワークウェアではまず採用しない加工だが、「色ムラなど、ひとつひとつ違った染まり方を楽しめる」と従来の作業着にはなかった新たな価値観を打ち出している。
 
  「シンメンはずっと低価格路線でやってきましたから、いきなりファンを作るのは難しい。ただそれでも『なんかおもしろい』と言ってもらえる商品を出せればと思っています。デザイン的なひねりを加えるのは苦労するし、素材やパーツ、加工に凝ると製造コストはかさむ。しかし、仮にデザイン性ではかなわなくても『モノとしてのよさ』を求めているお客さんもいます。そこにしっかり訴求できる商品を出していきたいですね」(平さん)
 
  カッコいいワークウェアをお探しの皆さん、今後はシンメンにもご注目を!
 
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「製品染め」のアイテムも
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平さん(右)と髙橋さん

    

体も心も弾むよバウンディ♪ ストレッチ性バツグンの綿作業着「02100」シリーズ

伸縮率130%超の異次元ストレッチ素材で作った定番感のある作業服。ストレッチのワークウェアは数あれど、綿96%でこの伸びは尋常じゃない。綿の肌触りとナチュラルな印象はそのままに、ストレスゼロの動きやすさを実現。シャープさを追求したデザインに左右非対称のポケットなど、細部までよく作り込まれている。


綿の素材感がハートに迫る! 誠実な印象もうれしい「02900」シリーズ

やや細身でスタイリッシュな雰囲気が魅力のカジュアル風ワークウェア。綿62%のストレッチ生地を立体裁断することで、スリムなシルエットと動きやすさを両立した。ユニフォーム採用もできる定番感がありながら、ポケットのイエローラインなどアクセントも効いている。