【自重堂】「フィーバーギア」爆誕!image_maidoya3
10月末のある日、川口市内の「まいど屋」にその男は現れた。美容院でセットしたような長髪に白い歯、ピカピカの革靴、ヨーロピアンな3ピースでキメたその姿は、とても作業着メーカーの社員とは思えない。さわやかな挨拶とともに事務所に入ってきたかと思うとギョーカイ人を思わせる軽妙なトークで場を和ませ、あっという間にスタッフの中に溶け込んでしまう。一見、ただ駄弁っているだけに見えるが、要所要所で在庫や出荷の状況や、新商品の特色や売り、他社の動向などをしっかりレクチャーし、さりげなく自社をPRするのはさすがとしか言いようがない。そう、本誌でおなじみの自重堂の営業マン・K氏である。長身を折り曲げて椅子に腰を下ろすと、立て板に水のトークが始まった。「おお、いよいよ防寒特集ですか? ハハハ、任せてくださいって、今日もとっておきの新商品を持ってきましたから。今シーズンはとにかくすごい、売れすぎてヤバい、もうフィーバー、フィーバー、フィーバーですよ!」

自重堂
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編集部も驚愕した前後独立スイッチ
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モバイルバッテリー用の電熱パッド
●発熱体は9個!
 
  さっそくテーブルに新商品を並べ始めるK氏。なんの変哲もないダウンベストに、赤いシート状のものが3点。これが新ブランドの電熱ウェア「フィーバーギア」とのこと。今やどこでも見かけるたぐいのものだが、意外にも自重堂として初のヒーター内蔵の商品だ。それにしても、電熱線を内蔵するベスト(型番:FG10000)に、3種類の発熱パッド(型番:FG10010・FG10020・FG10030)というのは、ちょっと訳がわからない。この業界最大手はいったい何がしたいんだ?
 
  「はい、今日はもうこれだけ覚えてくれればいいですからね。よーく、よーく聞いてくださいよ。まず、赤いパッドのことは忘れて、こっちのダウンベストだけ見てください。これは電熱線を内蔵したベストで、電源は普通のモバイルバッテリー。バッテリーを収納するポケットの中にUSBケーブルがあって、電源をオンにすると15秒で温まる。温度は最大55℃で他社製品に比べると高いけれど、使い捨てカイロが60℃くらいだから低温やけどの心配はありません。まあ、ここまでは普通ですよね。で、ここからが重要なんですが……」
 
  と、いきなり小学校の先生のような口ぶりになったK氏が続けて語った言葉は、衝撃的なものだった。メーカーが満を持して打ち出す新商品、といってもほとんどは予想の範疇に収まるものだ。しかし、この商品は……。読者にもこの衝撃を味わってもらうために、できるだけK氏の口調をそのままに再現してみよう。
 
  「発熱体は9個です。前の脇ポケットに2つ、両肩に2つ、腰から背中にかけて4つ、さらに首の後ろに1つ。これだけあれば前も後ろも上も下も暖かい、と。単純な話です。他社のものは発熱体が背中だけでお腹が冷えるとかいった声があるけれど、これなら大丈夫。ここまでは理解してもらえましたね。じゃあ、この胸のスイッチを見てください。ここで電源のオンオフ・強弱の調節をするわけですが『フロント』『バック』のスイッチが左右に並んでいるのわかります?」
 
  おお、なるほど、作業中に暑くなってきたときは背中のヒーターだけオフにしたり、バイクに乗ったりして冷たい風に当たるときは前だけオンにしたり……、と編集長がリアクションの言葉を口にする。と、待ってましたとばかりにK氏のマシンガントークが始まった!
 
  ●「前後ボタン」の意味は?
 
  「そう思うじゃないっすか! これちょっと操作してみてくださいよ。そうそう、長押しでオンにすると赤ランプがつくでしょ。それが前後とも『強』でいちばん暖かい状態っすわ。で、スイッチをカチッと短く押すたびに白ランプの『中』、青ランプの『低』へと切り替わる。で、また長押しでオフです。そうそう、そんなふうにスイッチの片方だけが光ってるのが、前だけオンの状態ですね。じゃあこれはどうですか? ほら、わかります? この色、これどうですか? これこれこれこれこれ、これですよ、これがすごい。これがヤバい、ヤバすぎる!」
 
  左胸のスイッチは赤と青の組み合わせで光っていた。
 
  「わかりましたか? 前後のスイッチは完全に独立してるんですよ。だから『前だけオン』『後ろだけオン』だけじゃなくて、『フロント高温&バック低温』『フロント低温&バック中温』といった細かい調節ができる。寒い朝なんかに、左右のスイッチを同時に長押しすれば15秒で全身ポカポカになるし、電車の中とかで暑くなってきたらバックを低温にして、でも前は高温のままで、かじかんだ手をポケットに入れて温めるとかね。電熱ウェアって『作業中は暑すぎるよ』っていう人いるんですが、これならいくらでも調節が利くでしょ?」
 
  さすがに「これはヤベェ……」と言わざるを得ない。バイク通勤の人は前を高温にすることでお腹の冷えを防げるし、移動中や作業時では細かい温度調節はひじょうにうれしい。野外で弁当を食べるときは高温にすれば寒さに震えなくて済む。ベスト型だから上からアウターも着込める。携帯用のヤッケやウインドブレーカーと組み合わせれば強風や軽い雨もへっちゃらだ。もちろん、屋外作業だけじゃなくて家の中でも使える。そでが邪魔にならないから料理や勉強にもぴったりだし、デスクワークで下半身が冷えるときは「電熱膝掛け」として使ってもいい。モバイルバッテリーを持ち歩くわけだから外出時のスマホのバッテリー切れにも対応できて、そのほか真冬のレジャーやアウトドアにも……と書いていくとキリがないのでやめよう。
 
  「こんなに高機能なのに、値段は8000円以下ですよ。しかもスマホの充電なんかにも使えるモバイルバッテリー付きで。まさにハイスペック&ローコスト。この価格帯を実現するために『洗濯機OK』は諦めましたけど。ワンシーズン着たら優しく手洗いしてくださいね」
 
  ●なんでも電熱化!
 
  「じゃあ次はこっちの話をしましょう」と、K氏は3つの赤いパッドを並べる。これが発熱体でありウェアに取り付けて使うのはわかる。が、なぜ先程の超ハイスペックなベストがあるのに、わざわざこんなどこかでみたような商品を出してくるのか? そしてなぜ3種類もあるのか?
 
  「まず言っておきたいのは、この『フィーバーギア 電熱パッド』はさっきのベストとはまったく別物だということです。いったんさっきの話は忘れて聞いてください。これは見ての通りウェアに取り付けるため電熱パッドですが、最大の特徴はどんな服にも付けられること。面ファスナー(マジックテープ)のシールをパッドとウェアに貼り付けることで、背中に固定できます。自重堂のフィーバーギア対応の商品じゃないとダメとか、そういうのじゃない。つまり、いつも着ている服が10秒で電熱ウェアになるんです! もちろん作業服でもいいし、背広やコートでもいい。レディースウェアはもちろん、パッドが収まりさえすれば子供服でもエプロンでもいい」
 
  聞いた瞬間から「どの服を電熱ウェア化しよう?」と想像が膨らんでくる。面ファスナーのシールは10個入りなので、複数の上着に貼っておいて電熱パッドを共用できる。仕事着・普段着・お出かけ着、と中にシールを貼って「対応ウェア化」しておけば、どんなシチュエーションでもあったか天国だ!
 
  ああ、そういやなんで3種類なんですか?
 
  「単純な話で、3タイプの電源に合わせて用意したからです。モバイルバッテリー対応モデル、空調服バッテリー対応モデル、そしてファン付きウェアでよく使われている京セラ製バッテリーに対応したモデル。この3つがあればほとんどのユーザーはカバーできるかな、と。すでに空調服をお持ちの職人さんは、夏にお使いのバッテリーをそのまま使えます。空調服の大容量バッテリーの場合、高温で5時間、低温で20時間ぐらい稼働するので電池切れの心配もありません。いっぽうFG10020は温度調整のリモコン付きで、よく市販されているモバイルバッテリーを使って稼働時間は4〜7時間程度。こちらは屋外作業というより、朝晩の冷える時間帯、バスや電車を待っているときなんかにオンするようなイメージです。ビジネスパーソンや主婦、学生など一般向けを狙っています。薄着で暖かく通勤できて、上着を脱ぎ着したり持ち歩いたりする必要もない。こりゃあラクっすよォ〜」
 
  でたぞ、ワーキングの機能を一般向けに勧める戦略が。現場の熱中症対策だった空調服が今や夏の快適グッズになってしまったように、電熱ウェアもあと1、2年もすると冬の屋外作業ギアから「最新のカジュアル防寒」になっていくのだろう。そんなトレンドの最前線に立ちたいあなたは、ぜひ自重堂のフィーバーギアを!
 
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面ファスナーでなんでも電熱ウェアに!
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新作アウターは遊び心たっぷり

    

愛用ウェアが電熱服になる! 取り付け式の「フィーバーギア」発熱パッド

新登場「フィーバーギア」の電熱パッド3タイプ。付属の面ファスナー粘着シールを貼り付けることで、背中に取り付け可能に。どんな服でも電熱ウェアにでき、しかも複数のウェアでパッドを使い回しできる。空調服の大容量バッテリーをはじめ、パッドは電源別に3タイプを用意。モバイルバッテリー版のみ温度調整用のコントローラー付き。


この“抜け感”がちょうどいい! 3素材を使ったカジュアル防寒「58180」

コーデュロイ・デニム・高密度タフタの3素材を組み合わせたカジュアルテイストな防寒ベスト。肩のコーデュロイで耐久性と高級感を両立。胸のデニムはオリジナルプリントでデザイン性を高めた。さらにアクセントに背中のワンポイント。胸ポケットは測量野帳が収納可能と、見た目はカジュアルでも中身はしっかりワーキング。