【ジーベック】「新しい正統」へimage_maidoya3
久しぶりの福山は静かだった。福山城は去年からずっと工事中で「令和の大普請」と書かれたシートに覆われている。駅前では行政によるPCR検査のテントが非常時ムードを放つ。つまり街のシンボルである城も見えず、県外からの観光客もいないわけだが、駅前はじわじわと活気を取り戻しつつあるように見える。飲食店はコロナ前のようなオープンな雰囲気で営業しており、商店街や百貨店「天満屋」では地元の人々がショッピングを楽しんでいた。来月になれば名物のバラが咲き乱れ、瀬戸内の穏やかな陽気もあいまって最高の季節を迎えるだろう。鞆の浦にもまた行きたいなぁ、尾道まで足を伸ばすのもいいかも……。そんなことを考えながら駅前通りを進んでいくと、見覚えのある「備後名物 鯛の浜焼」の看板が現れた。この魚屋の手前がジーベック本社である。

ジーベック
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意欲作のテーパードジャケット
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Tシャツにもちゃんとペン差しが
●新生ブランドがスタート!
 
  展示室に入るやいなや「今日は新しいブランドの話をさせてください」と切り出したのは、営業部の稲葉さん。ジーベックといえば社名を冠した正統派のユニフォームと、ワイルド系のカジュアル作業着「現場服」が有名だ。今日もそんな「定番の二路線」の話を聞けるものと思いこんでいた編集部は、のっけから予想を裏切られた。
 
  「新ブランドは『CROSS ZONE(クロスゾーン)』といいます。正確にいうとこのブランド名自体は以前からあったのですが、ほとんど新商品を出していなかった。そこで、新たなコンセプトで、2021年の秋冬コレクションから新生CROSS ZONEとしてスタートさせたわけです。ブランド名がある程度の知名度を持っているという長所を生かしつつ、まったく新しいことをやっていこう、と」
 
  しかし、前述したようにジーベックには定番の二路線が先行している。納入向けの正統派ウェアとショップ売りのカジュアル作業着の両面で、しっかり顧客をつかんでいるわけだが、これ以上、どんな展開があるというのだろう?
 
  「新生CROSS ZONEのコンセプトは、スポーツ&アウトドア&カジュアルです。つまり、作業着としての見た目がどうか、といった話よりも素材の機能性や着こなしスタイルといったことにこだわった路線ですね。その点で先行する二つの路線と差別化していこうと思っています。商品展開も上下ものにこだわらず、ポロシャツやコンプレッションウェア、それに合わせやすいようなスポーティーな安全靴や雨具といった具合に、CROSS ZONEならではの世界を広げていきます」
 
  「たとえばこんな感じですね」と見せてくれたのは、新作の「6110ポロシャツ」。ヒマラヤやモンベルといったお店で売られていそうなスポーツカジュアルなポロだった。なんというか、全体的にツルンとしたルックスで、いろいろ付いているのが普通のワークウェアの世界では、すごく異色なウェアである。しかし、よく見ると左胸以外にもポケットやペン差しがある。ちゃんとした作業着なのだ。それでいて現場服のようなゴツさもないから、レジャーや旅行でも普通に使える。
 
  ●「ワーキングTシャツ」登場
 
  このように普段着としても使えるCROSS ZONEだが、やはりジーベックの強みといえば品質、つまり仕事現場でガシガシ使える堅牢さだろう。ワークウェアとしては、いったいどんな分野での活用を考えているのか。
 
  「これは『現場服』との対比で考えているんですけど、あちらが“外”ならこちらは“内”かな、と。現場服は文字通り建設現場をはじめ屋外で着るウェアなのに対して、CROSS ZONEは工場や物流業界で採用されるようなイメージです。フルハーネス対応だったりする現場服よりもっと汎用性が高い作業着をさまざまな業界に提案していく。デザインもぐっと若者向けにしてあるので、女性が増えている物流施設なんかにおすすめしたいですね」
 
  と、稲葉さんが取り出したのは新作の「6660半袖Tシャツ」。どこからどう見ても流行りの「ヘビーウェイトTシャツ」である。一枚で着ても肌着っぽさが出ないことで人気の厚手&オーバーサイズなTシャツだが、これが“正統派メーカー”なジーベックの新商品であると思うと頭が混乱してくる。
 
  「ファッションとしてのヘビーウェイトTシャツなら綿でいいんですけど、こちらはワークウェアなので、外側=綿・内側=ポリエステルの特殊編みで作りました。これによって、見た目はコットンなのに接触冷感かつ吸汗速乾といった機能性をもたせています。洗濯してもすぐ乾くしシワにもなりにくい。圧着フレーム付きの左胸のポケットはデザイン上のアクセントで、さらに左袖にペン差しもちゃんと付けています」
 
  考えてみればワーキング系のポロシャツはあるのにTシャツはない。理由は、見た目の問題はもちろん、それ以上に収納が皆無であることだろう。Tシャツはボールペンひとつ持ち歩けないのだ。胸ポケット付きのTシャツもたまにはあるけれど、モノはほとんど入らない。だがどうだ、この「6660半袖Tシャツ」は。見た目はカジュアルでありながら家着っぽさはなく、ペン差しと胸ポケットがあるから文具くらいは携帯できる。ヘビーウェイトTシャツとは、いいところに目をつけたものだ。
 
  ●「作業着スーツ」にあらず
 
  続いて稲葉さんが「CROSS ZONE新作の目玉商品」と紹介するのは、長袖ブルゾンを筆頭とする「2514シリーズ」。先ほどのTシャツとはうってかわって、こちらは「上下もの」である。ブルゾンに対応のカーゴパンツという定番の流れに安心していると、続々と意外なものが出てきた。あ、ジョガーパンツか、流行ってるもんね。おお、ハーフパンツも出したのかー。おや? 上着にブルゾン以外の別タイプがあるぞ……。こっ、これは……これはぁああ!?
 
  「落ち着いて聞いてくださいね。2514シリーズは、パンツが3タイプ(カーゴ・ジョガー・ハーフ)。そして上着は『ブルゾン』と『テーラードジャケット』の2タイプ展開なんです。他のメーカーではこの手の商品を“作業着になるスーツ”として売り出しているところが多いんですけど、当社では、あくまで作業着ジャケットの1タイプと位置づけています。つまりこれは“スーツ型の作業着”であって、他社のように作業着をスーツに寄せるのではなく、スーツを作業着に寄せたわけですね。ほら、だからポケットを隠したりしていないでしょ? 左袖にはペン差しだけじゃなくて、堂々と反射テープまでつけてますよ!」
 
  「作業着スーツ」ではなく「スーツ作業着」である、と。まるで禅問答のようなやりとりになってしまった。正直いって頭の整理はつかないものの、感覚的にはわかる気もする。つまりこういうことだ。従来の上下もの作業着は、「上」がブルゾンやシャツ、対応する「下」がカーゴパンツやスラックスという商品構成だった。で、たとえば、同じ会社でも道具をたくさん使う現場職はブルゾン&カーゴパンツで、事務職はシャツ&スラックスといったケースがあったわけだ。さらに現代では、作業着のスタイルが広がり、まず「下」が多様化した。今やジョガーやハーフパンツも珍しくない。ならば「上」もブルゾンやシャツだけでなく、さまざまなタイプを加えていっていいのではないか--。2514シリーズの企画者が言いたいことは、きっとこういうことなんだと思う。
 
  ブルゾンとテーラードは同シリーズの兄弟なので差別はしない。ただフロントがファスナーではなくボタンで、首元が立ち襟ではなく開襟タイプになって、それにともなって全体的なデザイン調整を加えただけだ、と。このシンプルかつ深遠な思想に編集長は一瞬めまいを覚えた。ワークウェアの世界は、私たちが考えているよりはるかに広いらしい。
 
  「今年はこのCROSS ZONEを認知させる一年にしたいですね。いい意味で変わったといってもらえるように」
 
  新世界をめざして、ジーベックの航海は続く。
 
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パンツはさらにスポーツ感あり
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CROSS ZONEをよろしく!

    

夏は涼しく、動きやすく! 作業性ピカイチの2WAYストレッチ「2514シリーズ」

縦横に伸びる2WAYストレッチ素材を使った上下もの作業服。ジャケットはパンチング加工で通気性よし。さらに接触冷感の生地が快適性をアップさせる。上下ともペン差しや反射テープを備えており、見た目によらず機能はしっかりワーキング。サイズ展開はSSからなので男女兼用ユニフォームとしてもおすすめ。


このヒンヤリ感が癖になる! 通気性と冷感を両立させた「6110シリーズ」

スポーティーなルックスが魅力のワーキングポロシャツ。生地の表側をナイロン、裏側をポリエステルの二層構造にすることで、高レベルの通気性と接触冷感を実現。シャープな印象の左胸ポケットはファスナー付きのため落とし物の心配もなし。脇下に反射テープ、左袖にはペン差し付きで機能面もバッチリ。