【TS DESIGN】15年目の再始動!image_maidoya3
TS DESIGNである。TS DESIGNである。ああ、なんてスッキリした書き出しだろう? あんまり気持ちよくて、つい2回も書いてしまった。じゃあ、最後にもう一度だけ……、TS DESIGNである。そう「藤和が展開する人気ブランド」という枕詞はもう要らないのだ。なぜならこの4月をもって社名が「TS DESIGN」に変わったから。福山市卸町の本社には取引先から贈られた花が並び、TSの新ロゴがあちこちで踊っている。「まいど屋さん、ようこそ! 新しい名刺をお渡ししますね」と颯爽と現れたのはブランド戦略部の瀬尾さん。今日もジャケットからパンツ、シャツ、靴に至るまで、バッチリTSコーディネートだ。では、誘われるままにリボーンしたTS DESIGNの世界に踏み出していこう。

TS DESIGN
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「無重力ゾーン」がさらに涼しく
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ナッパ服を想起させるニッカーズの新作
●「シャレトン」を超えて
 
  まずは何より「TS DESIGN」として改めてスタートラインに立ったきっかけから教えてもらおう。
 
  「やっぱりタイミングですね。藤和は今年、60周年を迎えました。さらにブランドとしてのTS DESIGNが始まって今年で15年目です。ここでキリよく心機一転、新たなスタートを切ろう、と。あと、これは創業者の想いでもあるんですけど、世界中のワーカーに当社の商品の魅力を伝えたいと考えたとき、やはりTSという名前で打ち出していくのが一番ですよね。あ、そうそう、これに関連してロゴもちょっとだけ変えたんです。お気づきでしょうか?」
 
  ほとんどの人は、前とまったくおなじに見えるだろうが、編集部はすぐに気づいた。従来までロゴに添えられていた言葉「TOP SHALETON」の文字がない。「シャレとんなぁー、いちばんやなぁー」と言われる作業着を提案したいとの発想から生まれた超絶インパクトのフレーズが……。
 
  「よく気づきましたね。『トップシャレトン』って個性的で私も好きだったんですけど、どうしても伝わる人が限られるというか、西日本の人はニヤッとしてくれる一方で、東日本の人は『なにそれ』って感じになってしまうんですよ。それ以上に、海外の人が見たらまったく謎のフレーズになってしまうわけで(笑)、まあ国内外にファンを作り、世界に羽ばたいていくことを見据えた当社のグローバル戦略と考えてもらえれば、と。ついでに登録商標のRマークも取っちゃいました。これからはシンプルに『TS DESIGN』で行きます!」
 
  なんだかブランドの成長を感じさせるやりとりだ。あのフェイスブックも、2004年のスタート時は「The Facebook」だったのが「ない方がクール」とのアドバイスにより「Facebook」になったと言われている。もう「藤和の人気ブランド」という前置きも要らなければ「TOP SHALETON」というコンセプトを掲げる必要もない。TS DESIGNはTS DESIGNなのだ。
 
  ●革新の遺伝子
 
  TS DESIGNのブランド展開はだいたいわかった。では、これからTSの商品はどのように変わっていくのだろうか?
 
  「まずは、今回の春夏コレクションのコンセプトでもある『One and Only』--。これを追究していきたいですね。日本語で言えば『唯一無二』です。昔ながらの作業着のイメージはもちろん、最近のカジュアル作業着の概念にも囚われず、幅広い視野と豊かな発想でウェアを提案していきます。こんな作業服があってもいい、こんな着こなしもあるし、ワークウェアひとつでこんなに働きやすくなる、というのを発信していきます」
 
  ここで瀬尾さんが何度も繰り返すフレーズが「画一的な世界からの脱出」である。そもそも15年前、スタート時のTS DESIGNは「下着ブランド」だった。当時、スポーツ愛好者のあいだで人気になりつつあったコンプレッションウェアをワーキング仕様にアレンジし、作業着ユーザーに提案したのだ。それが今や、コンプレッションは下着ではなく、季節によっては作業パンツに合わせるトップスとなっている。そう「コンプレッションウェアはインナーである」という概念を打ち破ったのだ。
 
  「15年前、作業着といえば布帛のブルゾンにカーゴパンツといった具合でめちゃくちゃ画一的でした。だから、うちはあえてインナーで新たな提案をしていったわけです。それから街でも着られるようなカジュアルワークウェアが普及したのもあって、だいぶ変化があったとはいうものの、まだ足りない。作業着の世界ってまだまだ画一的だと思うんです。今あるウェアが本当に動きやすくて機能的なのか、本当にすべてのワーカーに合うものを提供できているのだろうか、と」
 
  「かつて当社がコンプレッションウェアをワーキング用インナーとして発売したとき、市場は動きやすくて快適なトップス、あるいはアウターとして受け入れました。この商品がヒットしたこともあって、今や仕事服としてコンプレッションを着るのは完全に市民権を得ています。つまり、作業着の世界に革新が起きた。既成概念が覆されたわけです。作業着がカジュアルになった、とかそんなレベルじゃなくて、もっと世界をガラリと変えるような視野の広い提案をたくさんして、ひとりひとりの仕事にマッチするものを作る。これがTSの使命です」
 
  画一的な作業着の世界を革新する--。TSのミッションは不変どころか、さらに先鋭化している。
 
  ●令和のナッパ服?
 
  では、そんな「新生TS DESIGN」をもの語る商品を見ていこう。
 
  ひとつ目は、軽さと快適さを重視した「無重力ゾーン」の新作、ライダージャケット(型番:84506)とカーゴパンツ(型番:84504)だ。ともに「TS4Dナイロンドッツ」という新素材を使っており、かつてない通気性を誇る。その名の通りパンチング加工のような細かい孔が並んでいるが、これらは後から開けたのではなくナイロン生地の特殊な織り方で実現したというから驚きだ。
 
  「薄くて軽いのがこのシリーズの特長なんですけど、今回の売りは通気性です。通気性のある生地というより、通気孔つきの生地といったほうがいいですね。織り方で孔を作ると普通は強度が落ちてすぐダメになるんですが、丈夫なナイロン糸を使うことで作業着としてじゅうぶんな耐久性を持たせています。この織りによってポリウレタンを入れずにストレッチ性を持たせることができました。さらに肩・肘・腰には二重生地の補強もあるので、ライトな見た目に反してかなり長持ちするウェアです」
 
  続いて登場したのは、鳶職人をターゲットにした「ニッカーズ」の新作、ロングスリーブシャツジャケット(型番:55306)、カーゴパンツ(型番:55304)の上下だ。ポリエステルに綿や麻を混ぜ込んだ生地「TS X TECライトクロス」は、落ち着いた“和”の味わいがある。が、それ以上に印象的なのはシャツの形状だ。こういうのどこかで見たことがある……、と考えて思い出した。軍や国鉄で使われていた昭和の作業着「ナッパ服」だ。
 
  「おもしろいでしょ? 和のテイストにナチュラルな風合いがある一方で、ストレッチ性や吸汗速乾というテクノロジーもある。肌当たりのいいドライ感は麻に負う部分が大きいです。ニッカーズでおなじみのアイイロ・トビイロ・スミイロというカラーもまた素材が変わったことでだいぶ印象が違います。フロントはファスナーではなくボタン留めで、ゆったりしているのでウェア内によく風が通る。涼しい開襟はループを留めれば立ち襟にもできます。このスタイルはただ懐かしいからやってみたわけじゃなくて、機能面でも合理的なんです」
 
  このような発想を得るために、若手社員のファッションもヒントにしているという。
 
  「新しく入ってきた子が、社割で買ったTSの服をどんなふうに着こなすか見ているんです。ある日、斬新でイケてる上下の組み合わせをしている新人がいて、『そのパンツどこのやつ?』と聞いたら、TS以前から作っている藤和の作業着パンツでした。カタログの最後の方に載っている商品です。そんな古いパンツと新商品の上着を合わせるんだ、しかもこんなにカッコいいのか、と。いやー、やられましたね。僕もまだまだ視野が狭いなって」
 
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「ステルス」夏モデルがリニューアル
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「これからも革新を」と瀬尾さん

    

注目度バツグンの夏ライダース! TS4Dストレッチ「ナイロンドッツ」シリーズ

薄くて軽い「無重力ゾーン」の上下もの作業服。上下ともストレッチ性のある素材を使っており、メッシュ状の「ナイロンドッツ」の通気性はピカイチ。ライダース風デザインが目を引くジャケットは腰袋などと干渉しにくいダブルジップ仕様。肩・肘・腰には二重生地の補強が施されており耐久性も文句なし。


革新の中でこそ輝く伝統! 「TS X TECライトクロス」シリーズ

新世代の鳶のためのウェアを提案する「ニッカーズ」の最新モデル。懐かしの「ナッパ服」を思わせるジャケットは、ポリエステルに綿と麻を加えることで、日本らしい風合いと深みのある色合いを実現。さらに吸汗速乾とストレッチ性も文句なし。フロントはジップではなくボタン留めなので風もよく通る。