【寅壱】リミテッドで行こう!image_maidoya3
出生数が初の80万人割れとなった2022年の日本。隣の韓国でも「出生率0.78」の衝撃的な数値が話題になったが、同じく台湾でも過去最低の出生数14万人割れという“事件”が起きていた。もちろん新型コロナの影響が大きいものの、台湾の場合はもうひとつ大きな「産まない理由」があったとのこと。「22年の干支」である。あちらでは寅年生まれの子供は性格が凶暴になると信じられており--って、そのままやん! と書きながら思わずツッコミそうになってしまった。うーん……、トラってそんなダメかな? いやカッコいいよねトラ、トラ、トラ……TORA、ほら寅壱! と、つい彼の地に作業服を勧めたくなってしまうのは、まいど屋だけではないはずだ。

寅壱
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寅壱名物のミニ日本庭園
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新作の涼感デニム「8880」
●活路としての限定品
 
  取材に応じてくれたのは、寅壱・企画開発部の内藤さん。テーブルの上に新作ウェアを並べながら、慎重に言葉を選びつつ今回の春夏コレクションについて語り始める。
 
  「2023年春夏のテーマですか? うーん……これ言い方むずかしいんですけど、あまりないんですよ。ワークウェアの世界では、ちょうどデニムのブームが落ち着いたところで、みんな次の何かを求めている。当社でもシーズンごとにいろいろ新たな企画を出しているものの、まだ『これだ!』って感じにはなっていないというか、正直いって、まだ手探りのような状態です」
 
  その表情からは、企画マンとしての苦悩の跡がうかがえる。しかし、全体的なテーマがないからといって、個々のアイテムに特徴がないわけではない。今シーズンも“寅壱らしさ”のあふれる新作がずらり並んだ。
 
  「その模索というか、寅壱の独自性ってなんだ? といった試行錯誤の中で見いだした方向性が、限定アイテムです。今回の春夏コレクションは4割がリミテッド。つまり、今回限りの販売で、次のシーズンには入手できない商品ですね。やはり限定のほうが思い切ったデザインができるので、売り場にも活気が出る。同時に、寅壱は変わったものを出してるなぁというイメージづくりにもなるわけです」
 
  作業服やユニフォームのビジネスモデルとは、ひとつの型番を何年もかけて売っていくことだった。しかし、現在では一般カジュアル衣料と同じように、時勢に即応した企画が求められる。店頭販売のウェイトが高い会社では特にそうだ。もはや寅壱は、季節ごとに新作を出して売り切る一般アパレル企業と捉えたほうがいいのかもしれない。
 
  ●涼感追究のデニム
 
  限定商品の割合が高まると、逆説的に「普通のアイテム」の存在が際立ってくる。というわけで、限定品の話に入る前に新作のデニム作業着「8880シリーズ」をチェックしておこう。こちらは来年以降も買えるのでユニフォーム採用もOK。カジュアルかつ定番感もある上下作業着だ。
 
  「この8880シリーズは、とにかく涼感を求めたウェアです。ヒンヤリとした肌触りの接触冷感の生地が、内部の熱やムレをすぐに排出してくれます。同時に汗もよく吸うので着心地も快適。もちろんストレッチ素材なので動きやすく、ラグランスリーブ仕様で腕も動かしやすい。あと、デニムだけだと普通すぎるので、シルバーにサンドベージュの2色を加えて、インディゴ以外のカラーも楽しめるようにしました」
 
  手に取ってまず感じたのは、薄さだ。手触りはまるで肌着のようにしなやかで超軽量。ちょっと心配になるくらいの薄さだが、遠ざけて見るとちゃんとデニムらしいゴツさがある。一見すると「暑くないの?」と感じるかもしれないけれど、着用すると涼しくてラク&快適、そしてもちろん丈夫という不思議なウェアである。
 
  「デザイン的におもしろいのは、リブ素材の立ち襟と袖口の半フライス仕様ですね。対応する下もカーゴパンツに加えてジョガーを用意しているので、首元や袖・裾を絞ったシャープなスタイルが楽しめる。一方でシルエットは最近のトレンドに合わせて、ややゆったりさせてあります。年代や体形を選ばないのもポイントです」
 
  ●ハイテク系も華やかに
 
  一方、もうひとつの新作上下に「9224シリーズ」がある。こちらは先程のデニムとうってかわって、素材もデザインも“ハイテク感”がバリバリの一品。しかし、単なるスポカジ・アウトドア風ではなく、独特のひねりを加えているのが寅壱らしい。新作の中でも突出してユニークな印象だ。
 
  「これは『化繊タイプの上下作業着がほしい』との声に応じて企画しました。薄くて軽くて手入れもラクなものを、といったニーズですね。せっかくだから機能性は最高クラスにしようということで、テクノロジーをたくさん盛り込んでいます。まず上下左右に伸びる高いストレッチ性能をポリウレタン無しで実現しました。その上で、汗のベタつきがなくなるように、吸汗速乾の生地を点接触させるようにしています。汗をかいても肌に貼り付かずサラッとした着心地で、背中にはベンチレーションがあるので激しい運動をしたときのムレもどんどん逃がす。アウトドアやスポーツ感のある見た目を裏切らない高機能ウェアです」
 
  ハイテク系でありながらユニフォーム的な定番感も--と、まとめようとしたタイミングで、さらなる「ひねり」を発見した。ド派手な色展開「マスタードカラー」に、個性的なパンツ展開「ハイブリッドジョガー」だ。
 
  「黄色系のマスタードは、売り場で目立つことを狙って加えました。定番色だと大人しくなってしまうので、ひとつは他社のやらないカラーを入れよう、と。もちろん現場でも目を引くので、華やかなウェアを求める職人さんにもオススメです。ポケット位置はフルハーネス対応なので、高所作業でも使っていただけます。そして上に対応するパンツは、ぜひ足さばきのいいハイブリッドジョガーで。こちらはヒザ下がニットに切り替わった特殊なジョガーパンツで、動きやすさ抜群です」
 
  ●注力の「ロゴガラ」
 
  では、いよいよ限定商品を紹介してもらおう。内藤さんのイチオシは「1211シリーズ」。上下ものではなく下だけの「パンツ企画」と呼ばれる商品展開だ。近年、夏のトップスにコンプレッションウェアや空調服を着るパターンが増えており、下半身だけのアイテムを求める声も多いという。
 
  「これはまさに空調服に合わせるのにちょうどいいパンツですね。おなじみのジョガーパンツに加えて、ハーフパンツも用意しました。短パンは作業用としてどうか、といった声はあるけれど、ごぞんじの通り最近の夏はものすごい暑さなので……。このパンツは一見するとシンプルな商品に見えますが、生地は吸水速乾かつ点接触で、汗のベタつきを軽減してくれます。もちろんストレッチ仕様で、しかも立体裁断なので作業性がすごくいい。カーゴポケットはフラップ付きで、右前にはモバイル用ポケットもあるので、スマホやタバコの持ち歩きにも困りません」
 
  さらに、今回は空調服ウェアも限定品となっている。新作の「1078シリーズ」は半袖とベストの2タイプ。こちらは複雑なガラが特徴的だ。
 
  「せっかくの限定品なのでインパクトのあるアイテムを作ろう、と。さっきのパンツは大きなロゴが印象的でしたが、こちらはロゴにガラをプラスして特徴を出しています。スカイレーダーと呼ばれるガラを黒配色でまとめてあり、とくにアップルグリーンはかなり目立つ。空調服は似たような感じになりがちですけど、今回はおもしろいアイテムになったと思います」
 
  デニムや化繊系で定番を押さえつつ、インパクト大の限定商品で勝負を--。これこそ寅壱の“勝利の方程式”だ。
 
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ド派手なロゴが“寅壱らしさ”
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デザイナーの内藤さん

    

コイツが夏を支配する! 超絶クールな冷感デニム「8880シリーズ」

熱やムレをすばやく逃がす“夏仕様”なストレッチデニムの上下作業服。ヒンヤリした接触冷感の素材は、清涼感があって肌触りもよし。吸水性も高いので、汗をかいてもサラサラ着心地をキープする。パンツは「カーゴ」「カーゴジョガー」の2タイプ。シルバーやサンドベージュなどインディゴ以外の色もそそる。


どハマリ必至の4Dストレッチ! ムレ知らずの涼感ウェア「9224シリーズ」

ポリウレタン無しで高いストレッチ性を実現したポリエステル系の上下作業着。吸汗速乾の生地を点接触仕様にすることで汗のベタつきを軽減。さらに背中のベンチレーションが熱気やムレを外部に逃がす。パンツは「カーゴテーパード」に加えて、ヒザ下がニットになった「ハイブリッドジョガー」を用意。