【自重堂】制服屋の本懐image_maidoya3
毎度おなじみ自重堂。でも、トップバッターというのはちょっと珍しい。例年ならファン付きウェア特集の2件目だったり、秋冬特集レポートの3つ目あたりに登場してもらっているわけだが、今回は晴れて1番手である。その心は--。と訝しみながら商談スペースで待っていると、営業担当のK氏が商品の入った段ボール箱を抱えて現れた。「ああ、どうも」。新しい話題など何事もないような素っ気なさに対し、こちらは「今回は春夏特集のトップということで……」と先手を打つ。K氏はまたしても「まあね」と、はぐらかすような態度だ。思わず声に力がこもる。「全国のワーカーが期待しているんですよ、トップメーカー自重堂の新商品を」。生返事しつつ、ゆっくりと席につくK氏。その瞳がギラリと輝く瞬間を、編集長は見逃さなかった。

自重堂
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環境配慮ウェア「Z-DRAGON GREEN」
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裏綿&製品制電をアピール
●ファッションとファンクション
 
  「まあ、まいど屋さんもご存じでしょうけど、財布のヒモは硬いですよ。物価高で給与は上がらず、また円安が追い打ちをかけそうで。お金が使える人でも『今はやめておこう』というか、そんな空気ですよね」
 
  たしかに今の状況は、小売業には逆風だ。とくにアパレル業は石油などの原材料費の高騰の他に、海外生産による為替の影響も受けてしまう。しかも、暖冬で冬物が売れない、春物シーズンがあっという間に終わってしまう、といった気候変動による不都合も大きい。ということは、やはりユニフォーム業界も……。
 
  「いや、だからこそ制服や作業服なんですよ」
 
  「えっ?」
 
  「消費が落ち込むと、残念ながら個人で買うようなおしゃれなワークウェアは下火になってしまいます。ただ、ユニフォームはどうでしょう。工場の制服は? 建設現場の作業着は? 少しくらい買い控えることはあるかもしれませんけど……」
 
  「なるほど。会社支給のユニフォームは強い、需要は高い、と」
 
  「強いかどうかはさておき『ニーズは必ずある』とは言えますね。たとえば市役所や銀行といった職場でのドレスコードがカジュアルになったり働き方がテレワークになったりすると、背広は売れなくなる。でも、カジュアル衣料で土木や塗装といった作業ができるのか? 自動車や半導体の工場スタッフが、みんなバラバラの格好なんてことがありえるだろうか? という話です」
 
  K氏はサラリと言ってのける。たしかに、ワークウェアはユニクロやしまむらの服と同列に語れない。ハードな現場において、作業服は必需品であり消耗品だ。また工場のように規律や連携が求められる職場において、ユニフォームは「生産設備の一部」と言っても過言ではない。ワークウェアは服であると同時にツールでもあるのだ。いくら消費が落ち込んでも、産業活動が続く限り、作業着や制服の出番はゼロにはならない。
 
  「ワークウェアにも、もちろんデザインの流行やスタイルの移り変わりといったファッション的な要素はあります。近年はそちらの面ばかり注目されてきましたが、一方で、機能性による作業効率の向上、そして組織運営や職場づくりといった役割も大昔から変わらずにあるわけです。じゃあ、自重堂はどんなメーカーかというと……」
 
  制服百科--。おなじみ自重堂カタログの名称が浮かぶ。ファッションよりも「ファンクション」としての仕事服。その大手としての自負がオーラのごとく放出したようだった。
 
  「では、温まったところで新商品をご紹介しましょう」
 
  ●組織を守るユニフォーム
 
  登場したのは「76800 エコ製品制電ストレッチ」シリーズ。今時のデザインではあるが、オーソドックスな印象もある上下作業着だ。先行する2023年秋冬モデル「72800」の春夏バージョンとなっており、同デザインでの通年着用ができるようになった。ただ、カジュアル色の強い「Z-DRAGON」としては、やや大人しい気もするが……。
 
  「よく見てください。この緑のロゴは『Z-DRAGON GREEN』です。素材から付属まで、徹底的にエコを追求した環境配慮型ワークウェアで、企業や自治体などでのSDGsのニーズに対応しました。植物由来繊維の使用率は55%以上で、化石燃料の使用や二酸化炭素の排出を抑えることができます。服だけじゃなくて、包装袋や吊りラベル(商品タグ)まで、バイオマス原料や古紙を使っているというこだわりよう。環境配慮をうたう事業所なら、これ以上のユニフォームはないんじゃないでしょうか」
 
  「環境配慮」というと、エアコンの設定温度を上げたり、マイカー移動を控えたりと、何かしら我慢しなければならないイメージがある。しかし、このアイテムは従来の高機能なワークウェアそのままだ。安っぽくてゴワゴワというわけでもなければ、肌触りや着心地が悪いわけでもない。ちゃんとした“イイモノ感”があって、生地もストレッチする。製品制電だから精密部品の工場などでもOK。とくにSDGsなど意識せず、今風の事業所ユニフォームとして採用しても、まったく違和感がないだろう。
 
  「これこそ初めに述べた、作業服の本来の役割という話ですよ。ユニフォームの法人購入はなくならないけれど、導入コストや環境負荷の低減といった求められる条件は、年々厳しくなっていく。採用する会社はとくにこだわりがなくても、取引先や消費者から『あなたの会社はSDGsのために何をしていますか?』と問われることもあるわけで。つまり、従来のように規律や洗練をイメージさせるような見た目によるアピールばかりでなく、企業や自治体の社会的責任といったことまで、ユニフォームで表現していく必要が出てきているわけです」
 
  たしかに、最近はSNSを中心に企業活動への目が厳しくなっているのを感じる。現場のスタッフが悪ふざけをしていればすぐさま写真や動画が流出し、特定されて猛烈な批判を浴びる。過去に発言で物議を醸した人物を広告に起用すれば、数日で撤回・謝罪に追い込まれる。こういった状況の是非はさておき、あらゆる組織は「社会から一挙手一投足を見られている」という意識を持つ必要があるだろう。
 
  過剰に思えるほどの「環境配慮型ユニフォーム」。それは次世代のための行動規範であると同時に、常に「人の目」を意識せざるを得ない情報社会で、組織やスタッフ、そして商品やブランドを守っていくための装備とも言えるのかもしれない。
 
  ●目指したのは「ステテコ」?
 
  重苦しい話になったので、少し目先を変えよう。続いて紹介してもらうのは「76900 製品制電ストレッチ長袖ジャンパー」シリーズ。化繊の軽い着心地に、裏綿の肌触りの良さがポイントとなっている。精密部品を扱う工場や火気厳禁の現場で活躍しそうな上下作業着だ。
 
  「これはもう、完全に法人をターゲットにしてます。よく似たデザインの先行モデルに、ポリエステル混綿、ポリウレタン混綿のものがあって、すごく好評なので今回、裏綿モデルを開発しました。軽さに加えて、ストレッチや速乾性といった化繊のよさを活かしつつ、コットンの優しい着心地も味わえる。さらにお値段もリーズナブル。まさに『工場ユニフォームの最適解』って感じです。裏綿素材は汗によるベトつきが少ないので、とくにこれからの季節にオススメですね」
 
  綿のリラックス感は魅力だが、いったん汗をかくとなかなか乾かず、化繊より不快感が大きい。しかし、このウェアなら裏地が吸収した汗を、表地から効率よく蒸散させることが可能。化繊と綿の“いいとこ取り”である。汗ダラダラの屋外作業なら「綿の肌触り」なんて言っちゃいられないけれど、それほど汗対策を考えなくていい現場なら、このくらいの塩梅がいいだろう。
 
  さらに、K氏は「もっと涼しいのがいいという人はこちらを……」と、新商品を取り出した。「77000 ストレッチ長袖ジャンパー」シリーズである。上は長袖のみ、下はカーゴパンツのみというシンプルなセットアップがかえって新鮮に感じる。持ってみると、軽……いやペラい! うわ、なにこれ、下着?
 
  「カタログじゃわからないでしょう? じつはこの商品の裏テーマは『ステテコ感覚』。某アパレル大手が流行らせた『おしゃれステテコ』ってありますよね。もう夏の定番スタイルになってますが、あの感覚で涼しさMAXのワークウェアを作ってみよう、と。ごらんの通り、薄くてペラペラですけど、遠目には普通のユニフォームに見えるし、引き裂き強度や耐摩耗性など、作業服としての基準もクリアしています。昔ならこんなに薄ければ強度不足で話にならなかったわけですが、現在の素材や技術の進化のおかげですね」
 
  めちゃくちゃ薄いのでインナー選びなど、気を遣う面もある。しかし、とにかく暑いのがイヤという人には、従来製品とは一線を画した「ぶっちぎりの涼感ウェア」として提案したい。
 
  「私のオススメは“空調服のお供”にすることです。ファン付きウェアにこのパンツを合わせれば、すごく涼しくて快適ですよ。ステテコみたいな着心地なのにきちんとした印象で、空調服から対応の上着にチェンジしたら、完全に会社のユニフォームになる。これで急な接客や事務所対応も大丈夫です。つまり、空調服にこの上下があれば、猛暑対策はもちろん見た目も完璧。これが最強じゃないですか?」
 
  「街でも着られる」だの「限定アイテム」だの、そんな色気は一切見せない。新作は、エコ・裏綿・涼感をテーマに掲げてはいるけれど、ルックス的にはおなじみの会社の制服、正真正銘の「ザ・ユニフォーム」だ。もっとパッと目を引くような新商品はいくらでも作れるのに、あえてこんな道を選ぶなんて……。
 
  意外とすごい。地味にすごい。一周回ってすごい--。
  そんな言葉が頭の中でこだました。
 
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極薄作業着には高度な技術が
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低価格でも細部はキッチリ

    

これぞ環境配慮ウェアの決定版! SDGsにも貢献する作業着「76800シリーズ」

SDGsをはじめとする環境意識の高まりに対応した「Z-DRAGON GREEN」製品制電ワークウェア。使用繊維の55%が植物性由来。生地だけでなく、包装袋や吊りラベル(商品タグ)まで、バイオマス原料や古紙を使っている。エコマーク認定商品。グリーン購入法の判断基準にも対応。


職場にナチュラルな優しさを! 裏綿タイプ作業着「76900シリーズ」

肌触りのいい裏綿仕様の「Z-DRAGON」製品制電ワークウェア。生地は、伸縮性のあるポリエステルに肌側コットンを配合した「ストレッチ裏面ドビー」。ソフトな風合いと優しい着心地が楽しめる。制電モデルなので建設・土木から精密部品の工場、軽作業など、幅広い現場で活躍。