上方落語に「百年目」という噺がある。大阪・船場の大店の番頭は、奉公人を叱ってばかりの堅物として通っている。しかし、彼には秘密の趣味があった。芸者遊びだ。桜の季節、こっそり出かけた番頭は屋形船でどんちゃん騒ぎをしていた。上機嫌で始まった川岸での余興で、彼は目隠ししたまま芸者を捕まえる--と、腕の中にいたのは、たまたま花見に来ていた大旦那だった! 酔いは一気に覚め、不意に出た言葉が「な、なが、長らくご無沙汰いたしましたッ!」。大旦那は場を壊さないようにその場を去っていくが、後日、事務所で番頭を呼び出す。「自分の給料で遊ぶのはおまえの自由や。コソコソせんでええやないか。……で、あのとき言うた『ご無沙汰』ってどういうことや?」「あそこで大旦那に顔を見られまして、しもたぁ、これは百年目やぁー、と思いました」。この噺はサラリーマン泣かせの感動ストーリーでもある。百年目は「運の尽き」ではないのだ。
自重堂
Z-DRAGONの新作「73400」
パンツが「テーパード」に!
●メモリアルイヤー
「100周年、100周年の記念イヤーですよ。このタイミングで取材できるってすごいと思いません? まいど屋さんはラッキーですよ、100年に一度の機会をものにしたわけですから。自重堂の創業は1924年の9月。つまり春夏じゃなくて、この2024年秋冬コレクションこそが、正真正銘の100周年アイテムとなるわけです。この瞬間に立ち会えるなんて、めちゃくちゃツイてますよ!」
こう語るのは、おなじみ自重堂のK氏。いったい何回「100周年」って言うんだろう……、と思いながら相槌を打っていたものの、ふだんの営業トークと比べてケタ違いの熱量がこもっているのは確かである。「異次元の商品解説」とでも言おうか、とにかく声や表情だけでなく、仕草にも気合がみなぎっている。
しかし、100周年と言われても、こちらは会社の幹部や創業家でもなく取引先のひとつ。正直いえば、あまり関係ないわけで……。あっ! ひょっとして、なんか豪華ホテルでパーティーとかやるんすか? いいなぁー、芸能人を呼んだりして……。
「そんなのしないよ」
突如、冷たい表情を浮かべたかと思うと、K氏はこちらを蔑むような目で語り始めた。
「あのね、まいど屋さん、いまどれだけ大変な状況かわかってますか……。コロナ後の人手不足と国際的な政情不安で、原材料費だけでなく、光熱費や輸送費までアップしています。製造コストの増加によって、作業着メーカーも泣く泣く値上げに踏み切りました。以上は作る側や売る側の都合ですが、もっとしんどいのは買う側、つまりユーザーさんですよ。ただでさえ資材や燃料費の高騰に苦しんでいるのに、そこにユニフォームまで値上げとくれば、建設会社や町工場といった中小企業は、本当にきつい。またそこで働く人だって、ツライですよ。3着支給されていた制服が2着に減らされて毎日洗濯できなくなったり、買い替えのタイミングが延びた結果、『もう少し我慢して着てね』といった話になったりすると、仕事のモチベーションが下がる。作業効率や安全性にも関わってくるかもしれません」
うっ……、たしかに。考えてみれば、会社のユニフォームに限った話じゃなくて、服や靴を買う頻度も減っている気がする。数年前は100円で買えた野菜が180円になり、750円で食えたラーメンが950円になり、と身近な商品の価格が上がった結果、無意識にショップから遠ざかってしまっているのだ。たとえば空調服なんかは、ずいぶん高級品になってしまったなぁ、といった印象がある。
●そして、大勝負!
「わかりましたか、浮かれてる場合じゃないんですよ。うちのようなメーカーも厳しい状況ですが、それより、どれだけお客様が苦しんでおられるか……」
K氏は沈痛な面持ちで、再び口を開く。こちらも襟を正して、しばし瞑目し、全国の作業着ユーザーの苦境に思いを馳せ……って、あれ、最初はえらいラッキー&ハッピーなノリで話してませんでしたっけ?
「そう、苦境がキーワードです! 今回の秋冬コレクションは、物価高に苦しむお客様のために、全身全霊を込めた新商品をリーズナブルな価格でご用意しました!」
ジャパネットに転職した民放出身アナウンサーのような口調で、K氏のプレゼンが始まった。
「まず、新作ウェアはすべて新シルエットです。前シーズンまで、あらゆる自重堂ウェアに使っていた型紙を捨てて、新規の型紙に切り替えました。それによって、従来品とは形が大きく変わっています。たとえば、ブルゾンだと同サイズでも胸廻や肩幅、それに着丈に1、2cm差がある。パンツに至ってはレギュラーから全部テーパード(足首に向かって細くなっていく形)に変更したので、見た目や印象がこれまでとはぜんぜん違います。簡単に言うと、すべて今風にカッコよくなった、ってことです」
ちょ、ちょっと待った。型紙(パターン)って、アパレル企業の根幹なのでは? 「うちの服を着る人の体型はこんな感じだから」と、各メーカーが定めた型紙から、すべてのウェアは生まれる。これこそが「既製服」という考え方であって、型紙とは、その会社の全商品に共通するDNAみたいなものではないのか。
「その通り、こんなこと普通はしない。でも、100周年だからやりました。そして、もう昔の型紙には戻りません。つまり、現行商品の注文がある限り、『100周年以降』と『以前(従来)』という2種類の型紙を使い分けて製造していくことになるわけですね。とくにユニフォームのような継続性の高いビジネスで、こんなことをしたら、めちゃくちゃ面倒なことになる。それに『自重堂のウェアってこういう感じ』というイメージをお持ちのお客さんからしても『あれ? なんか違う』という話になるわけで、失うものもあるわけです。しかし、それでもカッコいいシルエットに切り替えたかった。型紙を変えるなんて、100周年の節目を逃したらもうできません。要するに、このタイミングで自重堂は大勝負に出たわけです」
なるほど、100周年を単なる祝賀ではなく、商品改革の好機にしたわけか。ところで「物価高に苦しむユーザー」という話は……。
「では、実際に100周年アイテムをご覧いただきましょう!」
●自重堂らしくない?
最初に登場したのは、カジュアル系ブランド「Z-DRAGON」の上下作業着「73400」シリーズである。リサイクル素材を40%使った生地の伸長率は17%で、しかも帯電防止仕様。機能面もすごいけれど、なにより右胸ファスナー部の赤が、これ以上ないくらいにキマっている。まるで見た目に全振りした新興メーカーのウェアみたい。正直「ああー、自重堂ってこういうの作れたのかぁー」と唸らされた。
「価格を見ると、もっとショックを受けますよ。これほどデザイン性を追求した作業着がこんな値段で買える、と。ユーザーさんには、こう強調したいですね。Z-DRAGONのイメージを変えるシックな赤を右胸だけでなく、背中のネームやファスナーの引手にもあしらって、高級感を演出しました。さらに新作型紙でブルゾンはすっきりしたシルエットになり、パンツもスマートな印象になった。私が言うのもなんですが、初めて目にしたときには『自重堂スゴイ!』と思いましたよ」
言うまでもなく、デザイン性の高い作業着は値段が張る。いまどき機能面がダメダメな作業着など、ほぼ存在しないので、リーズナブルな商品を選ぼうとすると、だいたい見た目で妥協して、「ややダサい気もするけど……」という選択をせざるを得なかった。防水や透湿といった特殊な機能を除けば、値段は「カッコよさ」に左右されていたのだ。しかし、資金力のある大手からこういう突然変異みたいなアイテムが出てくると、また話は変わってくる。まさに作業服売り場における“ゲームチェンジャー”だ。
「ね、これがやりたかったんですよ。いくらデザインに凝っても、既存の型紙では『自重堂のシルエット』にしかならない。カッコよくするにも限界があったわけです。それがどうですか、ぜんぜん違うでしょ?」
「自重堂じゃないみたい」と思わず口をついて出た。これまでのJawinやZ-DRAGONもファッショナブルではあったが、いわゆるキメキメではなく、どこか親しみや懐かしさといったニュアンスがあった。そう、たとえば小学校のころ工場見学で見たような……。あの保守本流の正統派で、悪く言えばモッサリした自重堂の作業着はもうないのだ。
なにかを得るためには、なにかを失わなければならない--。100周年アイテムからは、そんな哲学を感じる。
●100年の感謝を込めて……
「では、次は納入向けのユニフォームを見てもらいましょう」
そういってK氏が広げたのは、裏綿素材の上下ワークウェア「72900」シリーズ。定番のデザインで、色もアースグリーンやシルバー、ネイビーと制服らしいカラーがそろっている。要するに毎度おなじみの自重堂の十八番「ザ・会社の作業着」なわけだが、やはりシルエットが違うと、まとう雰囲気も変わってくる。先程の73400が「シルエットが変わって自重堂らしくない」商品だったのに対し、こちらは「シルエットが変わったのに自重堂らしい」。なんとも不思議なアイテムだ。
「これは、ド定番のユニフォームを新シルエットでやってみよう、という企画ですね。面白さはないけれど、数は出るようなアイテムの100周年バージョン。オーソドックスなデザインにコットンの肌触りで、万人受け間違いなし、です。従来より細身になったぶん、『中高年にはキツイんじゃないの?』と思うかもしれませんが、そこは型紙を作るときに分析して、考え抜きました。素材のストレッチ性を活かして、従来のシルエットがぴったりだった人も、ストレスなく着用できるように作っています。上下とも、動きやすさや着心地はまったく犠牲にすることなく、スッキリしたカッコいいシルエットを実現させました」
パンツがテーパードになっても「今までと同じ感覚で着られる」と言い切るなんて、すごい自信だ。また、このように形をガラリと変えながらも守り抜いたのは、着心地や使用感だけではないという。
「色のイメージは昔ながらのユニフォームを踏襲しました。たとえば作業着の定番カラー、アースグリーンについて言えば、根強い人気があるにもかかわらず、他社はあまり出さなくなってしまった。昔からある型番から選ぶしかないとなると、お客さんに喜んでもらえないので『新作にこの色は必ず欲しい』と。古臭いカラーだと思うかもしれませんけど、じつは昔のアースグリーンはもっと濃い色でした。定番カラーとはいえ、ちゃんと時代に合わせてアップデートしているんです」
こちらも劇的にカッコよくなったにも関わらず、価格はリーズナブル。コスト増の逆風が吹くなか、新規の型紙でシルエットを変更し、それに合わせて渾身のデザインと……。うーん、自重堂さん、さすがにちょっと頑張り過ぎでは?
「はい、限界レベルに無理してます。でも、このタイミングなんでやっちゃえ! というわけです。型紙を変えるのも大変革ですが、ついでに価格もみんなビックリするくらいにして、二度とできないようなインパクトのある創業100周年にしよう--。これが自重堂の考え方ですよ。リブランドと呼んでいいほどカッコよくなった商品を、他のメーカーが追随できない大サービス価格で展開する。メモリアルイヤーということで、これまでのご愛顧への感謝の気持ちを込めてね。--そうだ、最後に改めてユーザーさんに、100周年のメッセージをお伝えさせてもらっていいですか?」
あーいいですよ。そろそろ文字数がキツくなってきたので、短めでどうぞ。
「ここまでやったんだから、買って!!」
「100周年、100周年の記念イヤーですよ。このタイミングで取材できるってすごいと思いません? まいど屋さんはラッキーですよ、100年に一度の機会をものにしたわけですから。自重堂の創業は1924年の9月。つまり春夏じゃなくて、この2024年秋冬コレクションこそが、正真正銘の100周年アイテムとなるわけです。この瞬間に立ち会えるなんて、めちゃくちゃツイてますよ!」
こう語るのは、おなじみ自重堂のK氏。いったい何回「100周年」って言うんだろう……、と思いながら相槌を打っていたものの、ふだんの営業トークと比べてケタ違いの熱量がこもっているのは確かである。「異次元の商品解説」とでも言おうか、とにかく声や表情だけでなく、仕草にも気合がみなぎっている。
しかし、100周年と言われても、こちらは会社の幹部や創業家でもなく取引先のひとつ。正直いえば、あまり関係ないわけで……。あっ! ひょっとして、なんか豪華ホテルでパーティーとかやるんすか? いいなぁー、芸能人を呼んだりして……。
「そんなのしないよ」
突如、冷たい表情を浮かべたかと思うと、K氏はこちらを蔑むような目で語り始めた。
「あのね、まいど屋さん、いまどれだけ大変な状況かわかってますか……。コロナ後の人手不足と国際的な政情不安で、原材料費だけでなく、光熱費や輸送費までアップしています。製造コストの増加によって、作業着メーカーも泣く泣く値上げに踏み切りました。以上は作る側や売る側の都合ですが、もっとしんどいのは買う側、つまりユーザーさんですよ。ただでさえ資材や燃料費の高騰に苦しんでいるのに、そこにユニフォームまで値上げとくれば、建設会社や町工場といった中小企業は、本当にきつい。またそこで働く人だって、ツライですよ。3着支給されていた制服が2着に減らされて毎日洗濯できなくなったり、買い替えのタイミングが延びた結果、『もう少し我慢して着てね』といった話になったりすると、仕事のモチベーションが下がる。作業効率や安全性にも関わってくるかもしれません」
うっ……、たしかに。考えてみれば、会社のユニフォームに限った話じゃなくて、服や靴を買う頻度も減っている気がする。数年前は100円で買えた野菜が180円になり、750円で食えたラーメンが950円になり、と身近な商品の価格が上がった結果、無意識にショップから遠ざかってしまっているのだ。たとえば空調服なんかは、ずいぶん高級品になってしまったなぁ、といった印象がある。
●そして、大勝負!
「わかりましたか、浮かれてる場合じゃないんですよ。うちのようなメーカーも厳しい状況ですが、それより、どれだけお客様が苦しんでおられるか……」
K氏は沈痛な面持ちで、再び口を開く。こちらも襟を正して、しばし瞑目し、全国の作業着ユーザーの苦境に思いを馳せ……って、あれ、最初はえらいラッキー&ハッピーなノリで話してませんでしたっけ?
「そう、苦境がキーワードです! 今回の秋冬コレクションは、物価高に苦しむお客様のために、全身全霊を込めた新商品をリーズナブルな価格でご用意しました!」
ジャパネットに転職した民放出身アナウンサーのような口調で、K氏のプレゼンが始まった。
「まず、新作ウェアはすべて新シルエットです。前シーズンまで、あらゆる自重堂ウェアに使っていた型紙を捨てて、新規の型紙に切り替えました。それによって、従来品とは形が大きく変わっています。たとえば、ブルゾンだと同サイズでも胸廻や肩幅、それに着丈に1、2cm差がある。パンツに至ってはレギュラーから全部テーパード(足首に向かって細くなっていく形)に変更したので、見た目や印象がこれまでとはぜんぜん違います。簡単に言うと、すべて今風にカッコよくなった、ってことです」
ちょ、ちょっと待った。型紙(パターン)って、アパレル企業の根幹なのでは? 「うちの服を着る人の体型はこんな感じだから」と、各メーカーが定めた型紙から、すべてのウェアは生まれる。これこそが「既製服」という考え方であって、型紙とは、その会社の全商品に共通するDNAみたいなものではないのか。
「その通り、こんなこと普通はしない。でも、100周年だからやりました。そして、もう昔の型紙には戻りません。つまり、現行商品の注文がある限り、『100周年以降』と『以前(従来)』という2種類の型紙を使い分けて製造していくことになるわけですね。とくにユニフォームのような継続性の高いビジネスで、こんなことをしたら、めちゃくちゃ面倒なことになる。それに『自重堂のウェアってこういう感じ』というイメージをお持ちのお客さんからしても『あれ? なんか違う』という話になるわけで、失うものもあるわけです。しかし、それでもカッコいいシルエットに切り替えたかった。型紙を変えるなんて、100周年の節目を逃したらもうできません。要するに、このタイミングで自重堂は大勝負に出たわけです」
なるほど、100周年を単なる祝賀ではなく、商品改革の好機にしたわけか。ところで「物価高に苦しむユーザー」という話は……。
「では、実際に100周年アイテムをご覧いただきましょう!」
●自重堂らしくない?
最初に登場したのは、カジュアル系ブランド「Z-DRAGON」の上下作業着「73400」シリーズである。リサイクル素材を40%使った生地の伸長率は17%で、しかも帯電防止仕様。機能面もすごいけれど、なにより右胸ファスナー部の赤が、これ以上ないくらいにキマっている。まるで見た目に全振りした新興メーカーのウェアみたい。正直「ああー、自重堂ってこういうの作れたのかぁー」と唸らされた。
「価格を見ると、もっとショックを受けますよ。これほどデザイン性を追求した作業着がこんな値段で買える、と。ユーザーさんには、こう強調したいですね。Z-DRAGONのイメージを変えるシックな赤を右胸だけでなく、背中のネームやファスナーの引手にもあしらって、高級感を演出しました。さらに新作型紙でブルゾンはすっきりしたシルエットになり、パンツもスマートな印象になった。私が言うのもなんですが、初めて目にしたときには『自重堂スゴイ!』と思いましたよ」
言うまでもなく、デザイン性の高い作業着は値段が張る。いまどき機能面がダメダメな作業着など、ほぼ存在しないので、リーズナブルな商品を選ぼうとすると、だいたい見た目で妥協して、「ややダサい気もするけど……」という選択をせざるを得なかった。防水や透湿といった特殊な機能を除けば、値段は「カッコよさ」に左右されていたのだ。しかし、資金力のある大手からこういう突然変異みたいなアイテムが出てくると、また話は変わってくる。まさに作業服売り場における“ゲームチェンジャー”だ。
「ね、これがやりたかったんですよ。いくらデザインに凝っても、既存の型紙では『自重堂のシルエット』にしかならない。カッコよくするにも限界があったわけです。それがどうですか、ぜんぜん違うでしょ?」
「自重堂じゃないみたい」と思わず口をついて出た。これまでのJawinやZ-DRAGONもファッショナブルではあったが、いわゆるキメキメではなく、どこか親しみや懐かしさといったニュアンスがあった。そう、たとえば小学校のころ工場見学で見たような……。あの保守本流の正統派で、悪く言えばモッサリした自重堂の作業着はもうないのだ。
なにかを得るためには、なにかを失わなければならない--。100周年アイテムからは、そんな哲学を感じる。
●100年の感謝を込めて……
「では、次は納入向けのユニフォームを見てもらいましょう」
そういってK氏が広げたのは、裏綿素材の上下ワークウェア「72900」シリーズ。定番のデザインで、色もアースグリーンやシルバー、ネイビーと制服らしいカラーがそろっている。要するに毎度おなじみの自重堂の十八番「ザ・会社の作業着」なわけだが、やはりシルエットが違うと、まとう雰囲気も変わってくる。先程の73400が「シルエットが変わって自重堂らしくない」商品だったのに対し、こちらは「シルエットが変わったのに自重堂らしい」。なんとも不思議なアイテムだ。
「これは、ド定番のユニフォームを新シルエットでやってみよう、という企画ですね。面白さはないけれど、数は出るようなアイテムの100周年バージョン。オーソドックスなデザインにコットンの肌触りで、万人受け間違いなし、です。従来より細身になったぶん、『中高年にはキツイんじゃないの?』と思うかもしれませんが、そこは型紙を作るときに分析して、考え抜きました。素材のストレッチ性を活かして、従来のシルエットがぴったりだった人も、ストレスなく着用できるように作っています。上下とも、動きやすさや着心地はまったく犠牲にすることなく、スッキリしたカッコいいシルエットを実現させました」
パンツがテーパードになっても「今までと同じ感覚で着られる」と言い切るなんて、すごい自信だ。また、このように形をガラリと変えながらも守り抜いたのは、着心地や使用感だけではないという。
「色のイメージは昔ながらのユニフォームを踏襲しました。たとえば作業着の定番カラー、アースグリーンについて言えば、根強い人気があるにもかかわらず、他社はあまり出さなくなってしまった。昔からある型番から選ぶしかないとなると、お客さんに喜んでもらえないので『新作にこの色は必ず欲しい』と。古臭いカラーだと思うかもしれませんけど、じつは昔のアースグリーンはもっと濃い色でした。定番カラーとはいえ、ちゃんと時代に合わせてアップデートしているんです」
こちらも劇的にカッコよくなったにも関わらず、価格はリーズナブル。コスト増の逆風が吹くなか、新規の型紙でシルエットを変更し、それに合わせて渾身のデザインと……。うーん、自重堂さん、さすがにちょっと頑張り過ぎでは?
「はい、限界レベルに無理してます。でも、このタイミングなんでやっちゃえ! というわけです。型紙を変えるのも大変革ですが、ついでに価格もみんなビックリするくらいにして、二度とできないようなインパクトのある創業100周年にしよう--。これが自重堂の考え方ですよ。リブランドと呼んでいいほどカッコよくなった商品を、他のメーカーが追随できない大サービス価格で展開する。メモリアルイヤーということで、これまでのご愛顧への感謝の気持ちを込めてね。--そうだ、最後に改めてユーザーさんに、100周年のメッセージをお伝えさせてもらっていいですか?」
あーいいですよ。そろそろ文字数がキツくなってきたので、短めでどうぞ。
「ここまでやったんだから、買って!!」
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