【バートル】黒い報告書?image_maidoya3
9月の猛暑日だった。JR福山駅から福塩線に乗り換えて、府中市に入る手前の新市駅で下車。別の取材を済ませたあと、真っ昼間に徒歩でバートル本社へ向かっていた。駅に戻ってまた電車に乗るのも手だが、ここは単線。そう都合よく電車は来ない。もちろんエアコン付きの待合室なんてものもない。となると歩くしかない。幸いにしてロードサイドにはコンビニがある。「休憩を入れながら行けばなんとかなるはず」と、デスバレーを思わせるだだっ広いアスファルト道を進んで行く。コンビニでは店舗の脇にあるわずかな日陰に逃げ込んで「ガリガリ君」を頬張り、アイスコーヒーで流し込む。路上で待機できる気温ではないので、ちょうどアポの時間に到着できるようにまた歩き出す。えーと、今回の取材テーマってなんだっけ? 秋冬、いや防寒か。真冬の、暖かい、アウターとか……。あれ? もう秋だよね。なんだこの熱波は……、うーん、防寒ってなんだっけ……。朦朧とする頭で、なんとかバートル本社にたどり着いた。

バートル
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企画チームの岡田さん
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黒の中にロゴが映える
●予想以上の「市場ウケ」
 
  「市場に評価していただいている、というんでしょうか。今年の春夏シーズンは、ユーザーの需要以前にショップからの受注が多くて大変でした。特にファン付きウェアの『エアークラフト』では一部アイテムが品薄になってしまい、ご迷惑をおかけしました。正直いって予想できなかったです。たとえば完全新作のアイテムなんかはウケるかどうかわからないので、『まあ、これくらいは売れるかな』と考えて工場で作っていくわけですけど、発表すると即座に『着てみたい!』『売り場に欲しい!』という声が殺到する。生産計画を立てるのに苦労する面はあるものの、『バートルだからいい商品に違いない』という市場の評価は非常にありがたいことだと受け止めています」
 
  2024年の前半を振り返って、企画チームの岡田さんはこう語る。本誌もエアークラフトのハイバック型を「画期的なウェア」として紹介している。しかし、これはあくまで「変化球なアイテム」であり、欲しがるのは一部のユーザーだと思っていた。それがどうだ、「風抜けがこう違う」とか「草刈り機のベルトに干渉しない」といった話はほとんど関係なく、みんな「エアクラの新作」として飛びついたのである。私事で恐縮だが、家の近所をママチャリでうろついているおじいちゃんまで8月のはじめごろに“ハイバック化”したときは衝撃を受けた。取り入れるの早すぎるよ!
 
  「サイドファンやハイバックなど、最初は『こっちのほうが便利じゃないかな?』『あっち分野のワーカーさんにいいかも?』という感じで企画するわけです。でも、発売すると想像してたより幅広いお客さんに着てもらえる。その結果、良いところ・悪いところといったレスポンスがたくさん集まって、また次の仕様改善や企画開発に活かせます。バートルは『カジュアル作業着』というイメージがあるかもしれませんが、大事なのは機能や効果です。ただ今風のカッコいい服が欲しいだけならアパレル店に行けばいいわけですから。やはり、ワークウェアとしての性能や制服らしい見た目というものを大事にしなければいけない。職場のカジュアル化といっても、日本の場合、いまも多くの人が会社のユニフォームを着て働いているわけですから」
 
  バートルの肝は「カジュアル」にあらず--。名文句が飛び出したところで、今シーズンの防寒アイテムを紹介してもらおう。
 
  ●ハイスペ防水防寒!
 
  テーブルの上には、秋冬シーズンの新商品が並んでいる。ウインドブレーカーのような軽防寒から、中綿入りのアウター、そして水産業でもイケそうな上下の防水防寒まで。しかし、いつもの新作から受ける“あの感じ”がしない。なんというか、いつもはもっと華やかさがあるのに対し、今回は威圧感というか、重厚な雰囲気というか……。
 
  「そう、今年の秋冬は黒が多いんです。ユニフォームって普通はグレーとかコーポレートカラーの赤や青がよく出るんですけど、ここ数年は、なぜかブラック系が売れています。一時期、売り場がデニムばかりになった反動もあるのかもしれません。いま人気のショップに行くと黒だらけ。といっても、ただ色がダークなだけじゃなくて、スポーツやアウトドア用の素材を使った『テック系』の機能性ウェアが多いですね。シンプルに見えてじつはハイテク仕様で、『最先端の防寒ギア』といった感じです」
 
  その代表例として、岡田さんが広げたのは上下の防寒ウェア「7620シリーズ」。防風撥水・防水透湿と、これ以上ないほどのスペックを誇る最強アウターだ。
 
  「じつはバートルでは2作目の防水防寒です。耐水圧は15000mmで透湿性は15000g/㎡/24hrsと、1作目の『7610シリーズ』と比べて、性能は大幅アップしています。もちろんレインウェアとしても使えるし、保温性も高いのでスキーやスノボのウェアとしてもOKなレベル。あと、こんなスゴイ仕様なのに軽量でゴワゴワしないのがポイントです。ハーフコートくらいの着丈なのにフワッと着られて、腕や足の曲げ伸ばしもしやすい。このスペックではなかなか珍しい着用感だと思います。当社社長もイチオシのアイテムですよ」
 
  思い返してみれば、防水防寒を着込むときは、かなり億劫だ。ゴワつくパンツに足は通りにくいわ上着も腕が曲げにくいわで、まるでロボットになったような気がする。でも、このライト感なら、朝ドアを開けて「今日は天気が悪いな」と思ったら、気軽にパッと羽織っていけるだろう。
 
  「デザイン的にも1作目より大人っぽく、単色でシンプルにまとめました。ブラックやネイビーは作業服として視認性がちょっと……と思うかもしれませんが、雪の中だと逆に黒系が目立つんです。また袖には反射材が付いていて、後ろから見るとよく光ります。さらに肩に降った雨や雪がすぐ落ちるラグラン袖も雪国仕様。北海道や東北のワーカーさんにぜひ使ってほしいです」
 
  ●「上下もの」じゃない?
 
  続いて登場したのはフーディージャケットの「480」。先ほどの防水防寒とは対称的な軽防寒アイテムで、ウインドブレーカーやヤッケのように気軽に使える。
 
  「上下ものではなく『これからの季節に1枚あると便利』というカジュアル衣料のような商品です。フード付きの撥水仕様で耐水圧もそこそこあるので、ちょっとした雨や汚れも防げます。ただし保温性は低い。中綿はなく、風を防げるだけなので、寒い日には何かと組み合わせる必要がありますね」
 
  作業中は冬でも暑さを感じることがある。中綿入りのベストや電熱のサーモクラフトなど、中に着るもので調節するとよさそうだ。
 
  「シンプルで低価格なので、ユニフォームのお供としてオススメしています。それでカラーも黒系がメイン。ガラものの『スプリットブラック』も、あまり派手にならないように気をつけました。主張のあるデザインを嫌がる人でもOKな大人っぽいガラです」
 
  さらに、着こなしがいのある防寒アイテムとして、岡田さんは「821シリーズ」を挙げる。パッと見た印象としては、スポーティーな秋冬用のユニフォームといった感じだが……。
 
  「これは結構ひねりの利いたアイテムです。普通の上下作業着みたいだけど、ジャケットはフード付きだから単体で軽防寒アウターとしても使えます。そして、パンツは普通のカーゴだけでなく、裏起毛付きの『ウォームアップパンツ』があって、こちらも秋冬用の作業パンツとして着られる。というのも、もともとフード付きアウターと、秋冬用のパンツとして別々に企画していたものを『上下のセットアップにしよう』と、路線変更したからなんです。その結果、テック系ファッションのような上下ユニフォームという、これまでなかった持ち味のアイテムとなりました」
 
  たしかに上下作業着なら、普通はフードを付けない。そしてパンツもカーゴ・スラックス・ジョガーといった具合で、「裏起毛タイプ」なんて、ややこしい展開は避けるだろう。
 
  「ここにピンとくるデザイン重視のお客さんがいるのでは、と。ユニフォームの王道からは外れているけれど、小さな事業所ならファッションアイテムのような制服もアリなのでは、といった提案ですね。デザイン自体はシンプルだから意外に上品に見えるし、上だけ・下だけの着用のほうが、体温調節しやすい。もちろん上下のセットアップよりおしゃれな着こなしも楽しめますよ」
 
  ハイスペックな防水防寒から、着回しのきく軽量アウター、テック系の一味違ったユニフォーム--。黒だらけのバートル秋冬コレクションは、新たな機能や発想で華やかに彩られていた。
 
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ハードワーカー向けの「5040」
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「バートルの防寒で間違いなし!」

    

いつでもどこでもコイツと一緒! 活用度◎な「480」フーディジャケット

ウインドブレーカーやヤッケのように、あらゆる場面で活用できる防風シェルのジャケット。耐水圧5000mmの生地に撥水加工を施すことで、急な雨や雪からしっかりガード。さらに作業中の泥ハネや塗料の付着も防ぐ。生地はストレッチ性があるので、動きやすくて着心地もバツグン。


秋冬ユニフォームに嵐を起こせ! “テック系”ワークウェア「821」シリーズ

アウトドアやスポーツ用の高機能素材を使った「テックウェア」的な上下作業着。ストレッチ性のある生地は保温性が高く、三層構造ラミネートで冷たい風も強力ブロック。フード付きジャケットは単体で軽防寒アウターとしても使える。パンツは通常のカーゴに加え、裏起毛で保温性を高めた「ウォームアップパンツ」も用意。