【シンメン】「独自色」を求めてimage_maidoya3
「ワークウェアの聖地」児島(岡山県)に対して、「ワークウェアの総本山」として名高い福山・府中(広島県)--。このエリア内に、やや趣を異にする街があることをご存知だろうか。ちょうど福山と府中の境界に位置する「旧・新市町」である。中心地の新市駅の周辺には、まるで、2003年の市町村合併などなかったかのように、特産の備後絣や観光名所をアピールする展示や看板が立ち並んでいる。デニム生地で有名なカイハラも新市なら、府中や福山の大手作業着メーカーも創業時点では新市。というわけで、新市はまさにワークウェアの総本山における「奥の院」と言える土地なのだ。そして今回レポートするシンメンの「シン」は新市の「新」。繊維の街の名を冠した栄えある作業着メーカーなのである。

シンメン
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ハイテク感のある裏地の蛍光カラー
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細部のこだわりを語る石口さん
●イイもの路線
 
  営業の石口さんは、今シーズンの課題を次のように語る。
 
  「まず前提として、物価高でみなさん財布のひもが堅いので価格を抑えないといけない、といった認識はあります。しかし、当社は『SLASH』と『STX』の目玉ブランドを育てている最中ですから、『とにかく安い』という路線には戻れない。仮に低価格でそこそこのアイテムを出したところで、目の肥えたお客さんに買ってもらえるかわからないし、売れるにしても10年くらい続いてくれないと悲しい結果になってしまいます」
 
  補足しておこう。「SLASH」と「STX」とは、コロナ禍が始まる数年前からスタートしている肝入りのプロジェクト。ひとことで言えば「イイモノ路線」で、低価格イメージからの脱却を目指している。SLASHは、デザイン性の高いカジュアル作業着。STXは、高機能な素材やパーツを惜しみなく使うことで、ハイスペックな「進化系ワーキング・ギア」を追求している。
 
  「付加価値を高めていけば、当然コストは上がります。デザインも最新トレンドを意識したものになるから、長く売れる商品にもならない。さらに他メーカーとの競争も激しい分野です。数字だけを追えば、昔からの定番商品が売れ続けるのが一番いいわけですけど、将来を見据えればこの路線しかないのかな、と。現代のユーザーが“人と違うアイテム”を求めているなら、メーカーとしてはやるしかない。このイス取りゲームに勝たなくちゃ! といった感じです」
 
  ブランド確立の道は、未だ半ば--。だが、この状況をユーザーから見ればひと味違うアイテムに触れるチャンスでもある。というわけで、フラッグシップ「STX」のアイテムから紹介してもらおう。
 
  ●「ウェア」から「ギア」へ
 
  最初に登場したのは、新作の防水防寒「07430」シリーズ。独特の素材感から「シェーダーフェイス」と銘打たれたフード付きジャケットとパンツの上下だ。耐水圧10000mm、透湿性10000g/㎡/24hrsの防水仕様に、耐久撥水・防汚加工を施したハイスペックウェアである。
 
  「よくある防水防寒のようで、じつはターゲットを絞った商品です。まず、防寒とは言うものの、作業中に暑くならないように中綿を入れていません。さらに防水の方も、カッパのようなテープ処理をしていないので、『弾水』と言ったほうが正確かもしれません。すごく寒い日やずっと雨が降り続ける日に着るのではなくて、『冷たい風をシャットアウト』『急な雨や雪もへっちゃら』というアイテムですね」
 
  機能だけでなくデザイン面にも、こだわりが詰まっているという。
 
  「形は人気のマウンテンパーカーで、配色もキレイ目で受け入れやすいものにしました。それだけだと面白くないので、『平成レトロ』的な若い人の好みを意識して黒系ガラの『アブストラクトブラック』を入れています。さらに、STXらしい主張として、内側を蛍光グリーンにすることで最先端な雰囲気を出しました。多めのポケットに反射ワッペン、ロゴプリントと、かなり贅沢な仕様ですけど、パンツを1色にすることでコストを抑えました。当社の中では高い方ですが、お客さんは『このスペックならそんなもんでしょ』といった感じで受け入れてくれています。おかげさまでけっこう人気商品ですね」
 
  野外作業用のジャケットとしても活用度は高く、上下そろえてユニフォームにもできる。防寒ウェアというより機能に特化した「ギア」的なアイテムだ。
 
  ●「黒は売れるけれど」
 
  続いて、石口さんは防寒作業着の上下「06490」シリーズを取り出す。こちらは主力ブランドSLASHの新作。スポーティーな見た目に、「ネオベルベッティフリース」と呼ばれる高級感のあるベロアの生地が魅力だ。
 
  「こういう軽防寒って昔から出していたんですが、思い切って大改良バージョンを作ってみよう、と企画しました。高密度ニットにベロア調のフリースを合わせて、ストレッチ性の向上と軽量化、加えて肌触りのよさを実現しています。シルエットも丈を長くして、今風にしました。薄手ながら、上下とも風を防げるのでかなり暖かい着心地です」
 
  色は黒系がメインではあるものの、バイカラーの赤や迷彩風のガラなど、一筋縄ではいかない展開だ。
 
  「ブラックで物足りない人は、ドット模様入りの黒もあれば派手な赤ガラもありますよ、と。単に色を変えるのではなく、切り替えパターンまで変えることで、同じウェアでもかなり印象の違いが出せます。ガラならショップの店頭を飾る派手なアイテムになるし、黒系ならユニフォームにもなります。カッコいい制服を求めている人に勧めたいですね。トップが2代目や3代目に代替わりして、新しい風を吹かせたい会社にちょうどいいんじゃないでしょうか」
 
  カラーといえば、今シーズンから防寒アウター「03330 EPIC HEAT フードジャケット」にも新色を追加している。従来は黒系カラーだけだったところに、今回から赤のガラと蛍光グリーンのガラが加わって、一気に華やかになった。
 
  「数年前から、『やけに黒が売れるようになったな』と感じています。景気の影響もあるのかもしれません。しかし、売れるのはわかっていても、ブラックやネイビーばかりでは面白くないんですよね。コストの関係で多色展開をするのが難しくても、なんとか、2つくらいは目を引くようなカラーやガラを入れていきたい。それが“人と違うアイテム”を求める声への回答にもなるし、他社より後発のブランドである『SLASH』『STX』を盛り上げていくためのカギにもなるんじゃないでしょうか」
 
  最終的に無難な黒や紺のウェアを買うとしても、たくさんある色やガラの中から選び取るのと、地味にまとまった中で決めるのとでは、意味合いが違ってくる。
 
  不景気でも服を選ぶ楽しさを忘れずに--。シンメンの防寒アイテムには、そんな精神が込められている。
 
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ガラは「平成レトロ」を意識
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「シンメンをよろしく!」

    

軽量ニットにベロアの柔らかさ! 防風ストレッチ作業着「06490」シリーズ

スポーティーな見た目でライトに着こなせる防寒ワークウェアの上下。軽量ニットの生地の裏地に、肌触りのいいベロア調のフリースを合わせることで、高い防風性と保温性に加えて着心地もアップさせた。ユニフォームにもなる黒系からバイカラー、迷彩風のガラなどのカラー展開も魅力。


「弾水」仕様が風雪を跳ね返す! 防水防寒アウター「07430」シリーズ

冷気や風に加えて、急な雨や雪からも体を守る防水防寒アウターの上下。耐水圧は10000mm、透湿性10000g/㎡/24hrsでムレ感なく快適な着心地。さらに耐久撥水が、急な大雨や作業中のドロ汚れなども跳ね返す。屋外作業のほか、バイクや自転車などの通勤シーンでも活躍。