【アイトス】まっとうに、新機軸image_maidoya3
柴咲コウが歌うテーマソング「愛とスマイル」。イメージキャラのAI(アイ)ちゃんTOZ(トス)くん。そして、カタログにはヤクルトや巨人で活躍した強打者ラミレス。と、作業着メーカーにしてはノリが若い感じのアイトスだが、じつは老舗メーカーである。創業はロシア革命が起きた大正6年(1917年)で、今年は108周年。ソ連はとっくに消えたのにアイトスは健在、というわけで、意外にすごい会社なのだ。しかも総合メーカーだから、事務服から白衣、安全靴まで、なんでも揃う。さらに、デザインはカジュアルでも、ワークウェアとしての機能性は妥協なし。さて、そんな長い歴史を持つメーカーが、令和7年のワーカーに提案する新作ユニフォームとは?

アイトス
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野心作の「TULTEXユニフォーム」
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「ペン差し付き」がワーキング仕様
●TULTEXがユニフォームに!
 
  大阪市の本社で取材に応じてくれたのは、アイトス商品課の奥山さん。さっそく2025年、春夏コレクションの見どころから聞かせてもらおう。
 
  「今回の特ダネとしては、『TULTEX(タルテックス)』の作業服が出たことですね。タルテックスはもともと、アメリカのT シャツのブランドだったのをアイトスが2000年ごろから、スポーツウェアやカジュアルウェアとして展開していました。安全スニーカーも、スポーティーでかつ価格もこなれているので人気があります。それで、今回から、会社用のワークウェアやユニフォームとして新たに作ってみたわけです」
 
  すでに展開しているタルテックスを新たにユニフォームにする--。一体どういうことなのだろう?
 
  「ショップ販売のカジュアルウェアだと、サイズの選択肢も少ないし、品切れになっても文句は言われません。しかし、ユニフォームとして企業に納入していくとなると、これまでと違って、サイズもたくさん揃えておかないといけないし、在庫も大量に抱えておく必要があります。また耐久性や洗濯のしやすさなどの利便性も問われます。これらの条件をちゃんとクリアして、今回はじめて『企業ユニフォームにどうぞ』とオススメできる商品になったわけです」
 
  と、奥山さんが取り出したのは、「4230」「4231」という2つの新作シリーズ。制服らしく、上下のセットアップというのはわかるけれど、一体なぜ同時に2種類なのか。
 
  「タルテックス・ユニフォームは、シンプルなデザインが特徴です。切り替えやステッチといったアイトスの作業服でよく使っていた要素を最小限にして、コンパクトで都会的な印象にまとめています。そのうえで『BASIC(ベーシック)』と『UTILITY(ユーティリティ)』の2タイプを並行展開していくことにしました。ベーシックは、どこから見ても会社の作業服だなとわかるようなルックス。一方のユーティリティは軽作業や製造業だけでなく、オフィスワークや接客にも使えるような汎用モデルになっています」
 
  ユニフォームらしいユニフォームがほしい会社は「ベーシック」を。新しいテイストを求めている人は「ユーティリティ」を。この使い分けこそ、新提案のタルテックス・ユニフォームなのだ。
 
  ●カスタムベース?
 
  では、商品を見ていこう。ベーシック路線の「4230」は、全体的につるんとしたデザイン。パッと見たところスポーツジャージのようだが、ちゃんと作業服に見える点がおもしろい。
 
  「シンプルですよね。会社のユニフォームらしく見せるために脇に切り替えを付けたり、ものが落ちないようにポケットにフラップもつけています。それでもステッチなんかはほとんど見えないようにし、パンツもテーパードにしてすっきりした印象に仕上げました。当社もいろいろな作業服を作ってきましたが、ここまで見た目がシンプルな上下ユニフォームは初めてですね」
 
  簡素なデザインの一方で、ブルゾンのカラーが8色というのは、いかにも企業ユニフォームという感じがする。
 
  「ベーシック路線の4230では、まずコーポレートカラーに合わせやすいように多色展開しました。さらにユニフォーム採用するうえで売りにしているのは、カスタムのしやすさです。このシンプルなデザインであれば、社名を大きくプリントしたり、ワッペンをつけたり、マジックテープで取り外せるロゴをつけたり、といった具合に手軽にアレンジできます。要するに『わが社の制服』のベースにできるわけですね。別注で独自のユニフォームを頼もうとすると、コストが高くなってしまうし、デザインを決めるのにも時間がかかる。でもこの4230なら、小ロットでまるでオリジナルのようなユニフォームができるわけです。オーソドックスに胸に社名の刺繍を入れてもいいし、背中や腕に大きく反射プリントを入れたりしても、すごく映えるユニフォームになりますよ」
 
  カスタムのしやすさという点では、ユーティリティ路線のほうがすごいかもしれない。なんと、4231には、切り返しもポケットのフラップもない。さらに襟も最小限のショートスタンドカラーという徹底ぶりで、さきほどの4230に輪をかけてシンプルなユニフォームなのだ。
 
  「こちらも、これ以上ないくらいシンプルですよね。デザインもMA−1風の襟が特徴的で、ものすごくカジュアルな印象。それでも従来のタルテックスとは大きく違って、機能面はしっかりワーキング仕様になっています。ペン差しは2カ所もあるし、ポケットも目立たないけれどたくさんあって、脇ポケットに加えて、500mlのペットボトルも入る横ポケットまで備えています。普通の作業服としても、お使いいただけますが、こちらはユーティリティ路線というわけで、お客さんを訪問したりオフィスで打ち合わせしたりと、さまざまな場面で活用してほしいですね」
 
  ●ユニフォームの基本を守る
 
  以上のように、見た目のインパクトが大きいタルテックスのユニフォーム。デザインばかり注目されがちだが、ワークウェアとしての着心地や動きやすさといったスペック面も光っている。
 
  「両者とも、生地がすごいんです。『ストレッチサマーピケ』という独自開発のポリエステル素材で、まるでニットのように縦にも横にも伸びるのが特徴。3Dモデルを使った着圧の診断でも、肩や肘、膝などのツッパリがないことは証明されています。つまり片膝を折ってしゃがんだりしても、ほとんど動きにくさを感じることがない。腕を曲げたりするシーンでも、抵抗を感じることがないので、着心地が良く、疲労も軽減できます。ポリウレタンを使っていないので、ストレッチ性能が劣化しにくいのも長所です」
 
  さらに、奥山さんは暑さ対策としての有用性も念押しする。
 
  「裏地がポイントです。少し凹凸のある生地になっているので、肌触りがとてもいい。汗をかいても凹凸がすばやく吸収し、水分を拡散させて、表面から揮発させてくれます。細かい溝が水分をキャッチして肌の方に返さない仕組みになっているわけです。だから、いつもサラッとしていて、蒸し蒸しする季節でも肌離れがよく、汗のベタベタ感も軽減してくれます。高温多湿の日本の夏にぴったりのワークウェアと言えるでしょう」
 
  挑戦的な商品に見えても、やはりアイトスは基本に忠実な作業服メーカー。タルテックスのユニフォームも「会社の制服」という概念をアップデートしようという試みなのだ。では、最後に総合ユニフォームメーカーとしての今後の課題を聞いてみよう。
 
  「いま会社として力を入れているのは『AOZORAプロジェクト』という活動です。ユニフォームメーカーとして、環境配慮のものづくりをするだけでなく、ひとつひとつのウェアを作る過程、つまり素材の調達から納品、リサイクルに至る工程のすべてにおいて、排出されるCO2の量を計測して『カーボンフットプリント(CFP)』の数値にして公開しています。使用済み制服の無料回収・リサイクルシステムをさらに発展させたかたちですね。環境負荷というのは、着用者はそれほど考えていないのが現状ですが、納入先の企業はひじょうに気にしている。SDGsをはじめ、企業の社会的責任を意識するお客さんと取引するためには、こちらも高い意識で取り組んでいく必要があるわけです。当社は大手企業への納入が多いので、環境問題にはとことん真摯に取り組んでいきます」
 
  まっとうな企業のユニフォームを作るために、メーカーも社会問題にまっとうに向き合わないといけないのだ。
 
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シンプルだからプリントが映える
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「TULTEXをよろしく!」

    

この手があったか! 新世界の扉を開く「TULTEXユニフォーム」

スポーティーなカジュアルブランドを作業服にアレンジしたTULTEXの新シリーズ。「ベーシック」「ユーティリティー」の2タイプで、軽作業からオフィスワーク、接客まで、さまざまなワークシーンに対応。プリントや刺繍を入れやすいシンプルさもうれしい。帯電防止の規格「JIS T8118」適合モデル。


ガシガシ洗ってタフに着こなせ! 工業洗濯OKがうれしい「1931シリーズ」

植物由来の素材を使ったエコマーク認定の上下ワークウェア。家庭洗濯だけでなく工業洗濯にも対応しており、ロングライフで環境負荷を削減する。ポリエステルをバネ状に加工した「ライトフィックス」の生地は、高いストレッチ性で劣化も抑制。帯電防止規格「JIS T8118」適合モデル。