鳳凰はダークホースである--。鳥なのか馬なのか、というツッコミはさておき、実際にさまざまな現場で「アレが買えないときは、鳳凰もあるよね」という会話が飛び交っている。昨年もファン付きウェアを買おうとしている友人がいたので「よく見るアレは高いから、鳳凰の快適ウェアも検討してみるといいよ」とアドバイスした。多少、他社よりスペックで劣る面があってもじゅうぶん涼しいし、羽根を取り外して洗えるといったアイデア面でも先駆的なのだ。そんなわけで、きっと今回も驚きの新製品があるはず、とワクワクしながら府中市(広島県)に向かい、村上被服の門をくぐると、さっそくチャーミングな備後弁が聞こえてきた。鳳凰を率いる敏腕プロデューサー、村上泰造社長である。
村上被服

マグネットで羽根の取り外しも簡単

つっぱらない「ミドルファン」
●「グラフェン」で冷却力UP!
「快適ウェアが9年目で、ペルチェ商品が2年目。うちは何をやるにもけっこう早いけぇ。鳶の商品からファン付きウェアを出し始めて、ここ数年は、コロナ明けを狙ったお祭り用の装束とか、安全意識の高まりで需要が高まった難燃性の作業服とか、いろんなジャンルに手を広げてます。そして、この夏の猛暑対策はといえば、ペルチェが3アイテムに、快適ウェアのデバイスが2アイテム。たとえ数が出なくても欲しいお客さんがいるなら、できるだけ多様なアイテムを揃えておく。なかなかよそでこういう展開はないでしょう? ほら、ほら」
と言って社長は、ペルチェの冷却パッドや快適ウェアのファンやバッテリーをテーブル上に並べはじめる。2つや3つならともかく、いきなり5つもでてくると、ちょっと頭の整理がつかない。営業の小川さんと平川さんにヘルプを頼もう。
以下は、皆さんのプレゼンを聞いた上で再構成した「一問一答」である。
--3タイプのペルチェの特色は?
簡単にまとめると以下の通り。
(1)PV333:「グラフェン」搭載のハイスペックなペルチェデバイス(八角形パッド×3)と対応ベストのセット
(2)PV555:通常ペルチェデバイス(四角形パッド×4)と対応ベストのセット。フルハーネス対応
(3)PM888:(1)と同じペルチェデバイスとパッドのセット。背中とバックパックの間に固定できる
グラフェンとは、銅の3倍ほどの熱伝導率を持つシート状の素材。これを大きめのパッドに取り付けることで、冷却力がアップし、強いヒンヤリ感が得られる。(1)と(2)の最大の違いは、グラフェンの有無による冷却効果の差。(2)は、他社でもよく見られる一般的なペルチェ商品で、体温を下げる効果は(1)に比べればやや劣る。
--(3)は、どういった商品なのか。
(1)(2)と比べて、変化球のアイテムだ。パッドを取り付けた「ベース」を、ベルトで背中に固定することで、冷却インナーとしても使えるほか、バックパックに取り付けて、通勤時に汗ばむ背中を冷やしたり、車のシートに取り付けて涼を取ったりできる。グラフェン搭載なので、(1)と同じく冷却性能は高い。
ここで社長の補足説明が入った。
「グラフェンは値段がたっきゃーて、なかなかたくさん使えん。(2)はパッドが4つだから、通常ペルチェにしました。(1)(3)のように3パッドにすると、フルハーネスに対応できない。ベルトの邪魔にならないようにパッドを配置するには、4パッドにするしかなかったわけ。あと(3)を用意したのは、リュック通勤の職人さんが多いから。市販のモバイルバッテリーも使えるので、飲食や医療とか、ファン付きウェアを使えない環境の人にもグラフェン&大型パッドの冷却力を味わってほしいね」
●互換性を死守!
一問一答を続けよう。
--ペルチェは快適ウェアと併用できる?
ベスト型の(1)(2)は、ファン付きウェアを上から着た場合、冷却パッドとファンが干渉しないように設計している。フルハーネスを着用しない人なら、(1)の上に25年モデルの大風量デバイスを付けたウェアを着用するのが“最強セットアップ”になる。もちろんコンプレッションウェアの上にペルチェベストだけを着てトップスとしてもいい。ベストはよくあるフリーサイズではなく7サイズ用意したので、冷却パッドを密着させることを念頭に選んでほしい。
--今年は快適ウェアの新作デバイスが2種類ある?
25年は、次の2タイプを展開する。
(1)28Vバッテリー(V2801)と毎秒105リットルの大風量ファン(V2802)の最強デバイス
(2)15Vバッテリーと毎秒65リットルのファンの低価格セット(SV500)
開発以来ずっと続いているパワーアップ路線の「9代目モデル」が(1)で、こちらが快適ウェアの主流。(2)は、そこまでの大風量を求めないライトユーザー向け。お手頃価格でファン付きウェアにエントリーしたい一般の人などの需要を見込んでいる。
--従来モデルとの互換性は?
9代目モデルの(1)は、2023年発売のバッテリーやファン(V19シリーズ)と互換性がある。しかし、22年発売のV15シリーズより古いデバイスは使えない。「V19シリーズをもって、旧モデルとの互換性は断ち切られた」と理解してほしい。また、(1)と(2)の間にも互換性はない。
--では、新作の(2)の互換性というと?
こちらは2022年のV15シリーズと互換性があって、古いバッテリーやファンを使い回せる。もともと他社製品に比べてお手頃価格だが、V15シリーズを持っている人は、さらにお買い得だ。予備バッテリーや交換用ファンとしても活用してほしい。
ちょっとややこしい、という顔をしていたら、社長が口を開いた。
「V15シリーズはもう生産終了で在庫もないけぇ、お客さんから電話がかかってきても謝っとったんじゃけど、やっぱり申し訳ないけぇ。せっかくうちの商品を使ってくれてるのに……、というわけで(2)を企画したんです。長らくご愛用のお客さんに喜んでもらおうと思ってね。ハイパワー化にともなってモデルチェンジしても、うちはユーザーを思って互換性を守っていく。まあ、そんな心意気ですわ」
●自信作の「難燃ウェア」
--新作ウェアのイチオシは?
以下の3アイテムを主軸にしている。
(1)V1122:ファン位置を肩の下あたりに変更した「ミドルファン」
(2)V2512:リサイクル素材を使い、ファン位置を脇腹に変更した「サイドファン」
(3)V4222:火が移りにくい特殊な素材を使った「難燃タイプ」
(1)は、首筋から顔、頭へとびゅんびゅんした風抜けが味わえるので、ハードワーカーにおすすめ。炎天下での遮熱効果も高く、フルハーネス着用時でも、ベルトがファンと干渉しないように設計している。ぜひ、高所作業に使ってほしい。ずっと鳶装束を手掛けてきた鳳皇として、中途半端なものは作れない。これまでの経験を活かしてベストなファン位置を研究し、満を持して投入した一作だ。
(2)は、シンプルデザインとエコ仕様で、ユニフォーム採用しやすいアイテムとして企画した。サイドファンなので背もたれや車のシートと干渉せず、さまざまな場面で使い勝手がいい。
(3)は、ある製鉄所の声を受けて開発したアイテム。難燃性のファン付きウェアを手掛けて今年で3年目になるが、今回はかなりの自信作だ。
--火を使う現場でも使えるのか。
実際に使ってもらっている。溶接などの火の粉が飛ぶ現場は、温度が上がりやすく、熱中症リスクも高い。涼感アイテムというより、火と熱と暑さから身を守る安全対策ウェアとして活用されており、工場などからまとまった注文が入っている。
--火の粉をファンが吸い込んでしまうことは?
ファンにステンレスフィルター(V90)を取り付ければ、その危険は少ない。余談だが、このフィルターは火を使う現場のほかに、森林組合や植栽の管理業でも好評だ。剪定などの野外での作業中、ファンに木の枝が入り込んだり、虫を吸い込んだりするのも防げるという。よくある不織布フィルターだと枝が突き破ってしまう。
ここで、社長が力の込もった目で語る。
「やっぱり、よそと違うことせんといけんね。羽根をマグネットで脱着して丸洗いできたり、バッテリーでスマホを充電できたり。それから難燃ウェアもそうだけど、いろいろと挑戦しているから、この競争の激しい世界でも快適ウェアは消えないわけ。ペルチェも同じで、グラフェン搭載にフルハーネス対応、リュックに取り付けるアイテムとか、他社と明らかに違う特徴のある商品でアピールせんといけん。右へならえ、はダメじゃけぇ」
3タイプのペルチェ商品に2タイプのファン付きウェア用デバイス--。こういった複雑な商品展開は一見すると面倒だ。それでも、じっくり読み解いていくうちに面白さがわかってきて、だんだん欲しくなってくる。なんだろう、「独特の味が癖になる」とでも言えばいいのか……。
そう、まさに悪魔的な魅力である。
「快適ウェアが9年目で、ペルチェ商品が2年目。うちは何をやるにもけっこう早いけぇ。鳶の商品からファン付きウェアを出し始めて、ここ数年は、コロナ明けを狙ったお祭り用の装束とか、安全意識の高まりで需要が高まった難燃性の作業服とか、いろんなジャンルに手を広げてます。そして、この夏の猛暑対策はといえば、ペルチェが3アイテムに、快適ウェアのデバイスが2アイテム。たとえ数が出なくても欲しいお客さんがいるなら、できるだけ多様なアイテムを揃えておく。なかなかよそでこういう展開はないでしょう? ほら、ほら」
と言って社長は、ペルチェの冷却パッドや快適ウェアのファンやバッテリーをテーブル上に並べはじめる。2つや3つならともかく、いきなり5つもでてくると、ちょっと頭の整理がつかない。営業の小川さんと平川さんにヘルプを頼もう。
以下は、皆さんのプレゼンを聞いた上で再構成した「一問一答」である。
--3タイプのペルチェの特色は?
簡単にまとめると以下の通り。
(1)PV333:「グラフェン」搭載のハイスペックなペルチェデバイス(八角形パッド×3)と対応ベストのセット
(2)PV555:通常ペルチェデバイス(四角形パッド×4)と対応ベストのセット。フルハーネス対応
(3)PM888:(1)と同じペルチェデバイスとパッドのセット。背中とバックパックの間に固定できる
グラフェンとは、銅の3倍ほどの熱伝導率を持つシート状の素材。これを大きめのパッドに取り付けることで、冷却力がアップし、強いヒンヤリ感が得られる。(1)と(2)の最大の違いは、グラフェンの有無による冷却効果の差。(2)は、他社でもよく見られる一般的なペルチェ商品で、体温を下げる効果は(1)に比べればやや劣る。
--(3)は、どういった商品なのか。
(1)(2)と比べて、変化球のアイテムだ。パッドを取り付けた「ベース」を、ベルトで背中に固定することで、冷却インナーとしても使えるほか、バックパックに取り付けて、通勤時に汗ばむ背中を冷やしたり、車のシートに取り付けて涼を取ったりできる。グラフェン搭載なので、(1)と同じく冷却性能は高い。
ここで社長の補足説明が入った。
「グラフェンは値段がたっきゃーて、なかなかたくさん使えん。(2)はパッドが4つだから、通常ペルチェにしました。(1)(3)のように3パッドにすると、フルハーネスに対応できない。ベルトの邪魔にならないようにパッドを配置するには、4パッドにするしかなかったわけ。あと(3)を用意したのは、リュック通勤の職人さんが多いから。市販のモバイルバッテリーも使えるので、飲食や医療とか、ファン付きウェアを使えない環境の人にもグラフェン&大型パッドの冷却力を味わってほしいね」
●互換性を死守!
一問一答を続けよう。
--ペルチェは快適ウェアと併用できる?
ベスト型の(1)(2)は、ファン付きウェアを上から着た場合、冷却パッドとファンが干渉しないように設計している。フルハーネスを着用しない人なら、(1)の上に25年モデルの大風量デバイスを付けたウェアを着用するのが“最強セットアップ”になる。もちろんコンプレッションウェアの上にペルチェベストだけを着てトップスとしてもいい。ベストはよくあるフリーサイズではなく7サイズ用意したので、冷却パッドを密着させることを念頭に選んでほしい。
--今年は快適ウェアの新作デバイスが2種類ある?
25年は、次の2タイプを展開する。
(1)28Vバッテリー(V2801)と毎秒105リットルの大風量ファン(V2802)の最強デバイス
(2)15Vバッテリーと毎秒65リットルのファンの低価格セット(SV500)
開発以来ずっと続いているパワーアップ路線の「9代目モデル」が(1)で、こちらが快適ウェアの主流。(2)は、そこまでの大風量を求めないライトユーザー向け。お手頃価格でファン付きウェアにエントリーしたい一般の人などの需要を見込んでいる。
--従来モデルとの互換性は?
9代目モデルの(1)は、2023年発売のバッテリーやファン(V19シリーズ)と互換性がある。しかし、22年発売のV15シリーズより古いデバイスは使えない。「V19シリーズをもって、旧モデルとの互換性は断ち切られた」と理解してほしい。また、(1)と(2)の間にも互換性はない。
--では、新作の(2)の互換性というと?
こちらは2022年のV15シリーズと互換性があって、古いバッテリーやファンを使い回せる。もともと他社製品に比べてお手頃価格だが、V15シリーズを持っている人は、さらにお買い得だ。予備バッテリーや交換用ファンとしても活用してほしい。
ちょっとややこしい、という顔をしていたら、社長が口を開いた。
「V15シリーズはもう生産終了で在庫もないけぇ、お客さんから電話がかかってきても謝っとったんじゃけど、やっぱり申し訳ないけぇ。せっかくうちの商品を使ってくれてるのに……、というわけで(2)を企画したんです。長らくご愛用のお客さんに喜んでもらおうと思ってね。ハイパワー化にともなってモデルチェンジしても、うちはユーザーを思って互換性を守っていく。まあ、そんな心意気ですわ」
●自信作の「難燃ウェア」
--新作ウェアのイチオシは?
以下の3アイテムを主軸にしている。
(1)V1122:ファン位置を肩の下あたりに変更した「ミドルファン」
(2)V2512:リサイクル素材を使い、ファン位置を脇腹に変更した「サイドファン」
(3)V4222:火が移りにくい特殊な素材を使った「難燃タイプ」
(1)は、首筋から顔、頭へとびゅんびゅんした風抜けが味わえるので、ハードワーカーにおすすめ。炎天下での遮熱効果も高く、フルハーネス着用時でも、ベルトがファンと干渉しないように設計している。ぜひ、高所作業に使ってほしい。ずっと鳶装束を手掛けてきた鳳皇として、中途半端なものは作れない。これまでの経験を活かしてベストなファン位置を研究し、満を持して投入した一作だ。
(2)は、シンプルデザインとエコ仕様で、ユニフォーム採用しやすいアイテムとして企画した。サイドファンなので背もたれや車のシートと干渉せず、さまざまな場面で使い勝手がいい。
(3)は、ある製鉄所の声を受けて開発したアイテム。難燃性のファン付きウェアを手掛けて今年で3年目になるが、今回はかなりの自信作だ。
--火を使う現場でも使えるのか。
実際に使ってもらっている。溶接などの火の粉が飛ぶ現場は、温度が上がりやすく、熱中症リスクも高い。涼感アイテムというより、火と熱と暑さから身を守る安全対策ウェアとして活用されており、工場などからまとまった注文が入っている。
--火の粉をファンが吸い込んでしまうことは?
ファンにステンレスフィルター(V90)を取り付ければ、その危険は少ない。余談だが、このフィルターは火を使う現場のほかに、森林組合や植栽の管理業でも好評だ。剪定などの野外での作業中、ファンに木の枝が入り込んだり、虫を吸い込んだりするのも防げるという。よくある不織布フィルターだと枝が突き破ってしまう。
ここで、社長が力の込もった目で語る。
「やっぱり、よそと違うことせんといけんね。羽根をマグネットで脱着して丸洗いできたり、バッテリーでスマホを充電できたり。それから難燃ウェアもそうだけど、いろいろと挑戦しているから、この競争の激しい世界でも快適ウェアは消えないわけ。ペルチェも同じで、グラフェン搭載にフルハーネス対応、リュックに取り付けるアイテムとか、他社と明らかに違う特徴のある商品でアピールせんといけん。右へならえ、はダメじゃけぇ」
3タイプのペルチェ商品に2タイプのファン付きウェア用デバイス--。こういった複雑な商品展開は一見すると面倒だ。それでも、じっくり読み解いていくうちに面白さがわかってきて、だんだん欲しくなってくる。なんだろう、「独特の味が癖になる」とでも言えばいいのか……。
そう、まさに悪魔的な魅力である。
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強力なグラフェン搭載ペルチェ
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「猛暑は鳳凰で乗り切ろう!」
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グラフェン搭載! 脅威の冷却力! 高機能ペルチェ「PV333」 熱伝導率の高い「グラフェン」を使用したハイスペックなペルチェデバイス、および対応ベスト。大きめのパッドにグラフェンを取り付けることで、冷却力がアップ。強いヒンヤリ感が味わえる。冷却力とバッテリーの持ちを両立させる「ゆらぎモード」など、かゆいところに手が届く逸品。 |
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快適ウェアの中にも「いいね!」 4カ所冷却のペルチェ「PV555」 四角形パッドのペルチェデバイスと対応ベストのセット。フルハーネスを着用してもベルトと干渉しない位置に冷却パッドを配置できる。さらに快適ウェアの「ミドルファン」タイプを上に着れば、超快適な高所作業スタイルに。ゆらぎモードで長時間でもバッテリー切れの心配なし。 |
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