【TS DESIGN】ユーザーを一本釣り!image_maidoya3
“ワークウェアの総本山”として知られる福山--。その中心地である福山駅前が、近ごろ激アツになっているのはご存じだろうか? あの大手企業も例の急成長メーカーも、駅前に相ついでオフィスを移転したり展示スペースを構えたり、とますます作業服ムードが色濃くなっているのだ。ただ、駅から離れた海側エリアも負けてはいない。こちらは、大きな作業着ショップがいくつもあるファン垂涎の人気スポット。そんなベイエリアから福山の作業着カルチャーを支えるのが、先鋭的な商品展開で全国のワーカーの心をつかむメーカー、TS DESIGNである。福山の駅前から海方面へと足を運べば、さあ、TSのショータイムだ!

TS DESIGN
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ブランド戦略部の瀬尾さん
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独自開発の「TCNクロスツイル」
●「答え合わせ」の重要性
 
  「TS DESIGNに社名が変わって今年で3年目。ブランドの再出発からこれまで意識してきたのは法人向けアイテムの強化です。といっても大手のような“ザ・会社の制服”ではなく、工務店や町工場といった中小企業のユニフォームですね。うちでは、50人くらいの小さな事業所に向けた商品を『法人向け』と規定し、差別化を図っています。会社の規模の割にアイテム数は多いので、『どれだけ在庫を抱えて安定供給できるか』といったことを考えてみると、この規模クラスのユーザーがターゲットになるかな、と。これくらいだと商品開発においても『ハウスメーカー向け』とか『トラックの営業所向け』とか、具体的なユーザーを想定して企画できます」
 
  ショールームに並んだ商品の前で、こう語るのはブランド戦略部の瀬尾さん。TSと言えば、ショップ販売の「個人ユーザー向け」のウェアのイメージがあったけれど、ブランドの方向性にもやや変化が生まれているようだ。
 
  「法人向けの強化がうまく行っているので、今後はユニフォームの企業納入もワークウェアの店舗販売も、それぞれ刺さる商品を出して、バランスよく発展させていきたいですね。その上で大事なことは、ハッキリした意図を持った商品開発です。ただ『次のシーズンに合わせて企画します』じゃなくて、『○○現場のユーザーに向けて、こんな素材でこんな機能を持った新たなウェアを提案しよう』という明確な意識を持って企画し、営業活動する。その結果、好評だったり不振だったり、と必ず見えてくるものがあって、それが極めて重要です。『その結果、どうだったか』といった“答え合わせ”をしっかりやっていく中で、『△△現場の作業者はこんなことを望んでいたのか』『じゃあ、次はこういう願いを汲み取ったアイテムを作ろう』という具合に、開発のサイクルを回していくわけです」
 
  商品開発は、営業や販売の場面に加えて、購入するユーザーの体験まで想像しながら行われている。
 
  「ただ『オシャレでしょ?』『カッコいいよね?』じゃなくて、『こういうシーンでこう役に立ちます』と、具体的な場面や企画意図をきちんとプレゼンしないといけないから、当社の営業マンはかなり大変ですよ。しかし、そのぶんイメージした分野のユーザーに刺さったときはうれしい。ワークウェア業界の中で、一般的に『この分野の人はこんなニーズがある』と言われていることに対して、『いや、意外とああいうことも困っているのかもしれない……』と仮説を立てて、新商品に反映し、ちゃんとあとで検証するんです」
 
  ●鉄板素材+ナイロン
 
  それでは、今回の秋冬コレクションを紹介してもらおう。
 
  「TSの商品はいつもそうなんですけど、ひとつひとつのアイテムの前に、素材に注目してください。今シーズンで言うと、目玉は新開発の『TCNクロスツイル』ですね。この独自素材をさまざまなユーザー向けの複数アイテムへと、並行展開しています」
 
  と前置きした上で、瀬尾さんが取り出したのは、「5816 TCNクロスジャケット」と「55356 ニッカーズハイブリッドジャケット」の2タイプのジャケット。それぞれに対応するパンツがあるので、普通の「上下もの」として語っても問題なさそうだが……。
 
  「先ほど述べた、『法人向けと個人向け』の典型といえるのが、この同じ素材を使った2タイプのウェアです。まず、生地から紹介すると、TCNクロスツイルというのは、ワークウェアで鉄板の組み合わせであるTC(ポリエステル+綿)に、ナイロンをプラスした新素材。耐摩耗性の高いナイロンを加えることで、TC素材がよりしなやかな肌触りになって、着心地も良くなり、同時に耐久性もアップしました。まさにハードワークを支えるのにピッタリの生地です」
 
  ナイロンの耐久性は「コーデュラ」でおなじみだろう。では、「同素材の並行展開」というのは、どういうことなのか?
 
  「大まかに言うと、5816は法人向けユニフォームで、55356は『ニッカーズ』の名を冠している通り、鳶などの職人さんが個人で買うことを想定したアイテムです。55356の方は、同素材のリップストップ生地も補強に使っています。オーソドックスな作業着を求める人は前者を選び、ちょっと個性的なウェアが欲しい人は後者のニッカーズを選ぶ。このTCNクロスツイルが気に入ったなら、それぞれの上下を自由に組み合わせて、さまざまな着こなしを試してみるのもいいですね。上下作業服に慣れ親しんだ人には、“上下もののクロスオーバー”と説明しています」
 
  ●“刺さる”アイテムを
 
  さて、続いて登場したのは「55324 ニッカーズダブルニーパンツ」。膝部分の当て布がインパクト大なプロ仕様のパンツだ。
 
  「これは、かなり企ての深いアイテムですね。言っちゃえば、ショップから見た場合、防寒パンツって難しいんですよ。冬になるとお客さんは温かいパンツを求めるけれど、本当に寒い時期は短くて、あまり店頭に置いておけない。というわけで、『防寒アイテムだけどじつは通年履ける』という絶妙な路線を狙いました。『ブラッシュツイル』の生地は、少しだけ起毛していて中綿や防風フィルムなしでも保温力がある。一方でポリエステル100%だから速乾性もある。冬は洗濯物が乾かなくて困りますけれど、これなら毎日でも洗濯できます」
 
  ダブルニー部分は、一見すると革のような質感だが、じつはポリエステル。冬物らしい暖かな見た目と高級感がありながら、春夏のユニフォームのように洗濯しても翌日には着られる。そんな魔法のようなアイテムだ。
 
  「秋冬コレクションですけど、今回は『速乾』にこだわりました。冬は洗濯物が乾かない問題もあるし、移動中の暑さや蒸れ、作業中の汗冷えの問題もある。そこで、ワークシャツ(55353 ニッカーズドライワッフルロングスリーブTシャツ)でも、『ドライワッフル』という素材を採用しました。肌側に保水力のない素材を使い、汗や蒸れをすばやく外側に移して発散させる仕組みです」
 
  春夏ものでもないのに「速乾」や「ドライ」といった言葉が飛び出すとは、さすが目の付け所が違うというべきか……。
 
  「大手メーカーなら『この市場を取るために、こんな商品を投入しよう』でいいと思うんです。しかし、TSはそうじゃない。かといって『うちが作りたいものを作るんだ』と開き直れるわけでもないわけですね。だから、マーケットというより『この業種の人はこんなニーズがあるのでは?』といったポイントを見つけて、そこに独自性のあるものを投げ込んでいくしかないかな、と。今回で言えば『職人さんは冬に洗濯物が乾かなくて困っているんじゃないか?』といった視点ですね」
 
  編集部が、「つまり、一部の人に刺さるというか……」と口にすると、瀬尾さんが付け足した。
 
  「ただ“刺さる”じゃなくて、釣り針のように“カエシ付きで刺さる”--。TSはそんなアイテムを作っていきます」
 
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防寒アイテムも充実
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「TS DESIGNをよろしく!」

    

「鉄板生地+ナイロン」の高強度! 独自素材「TCNクロスツイル」の上下ウェア

建設や土木のユーザーに向けて開発した耐久度の高い上下作業着。ワークウェアでおなじみの綿とポリエステル素材にナイロンを配合した独自開発の生地「TCNクロスツイル」は、しなやかで着心地バツグン。高い強度とストレッチ性、さらに耐摩耗性でハードな現場での作業をサポートする。


これが今シーズンの鳶スタイルだ! 独自素材「TCNクロスツイル」のニッカーズ

高所作業ユーザー向けのレーベル「ニッカーズ」が贈るプロ仕様の上下作業着。おなじみの綿とポリエステル素材にナイロンを配合した独自開発の生地「TCNクロスツイル」は、しなやかで着心地もよし。さらに同素材のリップストップ生地を組み合わせることで複雑な表情を持たせた。さまざまな着こなしが楽しめる3種類のパンツも魅力。