【桑和】そしてアメカジへ…image_maidoya3
桑和と言えば、けっこう「お求めやすい」「簡単に揃う」イメージがあると思う。サイズもカラーも豊富だから、とにかくユニフォームを導入したいなら桑和じゃない? というのが一般的な感覚だろう。しかし、ここ数年で事情は変わった。カジュアル作業着からほぼカジュアルウェアへ、アウトドア風のワークウェアからほぼアウトドアウェアへ、と商品構成の地殻変動が続いた結果、「ワーキング品質のカッコいい服」を展開するメーカーへと変貌したのだ。今回もまた「これって……、作業服なんですよね?」といった会話になるのを期待しながら、編集部は児島の縫製センターへ向かった。

桑和
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企画の村井さん
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高所対応のポケット内ループ
●開発に「営業の声」
 
  「おもいっきりカジュアルに寄せたブランドの『G.G.』は大人気だし、BEAMSとコラボしたユニフォーム サーカスも定着してきて、去年には新ブランドも生まれました。自分たちでも、かなり勢いを感じています」
 
  と、近年の商品展開の手応えを語る村井さんは、G.G.を立ち上げた後藤さんの後輩。企画チームが旗を振っている低価格から“いいもの路線”への脱却は、着々と進んでいるようだ。
 
  「もちろんブランド展開として企画部門の役割は重要ですが、昨年から営業マンが商品開発に加わるようになったのも大きいです。たとえば、難燃素材ブレバノを使った作業服「6052」シリーズは、営業の意見から生まれたものです。企画マンが最近のトレンドを意識してファッション性の高いウェアを作るだけじゃなくて、やはりショップやユーザーの声を知っている営業部門の提案を取り入れるのも大事なんです。企画会議に営業が参加するようになってまだ2年目、これからもっとおもしろいアイテムが出てきますよ」
 
  では、さっそく秋冬アイテムのイチオシを教えてもらおう。
 
  「トップバッターはやはりG.G.」とばかりに、村井さんが取り出したのは、ワークウェアの「0542」シリーズ。左腕のペン差しや反射プリントなど作業服の仕様はあるものの、パッと目にしただけでは仕事用にはまったく見えない。カジュアルデザインもここまで来たか、と唸ってしまうルックスだ。
 
  「このアイテムの売りは、やはりスポーティーなデザインですね。上下のセットアップにしても制服というより、イマドキのカジュアルウェア。流行りのニット作業着のようで肌触りも柔らかいけれど、じつは高密度な布帛で、風を通さない。だから、軽くて着心地もよくオシャレなのに、けっこう防寒力があります。生地は耐久性のあるナイロン素材で、しかも膝や肘には補強があるので、建設系のハードワークでも通用するスペック。ジャージのような感覚で着られて、本格的なワーキングにも使える。まさに今シーズンにおける“G.G.の目玉ウェア”ですね」
 
  デザイン重視のG.G.で、さらにカジュアルな見た目に寄せたかと思いきや、強度や堅牢さといった機能面は、これ以上ないほど盤石。見た目に反して(?)、めちゃめちゃ硬派なウェアなのだ。
 
  ●高所の最強ユニフォーム
 
  個人ユーザー向けのG.G.が気を吐く一方、ユニフォームも負けていない。新作の「3052」シリーズは、リサイクル素材を使った上下ワークウェア。グリーン購入法などに対応したエコ仕様が目を引くものの、じつは現場での機能性に着目すべき商品だという。
 
  「ただの環境配慮ユニフォームではなく。廃プラスチックを使ったエコ素材から、ハードワークに耐える高スペックな作業服を作った、というのがミソですね。ストレッチ性はもちろんのこと、耐久性や耐摩耗性を持たせているので、建設系の現場でガンガン使って、ガンガン洗濯してもらえます」
 
  エコ素材のワークウェアは近頃よく見るけれど、「強度」をアピールするケースは少ない。なんでそこまでスペック重視なのか、と思いながら眺めるうちに気づいた。特徴的な縦ファスナーポケット。そう、フルハーネス対応だ。
 
  「じつはこのモデルはフルハーネス対応ウェアとして“最強”なんです。ベルトをしていても胸ポケットの出し入れができる上に、脇ポケットのカーブ上のファスナーも開閉に融通がききます。しかもポケット内部には落下防止用のループが付いていますから、ポケットに財布や鍵などを入れておいても安心。また、通常は左腕だけのペン差しも、両腕にあります。これも高所作業で、常に右腕が空いているとは限らないといったことを考慮したデザインですね」
 
  言われてみれば、「右手で資材を押さえたまま左手で印をつけたい(でもペン差しは左腕!)」といった場面はよくある。平地ならなんとかして持ち替えるところだが、高所ならそうもいかないだろう。「両腕ペン差し」は、ひじょうに理にかなった仕様なのだ。
 
  ●“イケオジ”のためのウェア?
 
  カジュアル作業着から高所作業用ユニフォームまでといった振れ幅の大きさに感心していると、村井さんが、また風変わりなウェアを机に広げ始めた。昔の洋画で見たようなアメカジ系ワークウェア「1472」と防寒アウター「6484」の両シリーズだ。どこからともなくカントリーソングが聞こえてきそうなレトロな見た目だが、一体なぜこんなアイテムを?
 
  「冒頭で触れたように、営業の声から生まれたのがこの『DAN D(ダンディー)』という新ブランドです。ベテランの営業部長から『40代や50代でもカッコよく着れる大人のウェアが欲しい』と要望があって、企画チームと一緒に考えました。ただオシャレなだけじゃなくて、イケオジというか“ちょい悪オヤジ”的なテイストを取り入れて、古き良きアメカジ風ウェアとしてまとめ上げました。見た目はオールドスタイルですが、ストレッチ性や撥水加工など、着心地や機能性はちゃんと現代のワークウェアというのがポイントです」
 
  綿のナチュラルな風合いに、ヒッコリーストライプやコーデュロイ、金属ボタンなど、これでもかとばかりに詰め込まれたクラシカルな意匠の連続に、正直なところ感想が追いつかない。一般アパレルでもここまで振り切ったものは珍しいのに、これがワークウェアだなんて……。
 
  「正統派のアメカジ系ブランドが展開しているクラシックスタイル、みたいな感じですね。中高年がおじさんらしい渋さを出すにはこれくらいやったほうがいい。また、考えてみれば、有名なアメカジブランドも、もともとはワークウェアを作っていたメーカーだったりするわけで、ある意味でこういうのが作業着の本流なんです。今は古着もブームになっているので、こんなテイストもどうですか、と。ジーンズで有名な児島は、言い換えれば“アメカジの街”なわけで『SOWAはアメカジもお手のもの』というわけです。ちなみに私も今、ジーンズソムリエを目指して勉強していますよ」
 
  ジーンズの街で作業服をアピールするメーカーが、今度は“コテコテのアメカジ系ワークウェア”を……。なんだか脳が混乱するけれど、なんでもやってみるアグレッシブな姿勢は称賛に値する。
 
  その心意気やよし! と、やや強引に締めておこう。
 
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意欲作の「DAN D」
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「オシャレ作業着ならSOWAです」

    

SDGs対応ならこれで決まり! エコ素材を使った「3052」シリーズ

使用済みペットボトルなどを原材料に使った上下の環境対応ユニフォーム。リサイクル素材を使うことで環境負荷を削減できるほか、使用後に廃棄する場合にもCO2の排出量の削減となる。シンプルなデザインながらカーブを描いたファスナーポケットなど小技も光る。グリーン購入法の判断基準にも対応。


風さえ防げればいいんじゃない? スポーティな防寒作業着「0542」シリーズ

街でも着られる見た目がうれしい軽防寒ワークウェア。高密度ストレッチの生地は、風を通しにくく、冷気をしっかりシャットアウト。高いストレッチ性で作業をサポートするほか、ナイロンリップストップの補強で耐久性も文句なし。カジュアルなルックスながら、細部はしっかりワーキング仕様。