まいど屋コミック222号/ウォームソックス

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222話ウォームソックス

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お話に出てくるアイテム

2193-1096
エックスウォームソッ

12月25日の朝、メルカリには大量の夢の残骸が並んでいる。そんな記事を何かで読んだ。通販で届けられた誰かの想いが二束三文の値をつけられて世間に公開され、さながら感情のサンプルを集めた展覧会の観を呈しているというのだ。来場者はそれらを冷やかし半分に検分し、不幸にも流産してしまった誰かの未来を、特に屈託のない様子で買っていく。そんな話だった。何もかもが軽くなった令和の時代、今年も時間指定の宅配便が、すっかり重みを失った人々の情熱を満載して営業所を出発する。今夜、8時になれば、佐川が家にやって来る、と誰かがどこかで歌っている。そんなバカな、と僕は思う。遠い昔、僕がまだサンタだったころ、世の中にはスマホもパソコンも、ましてやインターネットも存在しなかった。毎年、この季節になると、街角のスピーカーからは、人の気持ちを駆り立てるような、それでいて妙に心を落ち着かせるような、松任谷由美のあの甲高い歌声が響き渡っていた。歌詞に出てくる子供との掛け合いの中で、彼女は今でも僕の心に重く横たわっている秘密を伝えていた。恋人がサンタクロース。本当はサンタクロース。僕は当時の男性の多くがそうであったように、何かに急き立てられるようにサンタになった。プレゼントを抱えて、僕は恋人の家にいそいそと出かけていった。一年に一度の特別な夜、僕は確かにサンタになった気になっていた。次の年も、またその次も、僕は教えられたとおりにその役割を引き受けた。だけど、イブの夜以外にサンタが何をしているのか、僕は全然知らなかったし、また知ろうともしなかった。ユーミンの歌は、そのことを僕に教えてはくれなかった。そして、彼女が去った後、僕が何をすべきかについても。そのことについて、僕はもっと注意を払うべきだった、と今では思う。そして今なら、僕は本当のサンタになれる、とも感じている。今でも僕は、クリスマスの夜に両腕に感じていた、あの心地よい重みを覚えている。そこには、ネット通販では決して味わうことのない、リアルな重量感が確かにあったんだ。なお、僕は現在、まいど屋を運営する仕事をしているのだけれど、イブの夜に自宅に来るのは、佐川急便であってはならないと固く信じています。商売にはマイナスになってしまうとしても、絶対に。皆さんもその日だけは、特別なパートナーに荷物の配達をお願いしてください。

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