まいど屋コミック240号/サポートフック

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240話サポートフック

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SF-10
サポートフック

その夜、僕はワシントン郊外の森を抜けるドライブウェイで、車を走らせていた。道はほぼ真っ暗で、僕の車のヘッドライトに照らされているアスファルトだけが、前方に向かってどこまでも白っぽく伸びていた。居眠りしそうになるのをこらえながら、僕は中央に引かれた白線だけに神経を集中させた。そうしていれば、そのうち街灯のある場所にたどり着けることを、僕は知っていたのだ。そのとき、どうして僕が左にハンドルを切ったのかは覚えていない。ただ、うすぼんやりとした緑の看板に、ラングレーという文字があるのを見た記憶がある。僕はフラフラと導かれるように、その出口から暗い小道に入って行った。そして突然、僕の小さないすゞのハッチバックが、強烈なサーチライトに照らし出されたのだ。眠気は一瞬にして吹っ飛んだ。クルマの真ん前に、物々しい鉄製のゲートがあって、小道はそこで行き止まりになっていた。ゲートの両脇には門番らしい人影があった。そしてその後ろに、セントラル・インテリジェンス・エージェンシー・ヘッドクオーターと書かれた看板が立っていた。ゲートの奥には、深い森が続いていた。僕は思い切りハンドルを切って車を回転させ、猛スピードで小道を引き返した。誰も僕を追ってこなかった。僕の心臓は音が聞こえそうなほど激しく鼓動していた。ラングレーのCIA本部。そこは、小説や映画で何度も見聞きした、アメリカ諜報組織の総本山だったのだ。あれから随分と月日が流れたけど、今でもあの時、脇の下を伝った冷や汗の感触を覚えている。当時、僕は学生で、僕のアパートはワシントン郊外のアレキサンドリアという町にあった。のどかな雰囲気が漂う環境を僕は気に入っていたのだけれど、それ以来、夜に車を運転するのが、ほんの少し怖くなった。アメリカに対する見方もちょっとだけ変わった。CIAが実在し、それが身近な場所にあるなんて、その時までは半信半疑だったのだから。

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