まいど屋コミック243号/超極厚ソックス

ホーム
まいど屋コミック243号／超極厚ソックス

243話超極厚ソックス

>超極厚ソックス

お話に出てくるアイテム

AG2531
超極厚ソックスホワイ

石田純一は悩んでいた。これまでのポリシーを貫き通すか、よく考えてみればこだわる必要のないこだわりなどは元々なかったことにして、あるいは世間に知られたこだわりとは真逆のこだわりに本当はこだわってきたのだとしらばっくれることにして、たった今直面している憂鬱を解消してしまうか。どちらにするか決めかねたまま、石田はすがるような気持ちでまいど屋にやって来た。どうすりゃいいと思う？内心のいら立ちを押し殺しているような様子で彼は云った。両手は固く握りしめられ、左手のくるぶしはまいど屋の担当者のデスクに押し当てられていた。半身を乗り出すような格好で、石田は担当者の答えを待った。え、俺はどうすべきなんだ？テレビとは随分と印象が違うようだ、と担当者は云った。それから、今にもエキサイトし始めそうな男を前に彼は静かに席を立ち、どうすればいいのか、あなたは既に決めているはずだが、と男に告げた。石田と担当者の顔は、狭いテレビ画面の中にツーショットで収まりそうなくらいに近づいていた。それは石田が、長年のドラマの撮影で慣れ親しんできた距離感だ。あなたがどう振舞うかはあなた自身が決めることだが、と担当者は云った。私にもそれを受け入れるか、拒絶するか、選択する自由がある。ウチは作業用品を販売する店であって、コンサルタントではない。あなたが焦っていることについては同情申し上げるが、他人の身の振り方を指図するようなことはしていない。目当ての商品は何なんです？石田は照れ笑いを浮かべながら、後ずさった。細身のクロップドパンツの裾と、彼のトレードマークであるローファーとの間に、初老の男の痩せ細った脛が、寒々しく覗いていた。実はお宅のマンガを読んでここに来たんだ、と石田は云った。最近、素足に革靴がつらくなってきた。秋が来て、やがて冬が近づいて来るにつれ、外に出るのがしんどくなるんだ。それで先日、ヨメの靴下をこっそり拝借して近所を散歩してみた。ちょうどオフの日で、彼女は留守だった。夜帰ってくるまでに洗濯して乾燥機にかければ、絶対わからないと思ったんだよ。ところが、これがとんだ大騒動に発展した。石田は大きく首を振って、寂しそうに笑った。笑っているというよりは、泣いているような表情だった。乾燥機から取り出したソックスは、指先の部分に穴が開いていた。足の裏には、毛玉がたくさんできていた。それはあいつがゴルフの決勝ラウンドに進んだときにしか使わない、特別なソックスだったんだ。あいつは怒ったね。俺を変態呼ばわりして罵った。俺はひたすら謝り続けた。そして、これからは自分専用の靴下を買ってそれを使うからと彼女に言った。そしたらあいつは、何十年も靴下を履いたことのない人間の足は、硬く干からびているに決まっている、今さらそんな足に踏まれ続けて原形をとどめていられる靴下などあるわけがないなんて馬鹿にしやがるんだ。だから今まで通り、死ぬまで素足にローファーで押し通せと。それが視聴者が俺に望む唯一の芸であって、今や明らかに先細ってきた家計を支える道なんだと。で、本当に俺はどうすればいい？その後の石田とまいど屋担当者とのやり取りについては、あえて本稿では書かないことにしたい。もしも皆さんが、テレビで石田を見かけるようなことがあったなら、彼の足元をチェックすることで、結末は容易に想像できると思うからだ。マンガに出てきたソックスを手にすると、石田の顔は本物の泣き顔に変わった、と後にまいど屋担当者は筆者に語っている。そのとき、石田がどんな気持であったのか、それは改めて本人に訊いてみなければわからないことであるし、本欄の趣旨とはあまりにかけ離れたエピソードであると思われるため、筆者は特に確認することはしなかった。そういう事情で、読者の皆さんには最後にお断りしておきたいのだが、この話は一方の当事者であるまいど屋担当者の証言だけに基づいて再現されたものである。つまり、ひとりの人間が語る体験談の例にもれず、この話にも相手方の立場が証言者よりも意図的に低く設定され、それによって多くの事実がフィクションに塗り替えられている可能性がかなりあるということだ。もしそうであったとしても、マンガに出てくる商品の紹介が目的の本欄にとっては何の問題もないのだが、念のため、ここに申し添えておく。

前へ

第1話から読む

最新話を読む

次へ

まい子が歩いた

粋づくしシリーズ

ポケットレスブルゾン

いい夫婦の日

防災訓練

ネットワークビジネスの闇？

LEDバンドで交通安全

プロコレ！って何？

楽しいひな祭り

ホカホカシリーズ

三度目の宇宙人

スーツでガテン仕事

水平器って何？

ポロシャツで目立とう

鳶用レイン超超ロング八分

かかとが踏めるスニーカー

通販初体験

防寒ゴム手袋

わいど屋の陰謀

軽い防寒ベスト

静かな花火大会

おいしい焼きたてパン

防水か撥水か

2045年問題(後編)

母ちゃんはバイリンガル？

事務コレって何？

作業服は世界をつなぐ

ついに誕生！

母ちゃんが太った？

新紙幣発行！

まいどはクイズ王

まいど宇宙へ行く

パワーストレッチ・ソックス

外国人は和装が好き？

正社員募集中！

防塵マスクの威力

通販でも試着ができる？

ヲタクが日本を支配する？

名入れタオルで商売繁盛

大忙しのまいど屋

ラジャーの意味は？

父ちゃん殺人事件

まいど屋父ちゃん男でござる

ネット通販はなぜ安い？

夏休みの宿題

危険な交通事情

命を守るハーネス

まいどのホワイトデー大作戦

クリーンルーム見学

極寒の季節がやってきた

父ちゃんのメッセージ

制菌加工で食中毒を防げ

まいど家の夏休み

買うモノで職業がわかる！？

梅雨と自転車

カッコいい鳶服

サンタのクリスマス

ブランドモノの安全靴

命を守る防刃パネル

急な雨の備えもまいど屋で

まいど君とお姉ちゃん、キャンプに行く

おねえちゃん、職業体験に行く

3月29日は＜作業服の日＞だぜ

さあ、新年だ！書き初めだ！

クリスマスがやってくる

イタリアンなラーメン店

まいどくん秋祭り

立ち読みOK

お姉ちゃんの野望

革手偽装事件

恋する乙女の作業服

ホコリある現場

それぞれの仕事の一着

どたばたタイムセール

これも作業着！？

アメアメフレフレ

日々、進化しています

このダサい作業服からの卒業

名前入りのプレゼント

年に一度のお客様

お歳暮の中身

丈夫じゃなくていいの

おてやらわかにピンク