まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。今、あまり気分がよろしくないです。のっけから読者の皆さんを不快な気分に付きあわせてしまって申し訳ないのだけれど、胸の内にあるもやもやをここで吐き出してしまわないと何も手につきそうにないので、皆さんがつられてイヤな思いをしようがそんなことには一切お構いなく、自分の気持ちを整理することだけを目的にこの場でグチをぶちまけます。だってこのところブルーな気分を引きずったまま、過ぎたことをいつまでもくよくよと考え続け、仕事にも支障が出るほどだから。原巨人がCSでぶざまな四連敗を喫してから。
実は、ここ数年、日本シリーズは必ず一試合、東京ドームに足を運んでライブで見ていました。おととしはちょうど巨人が優勝して原監督が宙を舞った試合に行ったし、去年は延長戦にもつれ込んだ第5戦の死闘を見たし。昨日まではあまりドヤ顔して自慢してると、皆さんの反感を買うんじゃないかと思ってそういう話をするのを控えてきましたが、あまりに想定外の事態が起きたショックでもはや自制心を完全に失い、ここで洗いざらいぶちまけたほうがいいと思い始めています。それに、よく考えれば、そんな気遣いをすること自体、なんだか偽善的でかえって皆さんに失礼だし、ありのままのセレブな生活を披歴して皆さんとの格の違いを強調することが結局は皆さんのまいど屋に対する理解をより一層深め、最終的に両者の距離をぐっと縮めることになる。セレブであることは全くもって自分の責任ではなく、セレブに生まれついた運命をただただ嘆き悲しんでいるだけでは、まいど屋は真の意味で皆さんと共に歩んでいくことはできないからです。
まいど屋が皆さんと共にあり、セレブな生活が実は皆さんとかかわりを持つなかでこそ存在しうるということは、決して偶然ではありません。なぜなら、誰もが欲しがる垂涎のプラチナチケットが去年まで簡単に手に入っていたのは、まいど屋が日本シリーズのラジオ放送の公式スポンサーであったからです。皆さんがせっせとまいど屋でお買い物をしたその代金がこのような広告宣伝費につぎ込まれ、例えばまわりまわって日本シリーズのタダ券という形でセレブな生活を支えている。逆説的ではありますが、セレブな自分はやはり皆さんと共にあるのです。
でも、今年はそんな優雅な一日はやってきません。あのめくるめくような生活は永遠に失われてしまった。なぜなら巨人が負け、まいど屋がシリーズのスポンサーを降りたから。ラジオの実況を聞いても、アナウンサーがこの試合はまいど屋の提供で東京ドームから生放送でお送りしていますと絶叫することはありません。スポンサーではないからタダ券もなく、阪神とソフトバンクなどという地方空港の片隅に置かれたご当地限定のお土産みたいな試合を、ぼんやりと自宅の汚いリビングで観戦するしかありません。来年こそは再びと思っているけど、どうなることやら。阿部も衰えてきたし、もうしばらくはムリなのかも。(このイントロを真に受けて真剣にお怒りになった読者の方がいたとしても、編集部は一切責任を負えません。まさかそんな人いないと思うけど、とりあえずあらかじめご了承ください。でも、ラジオ局からタダ券をもらって野球を見に行っていたのは本当のことなので、やっぱり言い訳できないのかなぁ。ごめんなさい。)

今月のテーマは秋冬作業服
編集部のスタッフが仕事を離れて、一個人として一番気になる作業服を選ぶとしたら。そんなテーマで企画したのが今回の特集。個人的な話となれば、そう簡単に妥協できません。ブランドのイメージは自分の感性にピタリと合っているか。商品のコンセプトに心から共感できるか。各スタッフがいろんな角度から検討して、これはと思うブランドをピックアップしようとしたのですが、あくまで個人的な好みなので、選ばれるのは無難な売れ筋ではなく、やっぱりある程度アクが強いものが多くなる。そして企画会議に参加した全員が作業着には一家言あるベテランですから、そりゃもう議論百出。まとまる話もまとまらず、最後は結局、多数決で選んだのがレポートで取り上げた3社です。
個人の好き嫌いで選んだメーカーですから、取材にはいつにも増してキアイが入りました。編集部の情熱が乗り移ったのか、メーカーさんの方も各社のトップの方が直接インタビューに応じてくれ、かなり突っ込んだお話が聞けたかと思います。業界の大御所たちが語った今シーズン最旬のウェア事情と今後の展開について。これ、マジ必見です。

ノーベル賞について思うこと
一つのことをずっと続けるにはどうしたらいいんだろう。やる気になれば一度や二度なら、まあ誰でもできるようなことでも、継続するとなると途端に難易度が上がってくる。やり始めたことを中止する理由はそれこそ掃いて捨てるほどあって、そのどれもが自分を納得させるのに十分な根拠を持っているように見える。やろうと思えばやれるんだけどね。今回はかくかくじかじかの事情があるから、仕方がない。残念だけどね。少なくとも、自分のせいじゃないんだ。そうやって自尊心が傷つかないように周到にアリバイを重ねていくうちに、自分自身がでっちあげた物語を信じるようになって、ひとはいとも簡単に背中にのしかかっていた重苦しい義務感を振り落してしまう。そして自分で信じ込んだやんごとなき事情が去ったとしても、再びその義務感を背負い込むことはない。そのときにはもう言い訳すらしない。開き直ることすらない。そこには食べ残しのスープのような冷めた視線があるだけだ。一旦やめちゃったからね。もうどうでもいいんだ、そんなこと。
なんでこんな話を始めたんだろう。先日、ノーベル賞をもらった偉い先生の言葉が心に残っていたから?誰が何と言おうと、周囲に誰もいなくなってたった一人になっても、何年も何年も、繰り返し自分のやるべきことをやり続けた、あの話にまいど屋が進むべき道を見たから?読者の皆さんがそんな青臭い感想文に付き合ってくれるのだとしたら、ここは素直にそうなんですよと言っておきます。なんだ、砂糖をまぶして飾り立てたよくある理念表明ねって斜に構えるひとには、もう少し本当のところを打ち明けます。あまり大きな声では言いたくないことなのだけれど。
月刊まいど屋を始めてもう丸7年近く。毎月欠かさずに新しいレポートを出し続けることって、正直、結構ハードなんです。準備に手間がかかる。取材に時間がかかる。取材後の執筆に頭を悩ませる。編集部には月刊まいど屋以外にも、何万とある商品画面情報を更新し続けるという大きな仕事があるから、スケジュールはぎっしりと詰まっている。それこそ、寝る時間を削らなきゃいけないくらい。ところが、いつも何かに追われるようにしてどうにか予定をこなしていても、ときには、あれ、今日はノってこないなって日が必ずある。何時間デスクに座り続けても全く文章が出てこない。明日は明日でやらなきゃいけないことが山ほどあるから、こんなところで躓いている場合じゃないんだけど、とにかくその日は一歩も前に進めない。時間はどんどん経ち、気が付くと真夜中過ぎになっていても何一つ成果がない。そうすると、例のアリバイ作りの誘惑がいつものように心の弱い部分をノックしてきます。そもそも、月刊まいど屋って読んでいるひとなんかいるのかね。適当に書いておけばいいんじゃない?特にこのまいど通信なんか、メーカーレポートのおまけみたいなもんだから、なくても誰も気にしないのかも。新商品を画面にアップする方がはるかに大事なんだから、今日はもう家に帰って明日の英気を養った方が合理的じゃない?突然持ち出されてきたそんなすべての事情がもっともらしく思えてくる。あとは、はいそうだねって頷くだけでいい。そうすればずっしりと重く感じていた義務感から解放され、長年続けてきた月刊まいど屋は冷めたスープのようにテーブルの端に追いやられる。めでたいことだ。マウスのカーソルを画面のスタートボタンに合わせ、シャットダウンをクリックするだけでいい。ウインドウズ終了のメロディーと共に画面が暗くなれば家に帰れる。そのあとのことはもう知ったこっちゃない。
あまり大きな声でこんな話をしたくなかったのは、何を隠そう、このまいど通信を書くために空けておいたまさに今日、デスクに座ってただ時間が過ぎ去っていくのをなすすべもなく眺めているしかなかったから。いろいろと頭をひねっても、読者の皆さんにお伝えすることが何もでてこない。あれも書いたし、これもお話ししたし、そうそう、何も書くことがなくて困ってるっていう話も、確か以前書いたことがある。7年もやってりゃネタも尽きる。自分を律して一つのことをやり続けるには、月刊まいど屋をこれからも続けていくには、一体どうしたらいいんだろう。そんな風に弱気になったから、あのノーベル賞の先生の言葉を思い出したんだね。今、真夜中過ぎ。シャットダウンボタンを押す勇気もなく、かといって仕事が進むでもなく、パソコン画面にはこのまいど通信の原稿が未完のまま残されている。先生と比べるなんておこがましいけど、でもとにかく諦めずにいれば、いつか報われる日が来るのかなぁ。煙草でも吸ってから、もうひと頑張りしてみようかなぁ。