まいど通信
まいど!まいど通信編集長の田中です。年が明けました。本来は新年あけましておめでとうと言いたいところですが、何年か前のこのまいど通信で、年が明けるのはちっともめでたいことじゃなく、おめでとうと言うに足る合理性が見当たらない云々という論を張ったことがあるのを思い出し、せっかくの正月なのに読者の皆さんに心からのお祝いを申し述べる機会を自ら奪ってしまった己の軽率さに地団太を踏む思いで今年のまいど通信を始めます。素直におめでとうと言えないのであれば、何かほかの表現で皆さんに対する編集部の感謝の念をお伝えしなきゃいけない。要するに、おめでたさの反意語を用いてうまく祝意を述べねばならない。じゃ、おめでとうの反対とは。試みにネットで調べてみると、お気の毒とかご愁傷様とか書いてある。新年あけましてお気の毒。シュールで斬新だけど、残念なことにいくら考えてもこの口上に皆さんが納得するような解釈を加えることができない。仕方なく却下。ならば出発点に立ち返り、もっと科学的に、誰もが納得できるような正確な記述をしてみたい。例えばこんな風に。新年あけましておめでたいという仮説がありますが、これは年が明ければ他人がおめでたいと思うであろうと人々が推測する結果生まれる集団的幻想であり、必ずしも個々人の信念に沿った概念とは言い難いのであります。とはいえ、この学説は経済学でいういわゆる美人投票に似た側面を持つ、ある種の合理性を有していることを認め、まいど屋といたしましても、ここは心ならずも新年おめでとうとご挨拶させていただく次第でございます。
新年早々、明けましておめでとうと言うだけで、もうへとへとになってきた。読者の皆さんも、きっとまいど通信に付き合うのは疲れるだろうなぁ。こんな調子でやってて、大丈夫なのかな、ほんと。くだらないから、今年は読むのやめたなんて言われちゃいそう。そろそろヤバいよね。もういい加減にしよ。
今月のテーマはまいど屋をダメにした3人の悪党たち
溺れそうになったら、他人を蹴散らしても浮いている板にしがみつく。結果、蹴散らされた人が水死してしまっても罪には問われない。緊急事態なんだから仕方がない。刑法でも認められているカルネアデスの舟板って考え方です。
困ったときには他人にどんな仕打ちを加えたって許されるのなら、まいど屋だって法の精神にのっとって適切な行動をしなければならない。レポートのネタ切れに困り果てたまいど屋が順法精神を発揮して、まいど屋をダメにした悪党たちを徹底的に糾弾する。その結果、彼らが二度と立ち上がれないほどの社会的損失を被ったとしても、まいど屋としては仕方がないよねって言うしかない。だって緊急事態だったんだから。犠牲になってもらうしかないでしょ。
別に彼らに悪意があったわけじゃありません。ただ、法には逆らえない。普段仲良くさせてもらっているひと達を背後からブスリと突き刺すのは、大変心苦しかったのですが、涙をのんで自分の舟板にしがみつく。おかげで無事、今月号のレポートも完成しました。かなり問題のある企画だったから、読者の皆さんの中には気分を害されたひとがいるかもしれないけど、正月号ってことで大目に見てくれますよね。それにしてもあの3人、きっと今頃怒ってるだろうなあ。今度会ったとき、なんて言い訳したらいいんだろ。
ついでにスタッフも
取引先の人間だけをやり玉に挙げて楽しむのも気が引けるので、今回はせめてもの罪滅ぼしにまいど屋のスタッフからも人身御供を差し出します。かわいそうな彼の名は奥さん。奥さんて、人妻の奥さんじゃないですよ。苗字が奥。去年の月刊まいど屋3月号に登場した、システム開発担当のエンジニアです。そしてこの人物もまた、レポートの本文で紹介した3人に負けず劣らず、こうしてわざわざ紙数を割いて読者の皆さんに告発するに値する大きな罪を抱えている。
まずは起訴状の朗読から。人となりは頑張り屋で非常にまじめ。各部署からの要求に応えるためなら、徹夜勤務だっていとわない。というか、夜中に開発室に残っているのがよほど好きなようで、特に忙しくなくても完徹していることがしょっちゅうある。そのため、まいど屋の電気代が、なんて些細なことにはここでは敢えて触れないでおこう。彼の真の罪状は、もっと別のところにある。そしてその宿命ともいうべき悪質さが、確実にまいど屋をダメにしていくのだ。
徹夜続きでいつも疲れているせいか、何を言ってもリアクションが薄い。それがフレンドリーな他のスタッフの心に重くのしかかってくる。開発はしっかりやってくれるんですが、仕事以外で雑談をしようとすると、無理に作った笑顔が皮膚の上に張り付いたまま微動だにしなくなる。彼を笑わせるのは、そう、ローマ法王に出川哲郎の芸風を理解してもらうより大変なことだ。彼が近くに来ると、NHKの教育番組のように不自然に意識された明るさが、十分に明るくなりきれないまま周囲に沈殿していくのがわかる。あまりの重さに耐えかねて、彼に向かってブラックな冗談を言うスタッフもいる。苦しい状況を打破しようとする果敢なチャレンジを周りは固唾をのんで見守るけど、やはり成果はない。絶望的な気分でさらに彼をいじってみると、口元にわずかに残っていた最後の微笑さえもはかなく消えてしまうのが観察できるはずだ。
さあ、そろそろ論告求刑に移ろう。かかる彼のキャラが明るく運営されるべきまいど屋の業務を妨害していることは明白であるから、被告はしかるべき処置をもって矯正されるべきである。コミュニケーション中のリアクションがないのが一番の問題ならば、リアクションの訓練をしなければならない。目標はかの出川哲郎。奥さん、テキストを作ったから朗読してね。やばいよやばいよ、リアルにやばいよ。ちゃんと言えるようになったら、今度はザリガニでも持ってきてみようかな。
そんなわけで
そんなわけでってコトバ、結構便利に使ってます。いや、便利なのかどうなのかはわからない。にもかかわらず、自分が言っている意味を深く考えもせず、無意識のうちに使ってる。それも頻繁に。実はさっきも、そんなわけで今年も始まった月刊まいど屋・・・なんて書き出しでひとまず原稿を書いたんです。でも思うところがあって、一思いに削除して書き直しました。文字にするとよくわかるんですね。やっぱり自分で書いたものは自分で理解できなきゃいけない。
実生活では月刊まいど屋の原稿みたいに書き直しがきかないことが多いから、あえて訂正もせず、そんなわけでを押し通すことが多いです。例えば誰かと電話で話をしていて、いい加減に会話を終えたくなった時。キリのいいタイミングだなと思ったら無意識のうちに、じゃそんなわけで。どんなワケなのかは自分でも説明できないけど、相手はなんとなく、とりあえず何か反論の余地のない結論が導き出されて話が終わったかのように思い込み、受話器を置くことにすんなりと同意してくれる。どんなワケなんだとしつこく詮索すると、理解力のなさを表明することになりそうなので、本当はワケがわからないにもかかわらず、あっさりと自分を納得させてしまう。そんなわけではひとをわかったような気にさせる欺瞞に満ちた言い回しですね。月刊まいど屋の読者の皆さんをそんな風にケムに巻くなんて良心が許さないから、面倒だけど今回の原稿は書き直しておきました。えらいでしょ。じゃ、そんなわけで。
今年の目標
バカ話が続いちゃいましたね。最後はまじめにやります。終わりよければすべてよしって言いますから、ここで挽回しなくっちゃ。皆さんが感心するようなことを言って、アホに見えるけど、やっぱりまいど屋はアホじゃないんだ、ちゃんと志を持って皆さんの期待に応えようとがんばっているんだってことをわかってもらわなきゃいけない。でもいくら自分でアホじゃないって叫んだとしてもきっと信用してもらえないだろうから、えーと、あ、そうだ、今年の目標を書きます。目標を発表するなんて、中学校以来で少し緊張します。
今年の目標、と言っても毎年同じなのですが、それはまいど屋の存在意義を守り抜くことです。数あるお店の中から皆さんがまいど屋を選ぶ理由は、きっと私たちのサービスが早くて、丁寧で、正確だから(だと勝手に思ってる)。皆さんがユニフォーム調達にかける手間をできる限り減らすために続けてきた努力が少しは認められているんじゃないかな。ネット通販を利用されるお客さまは、きっと自動販売機でモノを買う感覚ですよね。ボタンを押したら、すぐ商品が出てくるのが当然。画面の向こうに私たちがいて、お客さまがストレスを感じないよう、商品が出荷されるまで目を光らせているなどとは意識もしないはず。買い物したら、必要な情報が記載されたメールがタイミングよく届く。刺繍や丈つめなど、商品への加工依頼があったとしても、感動するほど納期が短い。この感動するほどってところを、まいど屋は非常に意識してやっています。じゃなきゃ、やっぱり今まで通り、近所のユニフォーム屋さんのお世話になったほうがいいに決まってるから。私たちは忙しくなっても歯を食いしばって絶対に手を抜かない。一回でもいい加減なことをしたら、もうそこからまいど屋はまいど屋でなくなっちゃうんです。大晦日に胸を張って、今年もまいど屋であり続けたぞって皆さんに報告すること。毎年変わらないですが、今年もやっぱりそれが目標です。