【おたふく手袋】リーサルウエポンなヘアスタイルimage_maidoya3
正月の特別企画である今月号のトップを飾るに相応しい男だ。まいど屋をダメにした3人の悪党たち。その筆頭に挙げられるのが、これからインタビューを行う人物である。いや、筆頭というと語弊がある。そうした語彙を使うと、まいど屋の周囲に何人か悪人がいて、その中で彼が一番のワルなのかと読者の皆さんが誤解をするかもしれない。そうではない。正しく彼を描写するなら、他の人間と比べることが意味をなさないほどの巨悪だと書けばいいだろう。そして、実をいうと、この男がいたからこそ、編集部は今回の企画を思いついたのだ。あとの二人は彼をインタビューに引っ張り出すための、いわば付け足しにすぎない。
  彼がどれだけの悪人かを語る前に、まずは下の写真で人相を確認してほしい。世の中の常識すべてに難癖をつけたかのような髪型に圧倒されるはずだ。どう見てもまともではない。ワルだ。それも札付きと言っていい。この人は取材で写真を撮られることを察知し、まいど屋を困らせる目的でわざとこんなメイクアップをしてきたんじゃない?そう勘ぐる向きがあったとしたら、それは大きな間違いだ。常人ならば恥ずかしくて表を歩けないようなこのヘアスタイルを、彼はもう何十年も続けてきた。そして道行く人がチラチラと送ってくる好奇の眼差しは、まるであなた方の眼球に問題があるんですよといわんばかりの堂々とした態度で黙殺してきた。まいど屋に来るときに使う電車の中でも。そして、おそらく誰かの結婚式や葬式に出る時も。
  話が横道にそれた。このレポートの主題は、彼がどれほどの悪党であるかを告発し、糾弾することだった。テーマに沿って論を進めるなら、最初に彼が何者であるかを語らねばなるまい。この男、岡方氏はおたふく手袋株式会社のれっきとした営業マンである。同社の商材がいかにユーザーである皆さんにとって有益であるかについては、これまで幾度となく詳報してきた過去のレポートに譲るとして、ここでは彼がまいど屋にとって非常に重要な数多くの人気アイテムを供給してくれるメーカーの営業マンであることだけを読者の皆さんに理解していただきたい。つまり、まいど屋の生命線である仕入れ業務は、彼をキーマンとして執り行われる。まいど屋を生かすも殺すも、そして皆さんが良い商品を安く買えるかどうかも、すべてはこの男の腹次第だということだ。
  そろそろ皆さんにもこの男の巨大さがわかってきたところで結論を急ごう。彼は気が向くと、のっそりとまいど屋に現れる。そして何度見ても慣れることができない例のヘアスタイルで我々の購買担当を威嚇する。担当者は正常な判断力を失った状態で商談に入る。当然、結果は目に見えている。まいど屋をご愛顧いただいているお客さまには申し訳ないが、話し合いはほぼ毎回、彼の思った通りに決着する。おかげでおたふく手袋の商品は、去年一年間だけでも何度も値上げが繰り返された。その中でも、皆さんに一番お詫びしたいのが革手袋だ。あまりに高価格になった革手袋は、もはや現場で気軽に消費できるようなコモディティーとはとても言えない。すべてはこの男のせいである。彼を白州に引き出して、正義の裁きを受けさせねばならない。編集部は、いつかリベンジしてやるつもりで虎視眈々と機会をうかがってきた。インタビューを名目に、今、絶好の機会が訪れたようだ。では早速、被告人の罪状認否から始めよう。
 

おたふく手袋
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まいど屋をダメにした罪深い営業マン。彼は悪党である。
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ときに脅しの武器となる髪型。これでも毎朝10分かけてセットするらしい。
「以前にも申し上げましたが、私が悪いのでも、この髪型が悪いのでもありません。一連の値上げをしたのは、仕入れの段階で10~20%値上がりして、もう企業努力じゃどうにもならなかったからです」。彼はインタビューの趣旨を聞かされると、開き直るようにこう言った。言葉こそ丁寧でも、そこにはまいど屋の抗議など聞く耳持たんというニュアンスが濃厚に漂っている。意見があるならそこの目安箱に陳情書を入れておけ。そう尊大に民衆をあしらう役人のようなのだ。男の名は、岡方寛義(おかがた・ひろよし)。41歳。今日も例のヘアスタイルで登場したが、これでも係長であり、3児の父である。「ですが、仕入れでの値上がり分をすべてお客さんに転嫁するってことはしていません。もちろん、まいど屋さんにだって。。。ここ数年、値上げは年1回でしたが、2014年は4月に1度上がって、10月にも。今や値上げは半年~3ヶ月のスパンです。まいど屋さんにはそのたびに値上げ商品のリストを提出し、ちゃんと承諾いただいているじゃないですか」。
  承諾した覚えはなく、一方的に通告されただけであると声に出かかったが、そこはグッとこらえて彼の異議申し立てに耳を傾ける。どうせ詭弁に過ぎないだろうが、喋らせておけばそのうちボロを出すかもしれない。「このところの革の高騰は、単に円安だからというだけじゃなく、革そのものが品薄だからなんです。モノが少なければ高くなる。純粋な市場原理です」。市場原理などという高尚な単語が出てきた。要注意だ。こういう言葉遣いは、話の中身のなさを隠すためのカモフラージュであるケースが非常に多い。こちらが敢えて反論せずに黙っていると、気をよくした彼はさらに続ける。「たとえば牛革。牛の原皮の主な産地はアメリカですが、2013年秋から品薄になり、誰かが買い占めているんじゃ?なんてウワサもあるくらい。ついこの間、デフレの象徴と言われていた牛丼チェーンが値上げに踏み切ったでしょ。その理由のひとつに、干ばつでアメリカの牛の出荷量が減ったことを挙げていたじゃないですか。食肉が出なけりゃ、皮も出ない。つまり、そういうことです」。
  つまり?つまりとは誰もが納得する十分な論拠を提示した後に使われる接続詞だろう。まだこちらは納得していないのだ。こういうレトリックに騙されてはいけない。じゃ、豚革はどうなのか。「牛でも豚でも、皮のなめし加工といえば中国。あっちでは、そういった工場が有害な排水をたれ流すものだから、環境汚染が深刻になってるでしょ。それがあまりにもヒドイので、とうとう当局の規制が入った。結果、供給量は減るは、これまでのような安価な加工ができなくなるはで、今に至っています」。
  またもや世界情勢を語り始めた彼の口ぶりからは、ドメスティックな活動しかしていないまいど屋を見下したようなニュアンスが感じられる。ならば、こちらもとっておきの事実を明らかにして反対尋問をしてみよう。これを聞けば、ぐうの音も出ないはず。革が、革が、と言うが、革製品じゃないのに値上げした商品があるのはなぜか?防寒PU-KINGゴム袖マジックとか、防寒PUウェーブインナーフリースとか。「さすがまいど屋さん、よく気がつきましたね。これに関してはすっかり頭から抜け落ちていました。それにしても、なぜ値上げなのでしょう?」。
  ・・・って、まいど屋に聞いてどうする。今度はトボけ倒してスルーする気か。今度こそこの比類なき巨悪に対峙するつもりで彼の目を見る。するとどうだろう、かなり力を込めて見つめたつもりだが、視線の先は意志とは関係なく目から額へ、額から髪へと上がっていくではないか。彼との商談でいつもハマってしまう例の展開だ。判断力や批判精神が急速に失われていくのがわかる。値上げの件はどうでもよくなり、その恐るべきヘアスタイルについて質問せずにはいられなくなる。なぜそんな髪型をしているのか。ここにいるオフィスの上司の方も、同僚も、誰も何も言わないのか。「生まれつきの剛毛で、なんともなりません。これでも強力なヘアワックスで整えてはいるのですけど・・・(チカラ技。“強烈立ち上げ アレンジしたい放題”というピンク色のギャツビー)」。
  こちらの戦闘意欲が完全に萎えたころを見計らい、彼はしんみりした口調で話題を変える。この悪党はなかなかの役者でもある。「そりゃね、ウチは欠品が多いし、値上げもある。でも、まいど屋さんには欠品情報をいち早く流すし、在庫がない時は大阪のお客さんに探してもらったりして、可能な限り対応しています。商品が1点足りないだけで注文が全部キャンセルになることもあります。だから何とか手配してその1点を補う。それがまいど屋さんのお客さまのためになると思っていますから」。開き直ったかと思いきや、妙にまっとうなことを言い始めた。こんなことをサラリと言ってのけるのも、悪党の悪党たるゆえん。調子に乗った彼はさらに続ける。「おたふく手袋東京支店のいいところは、自分の裁量ですべてを決めていけるところ。だから仕事が面白い。失敗したらそれなりに責任を問われますけど」。
  ならば、責任をとっていただこう。なかなか罪を認めない彼に対し、以下でアイテムごとにその罪状を糾弾し、悪事を白日のもとに晒していこうと思う。ついでに彼の反論も載せておくので、その言い分をジャッジしてほしい。
 
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値上がり商品を前にしての、悪党による謝罪パフォーマンス。
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社内でしばかれる岡方氏。

    

コイツはハードワークに必須のド定番品!なのに無情の値上げで現場から非難の声がまいど屋に殺到の449

オタフクの中でも売れ筋であり、大事にしている商品だけに品質は絶対に落とせません。ご理解いただきながらの値上げです!牛床革はもはや入手困難。バッグなどに使う表革を取ったあとの副産物で、表革が供給されない限り、床革は出ないんです。


奉仕品と銘打ちながら、大幅値上げでもはやだれも振り向かない!奉仕とは実はかの営業マンの成績に対してなのかと思わせる459

とんでもない!昔からの名残りでの「奉仕品」の銘。ロングセラーゆえにその名が伝統を受け継いでいるんです。長く愛用いただいている方には値上げは本当に申し訳ないと思っています。ちなみに私は悪党ではありませんのであしからず。