まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。今月はどんな顔をして皆さんにご挨拶したらいいのかわかりません。自分自身はなんらやましいところはなく、胸を張って堂々とふるまいたいのですが、どこかいつもと違う皆さんの視線をひしひしと感じてしまい、爽やかに第一声を発することができません。これしきのことで卑屈になって、まいど屋が追い求めている理想を放棄してはいけない。平常心を保ちながら、いつか皆さんがまいど屋に和解を求める日が来るまで、強い心で耐え忍んでいかなければならない。その覚悟はずっと前からできているはず。そう自分に言い聞かせて、とりあえず今月号を始めます。
きっと多くのひと達は、レポートのタイトルだけを見て、まいど屋もついに行き詰ってエロに走ったかと眉をひそめたのではないかと思います。痴漢で捕まった会社員を噂するみたいに、真面目そうな顔してたんだけどねえ、ひとは見かけによらないねえなんて、あちこちでヒソヒソ言っているのではないかと推測します。今後まいど屋がどんな優れたメーカーレポートを出し続けたとしても、世界経済について論じたとしても、もう誰も信用してくれない。とてもつらいことですが、でも、自ら選んだ道ですからね。ここはぐっと歯を食いしばって、上を向いて、これまで通りの態度で皆さんに接していかなきゃ。
読者の皆さんの中に芽生えたある種の憶測に対し、まいど屋はここで敢えて反論をするつもりはありません。わかるひとにはわかる。時間が経てば時代がまいど屋に追いついてくる。それをエロだというひともいるかもしれない。気分を害されたひともあるいはいるかもしれない。ただ、皆さんに思い起こしてほしいのは、時代を切り開いた偉大な作品の多くが、常にわいせつと芸術の神学論争的議論を巻き起こしていた歴史的な事実です。思い出してください。ゴヤの裸婦画が当時エロだと断定され、世間から激しい非難を浴びたことを。または日本でもチャタレイ夫人の恋人が大論争になり、ついには最高裁の判決においてさえ有罪とされてしまったことを。読者の皆さんは頑迷な思想に凝り固まったまま、これを卑猥と切り捨てるのだろうか。そしてレポートを吟味することもなく、ポストに投げ込まれたピンクチラシを屑かごに放り込むがごとくまいど屋の画面を閉じてしまうのだろうか。いつの時代にも進歩的な人々が少なからずいたように、まいど屋は読者の皆さんの中にも先例にとらわれない自由な精神を持ち合わせたひとがたくさんいると信じています。でも、本心を言うと、ちょっとドキドキしてるんだけど。大丈夫かなぁ。ね、きっとわかってくれますよね。

追いかけられる!
今月のレポートはいつものメーカー取材ではなく、かなり特殊なお話だったので、編集部から皆さんへの編集後記的なコメントは特にありません。読者の皆さんが、めいめい勝手に、ムフフと楽しんでいただけたら、あるいはけしからんと日本の行く末を嘆いていただけたら、どっちにしたって何かしらの感想をお持ちになられたら、編集部としては幸いです。駅前で世界平和を訴えている理想主義者の演説みたいに無言でスルーされていなければ、それだけでこの特集の目的は十分果たされていると考えます。ささやかながら何かを考えるきっかけになったことだけでも、それはそれで一つの偉大な達成に違いないですから。
で、代わりにと言っちゃあなんですが、夏らしく怪談をひとつ。ネット通販のまいど屋らしく、インターネットにまつわる怪談です。あれは今回の特集のプロジェクトが極秘でスタートした去年の暮れの頃のこと。極秘っていうのは文字通り極秘ですから、読者の皆さんに対してだけでなく、社内でも限られた人間しか知らないトップシークレットです。ヒミツの話なので社内で親しいひとにだって誰にも相談できず、まず、ブラの基本から勉強しようと、みんなが帰った後にひとりネットで検索し、いろんなサイトを見て回った。夜中のオフィスで、陰に隠れてこそこそブラジャーばかり眺めているのは結構背徳感があって刺激的なのですが、仕事と割り切ってそれを何日も続けてた。そしたら、ある日、出てきたんです。恐怖のアレが。自分のパソコン画面にピッタリと張り付いて離れない、大量のブラの広告が。
うかつでした。業界用語でいうと、リマーケティング広告。一度サイトにアクセスした人にだけ表示される、いわゆる追っかけ広告です。極秘だっていうのに、パソコン画面に年がら年中、ブラの写真付き広告が表示される。そして一度そういう現象が始まると、そいつはどこまでも追いかけてくる。削除して抹殺したと思っても、ジェイソンみたいに突如蘇ってあなたの目の前に現れる。恐怖です。これはまいど屋の社内事情なのですが、自分が使うパソコンは、他の多くのスタッフが業務上、頻繁に使用することになっているんです。席を離れるたび、ちょっと借りますなんて言って誰かが使う。そして例のブラジャーの広告写真を目にすることになる。ある女性スタッフには、ヘンタイだってハッキリ言われました。ヘンタイではない。これは仕事なのである。熱心に仕事をした結果、そういう画像が表示されるようになったのである。いわば名誉の負傷であって、君にそういう目で見られるいわれは全くないのである。そう弁解したたかったのだけど、極秘であるがためにそうとも言えず、軽蔑の眼差しを送って席を離れる彼女をただ見送るしかありませんでした。そしてその後も律儀に秘密は守りぬきましたから、ずっと誤解をされたまま今日まで来ました。
あれから8か月たち、このたび晴れてWEB解禁。社内の極秘指定も解除されたので、ここで改めて身の潔白を主張します。ね、これでわかったでしょ。画面にブラばかり出てきたからって、むやみにひとを疑っちゃいけないの。ものごとの裏側には、いつも隠された事情がある。それを想像して相手をおもんぱかってやるのが、大人の女性です。今後、画面に思いもよらぬ画像が出てきたとしても、驚いたり嫌悪感を抱いたりしないように。キャバクラの広告が出てきても、イタリア男の口説き術なんてバナーが点滅したとしても、あるいは安くても高そうに見える女性へのプレゼントという文字が画面にひょっこり現れても、そしてそれがたまたまこの前君にあげた○△のブランド名と同じだったとしても、もしかしたら、それは社運を賭けた大切な仕事の結果かもしれない。世の中はいろいろと複雑なんだから。ね、これでもうわかったよね。

ドクータに愛をこめて
ドクータ。今ごろ君は、どこで何をしているんだろう。僕は今でも君を想って毎日を過ごしている。君がこの手紙を読むはずがないことは分かっているけれど、それでも僕はこうして書かずにはいられない。誰も触れることができないほど熱かった二人の時間を、どこか遠くの、人の近づかない冷たい大地にひっそりと埋葬してしまうために。
それがよくないことだとは、二人とも最初から分かっていたよね。だけど、気付いたらそうなっていた。いや、本当は気付いてもいなかったんだ。どこか僕たちの力が及ばぬところで運命が僕たちをそうしてしまった。運命なんて軽薄な言葉は使いたくないけれど、今のところ僕にはほかに適当な表現が見つからない。とにかく、それはとてつもなく大きな、抗いようのない、太古からの決まりごとのようなものだったのかもしれない。僕たちはただ、黙ってそれを受け入れるしかなかったんだ。そうだよね。
今、僕は、君が纏っていたどことなくアンニュイで、切なくなるほど淫靡な香りをひとり思い出しながらこの手紙を書いている。君はどこまでも情熱的に、時に冷酷に、無邪気な顔をしながら破滅への道を進んでいったね。怖がりもせず、それどころか逆に楽しげに、危険に満ちた道をどんどん進んでいった。僕はただ夢中で君の後を追った。最後にどこに行きつくのかなんて考えもせずに。
だが君はもうこの世界にはいない。君の存在が外の世界に知られてしまったあの日、君はただ君であるからというだけで、貨物列車に押し込められたユダヤ人たちのように跡形もなく、僕の前から消えてしまったんだ。最後に言葉を交わすこともなく、さよならも言わず、無残に切り取られてしまった若木の切り株のように唐突に、僕がいる世界を永遠に立ち去ってしまった。残された僕はただ君を想ってぼんやりとパソコンの前に座っている。ドクータ。ラテンの血を引く妖艶な天使。君のいた場所には今、僕の情熱を掻き立てることのない、映画のエキストラのように顔かたちのない、無味無臭のドクターが何事もない顔をして座っている。君のシグナチャーはもうどこにもない。僕は本当に悲しいよ。ドクータコートの代わりにまいど屋の画面にあるのは、レディスドクターコート。ドクータ、君は今どこにいるのか。
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*この商品、先日まで「レディスドクータコート」で画面に出てました。発売が2011年だから、4年以上も。ふとしたことでスタッフが気づいて、慌てて削除して正しい商品名に差し替えましたが、その間、お買いものした多くのお客さまは気づかなかったんだろうか。恥ずかしいです。

お盆休み
誠に勝手ながら、8/12(水)から8/16(日)まで、まいど屋サポートセンターをお休みさせていただきます。今回は日並びの都合で5日間と長めです。別に月刊まいど屋の特集が恥ずかしくていたたまれなくなり、どこか遠くへ逃げちゃってそのまま帰ってこないつもりだというわけではありません。17日月曜日から、スタッフ全員、元気に戻ってきますので、どうかご安心くださいね。